本日台湾で日本をも脅かす事件がー馬英九と陳雲林の会見が意味するもの
2008/11/06/Thu
■日本の悪夢は中国の台湾占領
政府が公式見解として「中国の脅威」を否定し続けるのは、もしや中国の軍備を侮っているのだろうか。国民の間でも、米軍がいれば安心であるとか、中国軍などに海を渡る能力はないとか、軍拡など国威発揚のデモンストレーションに過ぎないとか…、そうした楽観論が普遍的にあるが、本十月六日付の産経新聞に掲載の「野口裕之の安全保障読本―中国潜水艦戦術の脅威」によると、目下のところ、次のような状況だ。
「中国軍は、台湾有事で来援するはずの米空母機動艦隊を阻止せんと、特定海域を支配する「アクセス拒否」兵器に巨額投資を図っている。その中核は潜水艦が担う。…米海軍では2010年までに攻撃型原子力潜水艦の60%を太平洋に配し対抗するが、今後10年以内に、全般的能力では勝るものの数では圧倒される。…実際、ロシアから取得した12隻のキロ級通常型潜水艦の多くが装備する露製対艦巡航ミサイルを、米軍は『防御できない』(キーティング米太平洋軍司令官)」

米軍に対する中国潜水艦の脅威は拡大する一方だ
ではもし米軍が空母艦隊が中国軍に阻止されたらどうなるか。おそらく台湾は中国に攻略されよう。それについてはこう書かれている。
「台湾有事で台湾が中国に占領され、中国軍の潜水艦・ミサイル基地が台湾東岸に設けられれば、日本の原油・天然ガス輸送のほとんどが集中するバシー海峡の『通行権』が中国の手に落ちる。台湾西岸にも建設されれば対岸・中国本土の同種の既存基地と台湾海峡を東西から挟み撃ちできる。かくして東・南シナ海のシーレーンは中国が生殺与奪の権を握る」
日本にとってもこれほどの悪夢はないだろう。日本もまた「生殺与奪の権」が中国に握られると言うのだ。だから政府はこれまで台湾有事を恐れ、中国離れを進めてきた台湾に「中国を刺激するな」と圧力をかけてきたのだが、恐ろしいのは戦争だけではない。
■中国「戦わずして勝つ」の戦術が進行中
「占領を経なくても、台湾の親中政権が『高度な自治容認』などと引き換えに中国軍駐留を認めれば、日本は外交・経済上、中国の極めて強い影響下に入るか、経済上の壊滅的打撃を覚悟して迂回航路を選択せざるを得なくなる」と言うことだ。
ちなみに日本は中国の台湾攻略の結果、たまたまその「影響下」に入るのではない。中国は最初から台湾、そして日本を勢力範囲に治め、東アジアで覇権を確立することを目指しているのだ。
さて、「占領を経なくても…」だが、そもそも中国は台湾有事など下策と考えている。この国には「戦わずして勝つ」の兵法に基づいて動いているのだ。今年五月に台湾で国民党の馬英九総統の「親中政権」が発足したため、その戦術はますます加速される一方である。
そうしたなか、中国の対台湾協議機関である海峡両岸関係協会の陳雲林会長が、十一月三日から台湾を訪問しているところだ。
■馬英九総統が中国の使者とついに会談
その目的は台中間の直行便の増加や海運の直行便の解禁、郵便の直接配達枠の拡大などを実現させることにあるが、要するに「平和統一」に向けた密接な関係作り、環境整備だ。そもそもこの訪問は、李登輝総統時代以降、台湾側が事実上放棄して来た「一つの中国」の原則を、馬英九が再び肯定したことで実現したもの。中国の「統一」攻勢に台湾側が抵抗し切れなくなっていると言うことだ。
そして本日午後、この「統一」の使者である陳雲林と馬英九が会見したのである。「台湾は国家ではなく中国の一地方」と主張する中国のこの使者は、馬英九を「中華民国総統」とは絶対に呼ばない。そこで何と呼ぶかに関心が集まったが、「台湾当局の最高領導人(トップリーダー)」と呼ぶことになった(会見では「あなた」と呼んだが…)。
このような自国の存在を否定する人物と五分ほど面談し終えた馬英九は、「自分は国家主権を否定しない」と強調した。要するに強調しなければならないほど、国家にとっては好ましくないことをやったわけだ。

