台湾統一支持の毎日新聞―検証:日本の「台湾総統選挙」報道(下)
2020/01/18/Sat
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1月11日に投開票が行われた台湾の総統選挙では反中国の蔡英文総統が再選された。従来、中国の「一つの中国」(台湾は中国領土)宣伝をも受け入れてきた日本の各紙が、これを好意的に報じたのは、中華覇権主義がかつてなく顕在化する今日、それから自由と民主を守りたいとする台湾の有権者の思いに突き動かされたからか。
もっともその一方で、中国の顔色を見ながら書いたとしか思えない記事も相変わらず見られた。12日の毎日新聞朝刊に載った「中台関係 焦り禁物」と題する記事がそれだ。執筆は浦松丈二・中国総局長。何が目的でこんなのを書いたのか。

■中国人を台湾人の「同胞」と位置づける毎日
冒頭にはこうある。
―――歴史的な総統選の開票速報にわく台湾人を中国大陸の同胞はどう見たのだろうか? 北京の友人に聞いたが、中国中央テレビは映像を流していなかった。
私はこの部分を読んだだけで、この記者は中国に媚びた人物だと感じた。なぜなら中国人を台湾人の同胞と位置付けているからだ。
「大陸反攻」が叫ばれた数十年前の国民党独裁時代ならともかく、今の台湾で中国人を「同胞」と思う者は、中国出身のお年寄りや、「中国統一」を求める極少数の政治勢力くらいではないのか。台湾の友人に確認したら、「そんな人は、今はほとんどいない」との回答だった。少なくとも記事が触れたところの蔡英文の勝利に「わく」台湾人のほとんどは、自分は中国人とは異なるという意識だろう。
一方、中国は台湾人を台湾同胞と呼ぶ。たとえば国内メディアは、台湾人を「台湾民衆」「台湾人民」、あるいは「台湾同胞」と呼称するよう指導を受けている。また中国については、台湾に関わる報道の際には「中国大陸」と呼ばなければならない。いずれも「一つの中国」宣伝に基づく統制なのだ。
「中国大陸の同胞」と書いた今回の記事は、まさにこの中国の言論統制に従うものではないのか。
■なぜ「台湾統一はいけない」と書かないのか
この記事は、決して蔡総統が再任されたのを批判するものではない。そればかりか、以下のように中国に対し台湾の民意を尊重しろと訴える内容でもある。
―――台湾総統選は1996年から直接選挙で実施されてきた。今回で7回目、24年間にわたって、台湾の人々は民主的な選挙でトップを選んだことになる。中国の習近平指導部は「1国2制度」による台湾統一を目指す姿勢を鮮明にしている。そうならば、台湾同胞の民意を正面から受け止める時期だろう。
―――台湾の民意が「現状の1国2制度へのノー」であることは明らかだ。……台湾では1国2制度への拒否感は強く、歴代最も中国寄りだった国民党の馬英九前総統ですら拒絶していた。
それにしても、意味の取りにくい書き方だ。習近平指導部は「『1国2制度』による台湾統一を目指す姿勢を鮮明」にする以上、「台湾同胞の1国2制度への拒否感」は「正面から受け止める」べきだとする論理がわからない。
「『1国2制度』による台湾統一を目指す姿勢」は間違っている、とはっきり書けばいいのではないか。しかし中国に気兼ねし、それを敢えてしないから、こんな矛盾する変な文章になったのではないか。
ところで、こんなことも書いている。
―――中国への危機感の高まりの背景には台湾人意識の高まりがある。台湾の政治大学が19年1月に発表した世論調査で「中国人ではなく台湾人」と回答したのは56・9%」。
ちなみにこの調査で、自分は「中国人」だと回答したのは3・6%。それでも毎日は、台湾人にとり中国人は同胞だというのか。
■捨てることができない中国従属の姿勢
中国への配慮がもたらす内容の矛盾はまだある。
記事は中国に対し、統一を拒否する台湾の民意の尊重を呼びかけるポーズを見せる一方で、しっかりと統一を支持しているのである。以下を見よう。
―――「放置すれば台湾は永遠に祖国の懐に帰ってこない」。北京で何度も聞かされた中国共産党幹部の懸念である。台湾を訪れて、その懸念は現実になりつつあると感じる。だが、中国語にも「急がば回れ」という格言がある。焦りは禁物だ。
どう見ても統一を応援しているではないか。
そしてその上で、最後はこのように書くのである。
―――総統選後、台湾に安定政権が発足すれば、現状の1国2制度の代わる新たなアイデアが浮上するかもしれない。社会制度は違っても台湾、香港、そして中国の民意は成熟していくはずだ。総統選後の台湾情勢から、目が離せなくなってきた。
いったい何の民意がどう「成熟していく」というのか。統一を拒否する台湾の民意は成熟していないというのか。
そして一体、今後どんな統一に向けた「新たなアイデア」が出される可能性があるというのか。「1国2制度」以外では「1国1制度」が考えられるが、まさかそれを「成熟」した考えだといっているわけではあるまい。もし中華連邦のようなものを思い描いたのなら、そのようなものは中共が受け入れるはずなく、不可能だ。
このように矛盾の多い無責任な内容なのである。何が「総統選後の台湾情勢から、目が離せなくなってきた」だろう。何が言いたいことがよくわからない駄文である。
結局、日本は民主主義国家だから、記事も台湾の民意尊重を訴える内容にせざるを得ないのだが、しかしそれでは中国に叱られかねないと懸念した浦松という中国総局長は、「台湾統一 焦り禁物」と献策するスタイルをとったのだろう。
このように中国に対し、批判の代わりに献策を行い、結局中国の側に立ち続けるという報道パターンは、実は日本ではよくあるのである。読者には迷惑だし有害だ。
