外国の五輪批判を憎悪する危険な中華民族主義
2008/08/13/Wed
「八国聯軍」と言えば学校を出ている中国人なら知らない者はいない。一九〇〇年の北清事変で清国の都北京を攻め入った日、英、米、仏、独、露、伊、墺の八カ国連合軍のことである。「中国が落伍したのは帝国主義の侵略のため。この屈辱を忘れずに富強を目指そう」と人民に発破をかける中国当局にとって、この歴史事件は格好の宣伝材料なのだ。
もっとも、連合軍が「侵略」したと言うのは正確だろうか。当時清国では義和団が外国人や国内のキリスト教徒に対して襲撃を行い、大量虐殺を展開していた。
義和団とは孫悟空など小説の登場人物を神と崇め、自分を不死身と信じる迷信的な武術集団。今日で言うならテレビや漫画の主人公を神と信じるカルト・テロリスト集団と言ったところだ。そしてその集団が北京にある各国の公館がある地区を包囲するや、何と清国政府はそれを救出しないどころか、義和団の威力を本気で信じ、世界中に対して宣戦布告を行ったのだ。
そこへ八カ国の連合軍が包囲されて死を待つばかりの外国人やキリスト教徒を救出のため、天津、北京へと進軍し、夜郎自大の清国を降伏させたのである。
ちなみに日本軍は同じ東洋国として清国に同情し、宮殿や住民を各国軍の略奪から守ったり、戦後処理をアドバイスするなどした。そのため、外国の力を思い知らされ、為す術を失っていた同国政府からいたく感謝されている。
ところが現在の中国の学校では、そうした正確な歴史は教えず、むしろ義和団を革命の英雄、愛国の英雄として強調してきた。

北京に入る義和団。中国では無知蒙昧な殺戮集団が愛国の英雄
そこで義和団を反文明と位置づけ、教科書批判を行ったのが袁偉時・中山大学教授である。彼は「中学歴史教科書を見て驚いたのは、青少年がいまだに狼の乳を飲み続けていることだ」と問題提起した。そのような彼の文章を「冰点週刊」が掲載したため、同紙が停刊処分を受けたことは日本でも話題になった。
さて現在開催中の北京五輪だが、台湾の週刊誌「新台湾」(八月七日発行)は「北京五輪は政治色濃厚・民族の狂潮を煽っている」との記事を掲載、次のように述べている。
「北京五輪は政治的動機が濃厚で…資源浪費、環境汚染、労働力の安さ、人権侵害、貧富の格差、社会腐敗、売春の横行、道徳崩壊と言う華々しい経済の代価を糊塗して繁栄を繕いたいところだが、内外では危機が充満している。そこで五輪開催と言う最大の『面子工程』は、中国が世界に『合法性』を示すための機会に変わった。…中国は北京五輪を歴史上最大規模の五輪にするため、熱烈に盛り上がる五輪気運を高めることに一切を惜しまず、それをすべての政治任務に優先させている」
「五輪が成功するかどうかは民族の栄辱に関わる問題になっている。反五輪の風潮は直接民族情緒を傷つけており、西側が中国の台頭を極力阻止しようとしている証左と理解され、その風潮は『八国聯軍』とまで喩えられ、中国民衆の西側への不満を激発させている。五輪の目的は本来、異なる民族の感情をそれぞれ近づけることにあるのだが、北京五輪は中国と西側の距離をどんどん引き離して行くかも知れない」