侵略国との妥協は抵抗の放棄に等しい。陳雲林(左)を笑顔で迎える馬英九
■統一戦線の工作を受け続ける台湾の危機
さて、陳雲林を迎え入れた馬英九は中国の統一戦線(統戦)工作に引っかかっている、と警鐘を打ち鳴らすのが台湾の最大手紙、自由時報の本日の社説だ。毛沢東時代以来の中共の統戦と言えば「二番目の敵と組んで、主要な敵を打倒する」と言うものだが、社説によると「国共内戦当時、毛沢東が国民党や庶民に対し、鎮圧、残虐な刑、殺戮を行ったが、その一方で推進したのが統戦、つまり敵の取り入りと分断」だ。
そして次のように論じている。
「一九四九年四月、中共は国民党政府から多くの先進的な重工業施設や鉱山などを無傷のまま接収することができたが、それは工鉱業担当の閣僚、孫越崎が命令に反してでもそれらを守ったからだ。つまり彼は中共から統戦工作を受けていたのである。中共の統戦の策略とは、分断し買収し浸透することだ」
「五〇年に蒋介石軍が台湾へ逃げると、毛沢東はスターリンから兵器を借りて侵攻しようとしたが拒否された。そこで統戦が台湾併呑策の主軸となった。ミサイル恫喝などおまけに過ぎない」
「中共の台湾に対する統戦の方向性は明らか。国民党と民進党を分断させ、国民党内部も分裂させ、力を消耗させる。なぜなら中共が最も恐れるのは敵の団結だからだ」
「いかに取り入るか。中国へ大企業を誘致し、金融機関にも支店を置かせる。中国に郷土意識を持つ一部のグループを取りこむ」
「浸透についてだが、たとえば陳雲林は来台しても話はしない。なぜなら台湾にはすでに代弁者がいるからだ。彼らは陳雲林に言い間違いがあれば直してやる。明らかに台湾には不利な協議でも、これは歴史的大事、台湾には利益がこれほどあるなどと宣伝する。メディアが中共のスピーカーに成り下がっていることは争えない事実。工業、科学技術、学術、文化など各界はすべて浸透目標になっている」
「磁力吸収についてだが、直行便の実現後、台湾は開けっ放しになって防衛メカニズムがなくなった。それに加えて中国沿海部の経済発展は急速だ。よって必然的に商業、旅行業、娯楽、進学、就職などの面での吸引力は日増しに拡大するばかり。抵抗力のない台湾は実質的には中国の一地域に等しい状況だ」
台湾は中国の「高度な自治区」に成り下がりつつあると言うことか…。
■中国が恐れる台湾人の団結、そして日台の団結
社説は最後にこう強調する。
「陳雲林の来台での笑顔攻勢は統戦の一環に過ぎない。邪悪な無形の侵略である。人民が団結しなければ、馬英九政府と陳雲林との台湾売却の密謀は阻止できない」と。
台北市内では陳雲林への抗議のため、連日のように数千人規模の民衆が街頭で群がり、警官隊と睨みあい、あるいは衝突を繰り返しているが、馬英九と会見会場となった台北賓館の周囲も騒擾が続いている。先ほどは警察の封鎖網が民衆によって突破され、負傷者も出ているようだ。
馬英九らは群衆を「暴徒」のように見做し、「台湾の国際的な心象を害する」などと批判しているが、それも中国の工作を受けた者ならではの宣伝である。もし馬英九が中国の傀儡でないならば、やるべきは中国と言う暴力国家の実態を世界に知らせ、台湾を守ること以外にないはずだ。
中国が恐れるのは「敵の団結」。日本人は国家のために団結し、立ち上がった台湾の民衆を応援しよう。応援することで日本人もまた台湾人と団結することになる。そしてこの日台の団結が中国にとっては大きな脅威となるのだ。

11月6日未明、陳雲林の訪問先で続いた騒乱。侵略国に対し、政府が抗議しな
いから民衆が抗議する。台湾はここまで追い詰められているのだ
台湾が中国を刺激することを恐れてきたのがこれまでの日本。これからは日本が台湾人と団結し、一緒になって中国に抵抗するべきだ。なぜなら日本もまた、中国の統戦工作を受けているからだ。政府、政治家が中国と歩調をあわせて台湾に冷淡なのも、根本的な要因はそれなのだ。