「統一は不法な侵略。習近平は台湾への野心を捨てよ」とまではっきり訴えることのできる報道機関は日本にはまだない。今回の選挙は、まさにそれを行う絶好の機会だったのだが残念である。
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もっともその一方で、中国の顔色を見ながら書いたとしか思えない記事も相変わらず見られた。12日の毎日新聞朝刊に載った「中台関係 焦り禁物」と題する記事がそれだ。執筆は浦松丈二・中国総局長。何が目的でこんなのを書いたのか。

■中国人を台湾人の「同胞」と位置づける毎日
冒頭にはこうある。
―――歴史的な総統選の開票速報にわく台湾人を中国大陸の同胞はどう見たのだろうか? 北京の友人に聞いたが、中国中央テレビは映像を流していなかった。
私はこの部分を読んだだけで、この記者は中国に媚びた人物だと感じた。なぜなら中国人を台湾人の同胞と位置付けているからだ。
「大陸反攻」が叫ばれた数十年前の国民党独裁時代ならともかく、今の台湾で中国人を「同胞」と思う者は、中国出身のお年寄りや、「中国統一」を求める極少数の政治勢力くらいではないのか。台湾の友人に確認したら、「そんな人は、今はほとんどいない」との回答だった。少なくとも記事が触れたところの蔡英文の勝利に「わく」台湾人のほとんどは、自分は中国人とは異なるという意識だろう。
一方、中国は台湾人を台湾同胞と呼ぶ。たとえば国内メディアは、台湾人を「台湾民衆」「台湾人民」、あるいは「台湾同胞」と呼称するよう指導を受けている。また中国については、台湾に関わる報道の際には「中国大陸」と呼ばなければならない。いずれも「一つの中国」宣伝に基づく統制なのだ。
「中国大陸の同胞」と書いた今回の記事は、まさにこの中国の言論統制に従うものではないのか。
■なぜ「台湾統一はいけない」と書かないのか
この記事は、決して蔡総統が再任されたのを批判するものではない。そればかりか、以下のように中国に対し台湾の民意を尊重しろと訴える内容でもある。
―――台湾総統選は1996年から直接選挙で実施されてきた。今回で7回目、24年間にわたって、台湾の人々は民主的な選挙でトップを選んだことになる。中国の習近平指導部は「1国2制度」による台湾統一を目指す姿勢を鮮明にしている。そうならば、台湾同胞の民意を正面から受け止める時期だろう。
―――台湾の民意が「現状の1国2制度へのノー」であることは明らかだ。……台湾では1国2制度への拒否感は強く、歴代最も中国寄りだった国民党の馬英九前総統ですら拒絶していた。
それにしても、意味の取りにくい書き方だ。習近平指導部は「『1国2制度』による台湾統一を目指す姿勢を鮮明」にする以上、「台湾同胞の1国2制度への拒否感」は「正面から受け止める」べきだとする論理がわからない。
「『1国2制度』による台湾統一を目指す姿勢」は間違っている、とはっきり書けばいいのではないか。しかし中国に気兼ねし、それを敢えてしないから、こんな矛盾する変な文章になったのではないか。
ところで、こんなことも書いている。
―――中国への危機感の高まりの背景には台湾人意識の高まりがある。台湾の政治大学が19年1月に発表した世論調査で「中国人ではなく台湾人」と回答したのは56・9%」。
ちなみにこの調査で、自分は「中国人」だと回答したのは3・6%。それでも毎日は、台湾人にとり中国人は同胞だというのか。
■捨てることができない中国従属の姿勢
中国への配慮がもたらす内容の矛盾はまだある。
記事は中国に対し、統一を拒否する台湾の民意の尊重を呼びかけるポーズを見せる一方で、しっかりと統一を支持しているのである。以下を見よう。
―――「放置すれば台湾は永遠に祖国の懐に帰ってこない」。北京で何度も聞かされた中国共産党幹部の懸念である。台湾を訪れて、その懸念は現実になりつつあると感じる。だが、中国語にも「急がば回れ」という格言がある。焦りは禁物だ。
どう見ても統一を応援しているではないか。
そしてその上で、最後はこのように書くのである。
―――総統選後、台湾に安定政権が発足すれば、現状の1国2制度の代わる新たなアイデアが浮上するかもしれない。社会制度は違っても台湾、香港、そして中国の民意は成熟していくはずだ。総統選後の台湾情勢から、目が離せなくなってきた。
いったい何の民意がどう「成熟していく」というのか。統一を拒否する台湾の民意は成熟していないというのか。
そして一体、今後どんな統一に向けた「新たなアイデア」が出される可能性があるというのか。「1国2制度」以外では「1国1制度」が考えられるが、まさかそれを「成熟」した考えだといっているわけではあるまい。もし中華連邦のようなものを思い描いたのなら、そのようなものは中共が受け入れるはずなく、不可能だ。
このように矛盾の多い無責任な内容なのである。何が「総統選後の台湾情勢から、目が離せなくなってきた」だろう。何が言いたいことがよくわからない駄文である。
結局、日本は民主主義国家だから、記事も台湾の民意尊重を訴える内容にせざるを得ないのだが、しかしそれでは中国に叱られかねないと懸念した浦松という中国総局長は、「台湾統一 焦り禁物」と献策するスタイルをとったのだろう。
このように中国に対し、批判の代わりに献策を行い、結局中国の側に立ち続けるという報道パターンは、実は日本ではよくあるのである。読者には迷惑だし有害だ。
「統一は不法な侵略。習近平は台湾への野心を捨てよ」とまではっきり訴えることのできる報道機関は日本にはまだない。今回の選挙は、まさにそれを行う絶好の機会だったのだが残念である。
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