台湾で安倍首相「祝電」騒動―原因は中国に屈した日本政府の背信行為
2019/10/28/Mon
ブログランキング参加中
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。
↓ ↓

モバイルはこちら
↓ ↓
http://blog.with2.net/link.phplink.php
******************************************
日本のマスコミは報じていないが、台湾の政界では、安倍晋三首相と麻生太郎副総理が福岡にある台湾の出先機関に送った国慶節の「祝電」を巡り大きな騒ぎとなった。そしてこの騒動の原因となったのが、日本政府の台湾政府に対するとんでもない非礼行為だった―――――。
■台湾を驚喜させた安倍、麻生氏の台湾への友情
台北駐大阪経済文化弁事処(台湾の駐大阪総領事館)の福岡分処は十月四日、福岡市内で「中華民国一〇八年国慶レセプション」を開催した。中華民国の建国記念日を祝う毎年恒例の祝宴であるが、今回参列者を驚喜させたのが、安倍晋三首相と麻生太郎副総理から届いた以下の祝電だった。

―――中華民国108年国慶節祝賀レセプションが盛大に開催されますことを心よりお祝い申し上げますとともに、今後ますますのご繁栄と、ご参会の皆様方のご健勝とご多幸を祈念申し上げます。内閣総理大臣 安倍晋三
―――中華民国108年国慶節祝賀レセプションの開催を心からお慶び申し上げますとともに、両国の友好が更に深まりますよう、併せてご来場の皆様の益々のご発展を祈念致します。副総理兼財務金融担当大臣 衆議院議員 麻生太郎
これは台湾にとり、一大事件と言えた。なぜなら日本の政界トップから「祝電が寄せられたというだけにとどまらず、どちらも台湾を『中華民国』と呼んでおり、これは稀に見ること」(台湾紙自由時報)だからだった。


■日本にとっても頼もしい安倍首相の台湾重視
安倍、麻生両氏は、我が国政界における親台派の代表格と言える。しかし今や共に閣僚であるため、日台政府間の接触(台湾を事実上「国」として遇する)を過度に警戒する中国に配慮し、台湾との交流は自粛すべき立場にあると見られている。従って、今回のような台湾の「国」の機関が主催する行事への出席や関与などはあり得ず、中華民国という「国」の呼称の使用も許されるはずがないと一般には考えられている。
そうした閣僚の自粛こそ、日中友好を金科玉条としてきた政府、政界の習わし、掟なのであるが、台湾から見れば不条理極まるそうした掟を、この二人の政界のトップが見事に打ち破ってくれたのだから大喜びしたのは当然だ。
同国のネットメディアの新頭殻は、「中国が全力で台湾の外交空間を押し潰そうとする中、日本の安倍首相は北京の反対をも顧みず、麻生副総理とともに祝電を送り、共に『中華民国』と台湾を呼称し、台湾の「国運隆昌」を祝ってくれた」と絶賛した(「国運隆昌」とは、安倍氏の「ますますのご繁栄」との言葉の漢語訳)。これは多くの台湾国民の思いを代弁したものだろう。また対米関係に次いで対日関係を重視する台湾政府にとっても、外交政策上の大きな成果となった。
また日本からしても、中国の脅威の前において台湾は日本の生命共同体である以上、堂々と台湾との友情を深めることのできるこの首相の存在は、とても頼もしい。
しかし台湾側の喜びも束の間、やがて状況は一転する。中国が日本政府に圧力をかけてきたためだ。
■岡田官房副長官による台湾に対する背信発言
十一月七日、岡田直樹内閣官房副長官の記者会見会場に、中国国営新華社通信の女性記者が姿を見せ、こう質問した。
「報道によれば安倍首相は(中略)レセプションに祝電を送りました。その中で台湾を中華民国と称したそうです。これについてコメントをお願いします。また台湾問題に関する日本政府の立場に変化があるかどうか、お伺いします」と。
岡田氏はこれに対して驚くなかれ、次のように答えたのである。
「安倍総理が、ご指摘のような祝電を出したという事実はございません。そして日本政府の台湾に関する立場は、一九七二年の日中共同声明にある通りです」