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政府が公式見解として「中国の脅威」を否定し続けるのは、もしや中国の軍備を侮っているのだろうか。国民の間でも、米軍がいれば安心であるとか、中国軍などに海を渡る能力はないとか、軍拡など国威発揚のデモンストレーションに過ぎないとか…、そうした楽観論が普遍的にあるが、本十月六日付の産経新聞に掲載の「野口裕之の安全保障読本―中国潜水艦戦術の脅威」によると、目下のところ、次のような状況だ。
「中国軍は、台湾有事で来援するはずの米空母機動艦隊を阻止せんと、特定海域を支配する「アクセス拒否」兵器に巨額投資を図っている。その中核は潜水艦が担う。…米海軍では2010年までに攻撃型原子力潜水艦の60%を太平洋に配し対抗するが、今後10年以内に、全般的能力では勝るものの数では圧倒される。…実際、ロシアから取得した12隻のキロ級通常型潜水艦の多くが装備する露製対艦巡航ミサイルを、米軍は『防御できない』(キーティング米太平洋軍司令官)」

米軍に対する中国潜水艦の脅威は拡大する一方だ
ではもし米軍が空母艦隊が中国軍に阻止されたらどうなるか。おそらく台湾は中国に攻略されよう。それについてはこう書かれている。
「台湾有事で台湾が中国に占領され、中国軍の潜水艦・ミサイル基地が台湾東岸に設けられれば、日本の原油・天然ガス輸送のほとんどが集中するバシー海峡の『通行権』が中国の手に落ちる。台湾西岸にも建設されれば対岸・中国本土の同種の既存基地と台湾海峡を東西から挟み撃ちできる。かくして東・南シナ海のシーレーンは中国が生殺与奪の権を握る」
日本にとってもこれほどの悪夢はないだろう。日本もまた「生殺与奪の権」が中国に握られると言うのだ。だから政府はこれまで台湾有事を恐れ、中国離れを進めてきた台湾に「中国を刺激するな」と圧力をかけてきたのだが、恐ろしいのは戦争だけではない。
■中国「戦わずして勝つ」の戦術が進行中
「占領を経なくても、台湾の親中政権が『高度な自治容認』などと引き換えに中国軍駐留を認めれば、日本は外交・経済上、中国の極めて強い影響下に入るか、経済上の壊滅的打撃を覚悟して迂回航路を選択せざるを得なくなる」と言うことだ。
ちなみに日本は中国の台湾攻略の結果、たまたまその「影響下」に入るのではない。中国は最初から台湾、そして日本を勢力範囲に治め、東アジアで覇権を確立することを目指しているのだ。
さて、「占領を経なくても…」だが、そもそも中国は台湾有事など下策と考えている。この国には「戦わずして勝つ」の兵法に基づいて動いているのだ。今年五月に台湾で国民党の馬英九総統の「親中政権」が発足したため、その戦術はますます加速される一方である。
そうしたなか、中国の対台湾協議機関である海峡両岸関係協会の陳雲林会長が、十一月三日から台湾を訪問しているところだ。
■馬英九総統が中国の使者とついに会談
その目的は台中間の直行便の増加や海運の直行便の解禁、郵便の直接配達枠の拡大などを実現させることにあるが、要するに「平和統一」に向けた密接な関係作り、環境整備だ。そもそもこの訪問は、李登輝総統時代以降、台湾側が事実上放棄して来た「一つの中国」の原則を、馬英九が再び肯定したことで実現したもの。中国の「統一」攻勢に台湾側が抵抗し切れなくなっていると言うことだ。
そして本日午後、この「統一」の使者である陳雲林と馬英九が会見したのである。「台湾は国家ではなく中国の一地方」と主張する中国のこの使者は、馬英九を「中華民国総統」とは絶対に呼ばない。そこで何と呼ぶかに関心が集まったが、「台湾当局の最高領導人(トップリーダー)」と呼ぶことになった(会見では「あなた」と呼んだが…)。
このような自国の存在を否定する人物と五分ほど面談し終えた馬英九は、「自分は国家主権を否定しない」と強調した。要するに強調しなければならないほど、国家にとっては好ましくないことをやったわけだ。

侵略国との妥協は抵抗の放棄に等しい。陳雲林(左)を笑顔で迎える馬英九