世界を欺いたCGも、五輪気運の盛り上げ目指す中国には「正当」行為となる
「八国聯軍」と批判することは、中国が被害者だと言うことだろう。そしてそれを打倒すべきものと考えているのだろう。
西側で反北京五輪の気運が高まったのは、やはり何と言ってもダルフール問題、チベット問題のためである。だが「狼の乳を飲んで育った」人民は、「中華の同胞」であるはずのチベット人に同情をしないどころか、この圧迫された民族を憎悪しているのだ。かつて同胞のキリスト教徒を虐殺した義和団と、とてもよく似た異常心理である。相手を人以下の存在と思い込んでしまうような。
北京五輪の華やかな演出に浮かされるなかれ。あれは世界を敵にする危険な中華民族主義の祭典なのだ。
日本人の「常識」で言えば、「それなら、その民族主義を刺激するな。仲良くやって行こう」と言ったところだろうが、下手に出れば増長するのも中華民族主義なのだ。かつては義和団も清国政府も「八国聯軍」に実際に叩かれるまではすっかり増長しきっていたではないか。
危険なこの国の前で弱みを見せるな。媚も見せるな。しかしその前に接近するな。周囲からみなで封じ込めろ。
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もっとも、連合軍が「侵略」したと言うのは正確だろうか。当時清国では義和団が外国人や国内のキリスト教徒に対して襲撃を行い、大量虐殺を展開していた。
義和団とは孫悟空など小説の登場人物を神と崇め、自分を不死身と信じる迷信的な武術集団。今日で言うならテレビや漫画の主人公を神と信じるカルト・テロリスト集団と言ったところだ。そしてその集団が北京にある各国の公館がある地区を包囲するや、何と清国政府はそれを救出しないどころか、義和団の威力を本気で信じ、世界中に対して宣戦布告を行ったのだ。
そこへ八カ国の連合軍が包囲されて死を待つばかりの外国人やキリスト教徒を救出のため、天津、北京へと進軍し、夜郎自大の清国を降伏させたのである。
ちなみに日本軍は同じ東洋国として清国に同情し、宮殿や住民を各国軍の略奪から守ったり、戦後処理をアドバイスするなどした。そのため、外国の力を思い知らされ、為す術を失っていた同国政府からいたく感謝されている。
ところが現在の中国の学校では、そうした正確な歴史は教えず、むしろ義和団を革命の英雄、愛国の英雄として強調してきた。

北京に入る義和団。中国では無知蒙昧な殺戮集団が愛国の英雄
そこで義和団を反文明と位置づけ、教科書批判を行ったのが袁偉時・中山大学教授である。彼は「中学歴史教科書を見て驚いたのは、青少年がいまだに狼の乳を飲み続けていることだ」と問題提起した。そのような彼の文章を「冰点週刊」が掲載したため、同紙が停刊処分を受けたことは日本でも話題になった。
さて現在開催中の北京五輪だが、台湾の週刊誌「新台湾」(八月七日発行)は「北京五輪は政治色濃厚・民族の狂潮を煽っている」との記事を掲載、次のように述べている。
「北京五輪は政治的動機が濃厚で…資源浪費、環境汚染、労働力の安さ、人権侵害、貧富の格差、社会腐敗、売春の横行、道徳崩壊と言う華々しい経済の代価を糊塗して繁栄を繕いたいところだが、内外では危機が充満している。そこで五輪開催と言う最大の『面子工程』は、中国が世界に『合法性』を示すための機会に変わった。…中国は北京五輪を歴史上最大規模の五輪にするため、熱烈に盛り上がる五輪気運を高めることに一切を惜しまず、それをすべての政治任務に優先させている」
「五輪が成功するかどうかは民族の栄辱に関わる問題になっている。反五輪の風潮は直接民族情緒を傷つけており、西側が中国の台頭を極力阻止しようとしている証左と理解され、その風潮は『八国聯軍』とまで喩えられ、中国民衆の西側への不満を激発させている。五輪の目的は本来、異なる民族の感情をそれぞれ近づけることにあるのだが、北京五輪は中国と西側の距離をどんどん引き離して行くかも知れない」

世界を欺いたCGも、五輪気運の盛り上げ目指す中国には「正当」行為となる
「八国聯軍」と批判することは、中国が被害者だと言うことだろう。そしてそれを打倒すべきものと考えているのだろう。
西側で反北京五輪の気運が高まったのは、やはり何と言ってもダルフール問題、チベット問題のためである。だが「狼の乳を飲んで育った」人民は、「中華の同胞」であるはずのチベット人に同情をしないどころか、この圧迫された民族を憎悪しているのだ。かつて同胞のキリスト教徒を虐殺した義和団と、とてもよく似た異常心理である。相手を人以下の存在と思い込んでしまうような。
北京五輪の華やかな演出に浮かされるなかれ。あれは世界を敵にする危険な中華民族主義の祭典なのだ。
日本人の「常識」で言えば、「それなら、その民族主義を刺激するな。仲良くやって行こう」と言ったところだろうが、下手に出れば増長するのも中華民族主義なのだ。かつては義和団も清国政府も「八国聯軍」に実際に叩かれるまではすっかり増長しきっていたではないか。
危険なこの国の前で弱みを見せるな。媚も見せるな。しかしその前に接近するな。周囲からみなで封じ込めろ。
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