■統一戦線の工作を受け続ける台湾の危機
さて、陳雲林を迎え入れた馬英九は中国の統一戦線(統戦)工作に引っかかっている、と警鐘を打ち鳴らすのが台湾の最大手紙、自由時報の本日の社説だ。毛沢東時代以来の中共の統戦と言えば「二番目の敵と組んで、主要な敵を打倒する」と言うものだが、社説によると「国共内戦当時、毛沢東が国民党や庶民に対し、鎮圧、残虐な刑、殺戮を行ったが、その一方で推進したのが統戦、つまり敵の取り入りと分断」だ。
そして次のように論じている。
「一九四九年四月、中共は国民党政府から多くの先進的な重工業施設や鉱山などを無傷のまま接収することができたが、それは工鉱業担当の閣僚、孫越崎が命令に反してでもそれらを守ったからだ。つまり彼は中共から統戦工作を受けていたのである。中共の統戦の策略とは、分断し買収し浸透することだ」
「五〇年に蒋介石軍が台湾へ逃げると、毛沢東はスターリンから兵器を借りて侵攻しようとしたが拒否された。そこで統戦が台湾併呑策の主軸となった。ミサイル恫喝などおまけに過ぎない」
「中共の台湾に対する統戦の方向性は明らか。国民党と民進党を分断させ、国民党内部も分裂させ、力を消耗させる。なぜなら中共が最も恐れるのは敵の団結だからだ」
「いかに取り入るか。中国へ大企業を誘致し、金融機関にも支店を置かせる。中国に郷土意識を持つ一部のグループを取りこむ」
「浸透についてだが、たとえば陳雲林は来台しても話はしない。なぜなら台湾にはすでに代弁者がいるからだ。彼らは陳雲林に言い間違いがあれば直してやる。明らかに台湾には不利な協議でも、これは歴史的大事、台湾には利益がこれほどあるなどと宣伝する。メディアが中共のスピーカーに成り下がっていることは争えない事実。工業、科学技術、学術、文化など各界はすべて浸透目標になっている」
「磁力吸収についてだが、直行便の実現後、台湾は開けっ放しになって防衛メカニズムがなくなった。それに加えて中国沿海部の経済発展は急速だ。よって必然的に商業、旅行業、娯楽、進学、就職などの面での吸引力は日増しに拡大するばかり。抵抗力のない台湾は実質的には中国の一地域に等しい状況だ」
台湾は中国の「高度な自治区」に成り下がりつつあると言うことか…。
■中国が恐れる台湾人の団結、そして日台の団結
社説は最後にこう強調する。
「陳雲林の来台での笑顔攻勢は統戦の一環に過ぎない。邪悪な無形の侵略である。人民が団結しなければ、馬英九政府と陳雲林との台湾売却の密謀は阻止できない」と。
台北市内では陳雲林への抗議のため、連日のように数千人規模の民衆が街頭で群がり、警官隊と睨みあい、あるいは衝突を繰り返しているが、馬英九と会見会場となった台北賓館の周囲も騒擾が続いている。先ほどは警察の封鎖網が民衆によって突破され、負傷者も出ているようだ。
馬英九らは群衆を「暴徒」のように見做し、「台湾の国際的な心象を害する」などと批判しているが、それも中国の工作を受けた者ならではの宣伝である。もし馬英九が中国の傀儡でないならば、やるべきは中国と言う暴力国家の実態を世界に知らせ、台湾を守ること以外にないはずだ。
中国が恐れるのは「敵の団結」。日本人は国家のために団結し、立ち上がった台湾の民衆を応援しよう。応援することで日本人もまた台湾人と団結することになる。そしてこの日台の団結が中国にとっては大きな脅威となるのだ。

11月6日未明、陳雲林の訪問先で続いた騒乱。侵略国に対し、政府が抗議しな
いから民衆が抗議する。台湾はここまで追い詰められているのだ
台湾が中国を刺激することを恐れてきたのがこれまでの日本。これからは日本が台湾人と団結し、一緒になって中国に抵抗するべきだ。なぜなら日本もまた、中国の統戦工作を受けているからだ。政府、政治家が中国と歩調をあわせて台湾に冷淡なのも、根本的な要因はそれなのだ。
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