「祝電は事実ではない」と断言した岡田氏。それでは福岡に届いたあの祝電は、偽物だったというのか。あるいは福岡分処は、祝電をでっち上げたと言うのか。完全に信義に背いた振舞である。
■一人の中国人記者の質問に恐れ戦いた日本政府
岡田氏の「日中共同声明にある通りです」というのは、政府がよく中国に対して用いるセリフである。
要するに「台湾に関する場に変化はありません」という意味だ。細かく言えば、「日本政府は日中共同声明で、中華民国ではなく、『中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する』と表明しました。その立場は今も変わりはありません。だから中華民国政府との関係を深めているなど滅相もないことで、どうぞお疑いなきよう」という感じだ。
たった一人の女性記者の質問に、政府はこれほど恐れ戦いた。もしここで「祝電は事実だ」などと答えれば、中国政府から「台湾問題は日中関係の政治的基礎。日本はそれを根底から覆す気か」と騒がれかねない。そこで日中関係の改善が急がれる今、台湾側が嘘をついたという話にし、中国に許しを請おうとしたようだ。
高々祝電くらいで、なぜここまでするのか。まるで中国の属国である。
■大国に媚び小国を足蹴にする事大主義の典型
このように、大国に迎合するためなら小国など足蹴にして恥じることのない政府は、まさに事大主義者の典型と言える。
実はこれと同じようなことは昨年二月にも見られた。当時、台湾の花蓮で大きな地震が発生したのを受け、安倍氏は「蔡英文総統宛お見舞いメッセージ」と題する見舞い電を送り、台湾で大きな話題となった。そして首相官邸のHPがその原文を掲載したのだが、外務省中国モンゴル課からの要請により、ほどなく「蔡英文総統宛」の六文字を、非礼にも削除したのだった。

実はその時に中国モンゴル課は、中国外交部(外務省)から「厳正なる交渉」(同部報道官)という名の圧力を受けていた。中国から見れば「総統」という「国」の元首の職名を用いることは、台湾を「国」と認めるに等しく、断じて許容できない。そして政府は従順にも、そうした中国のヒステリックな言論統制を受け入れ。安倍氏の台湾への友情メッセージを改竄してしまったのである。
今回の祝電事件もそれと同じような展開らしい。
前回も今回も、安倍氏の友情のメッセージは、国際社会で孤立する台湾国民を大いに励ましたのだが、せっかくのこうした日台の絆を強くして行こうという営みも、結局は政府内部の媚中勢力によって足を引っ張られるのである。
そして今回のこうした愚劣極まりない妨害行為は、台湾で大きな波紋を呼ぶことになる。
■活気づいた中国政府と台湾の媚中勢力
岡田氏の「祝電は事実ではない」発言は、福岡分処が外交の得点を稼ぐ目的で作り話をしたとの誤解を広げ、台湾の民進党政権の顔に泥を塗った。そしてそれによって中国の民進党に対する誹謗宣伝工作は更に勢いづき、台湾国内の親中勢力(野党国民党)をも活気づかせ、日本や米国との関係を重視する同政権が窮地に追い込まれる事態となった。その経緯を以下に見よう。
【十月八日】
中国外交部(外務省)は日本政府への圧力が効いたことに満足気だ。同部報道官は「我々は日本政府がすでに公の場で(祝電が)事実でないことを認め、日本政府が中日中共同声明での立場を堅持すると再表明したことに注意をしている」などと、居丈高なコメントを発した。そして更に「台湾島内の一部の人々は自惚れないことだ。さもないと恥をかくだけ。公の場で嘘が暴露されるなど、あまり良いものではないだろう」などと、台湾政府を嘲笑して見せた。

日台両国政府を見下すコメントを発した中国外交部報道官
一方、福岡分処だが、「(祝電は)政界の友人から受け取った。長期的な信用に基づき、それらを会場(のスクリーン)で披露した。発信元が書かれていなかったため、正式な記録には載せなかった」と、その説明にはなぜか釈然としないものがある。本当に安倍氏から祝電を受けたのかはっきりしない。
そのため立法院(国会)では、国民党の議員が「国際外交における笑い話だ」などと政府を批判。それに対し蘇貞昌行政院長(首相)は「外交の訓練を受けた者としては不謹慎」と非を認め、「この件で責任を追及する」との考えを示した。徐斯倹外交部次長も「日本側の説明を尊重する」と述べた。

国民党議員からの批判を受け入れた蘇貞昌行政院長
かくして国民党や親中メディアの攻撃は更に激しさを増すのだが、実は福岡分処が祝電を巡る経緯を詳しく説明できずにいたのだ。それについて台北駐日経済文化代表処(台湾の駐日大使館)の謝長廷代表(大使)はこう述べる。
「祝電は間違いなく受け取っている。しかし(祝電に関与した)善意の友人を明らかにできない。その人が中国に報復されかねないからだ。このようにどんなに批判され辱められようとも、明確にできないことがあるのだ」
「安倍氏の故郷は山口県で、麻生氏の故郷は福岡県。両県は福岡分処の管轄であり、日頃から両県の有力者とは交流があり、いろいろなルートで祝電を送ってくる」
「外交とは微妙なものだ。嘘は犯罪だが、しかし日本側は嘘とは言っていない。それが何を意味しているか分かるだろうか。これが外交というものなのだ」

祝電は本物だとメディアに語る謝長廷駐日代表
■やはり事実だった―打ち明けられた「祝電」の真相
【十月九日】
台湾の外交部報道官は「福岡分処は確かに祝電を受けている。それは偽物ではない。しかし日本側の記録にはそれがない。問題は祝電が届けられたプロセスに手落ちがなかったかどうかだ。祝電を届けてくれた政界の友人については、台日間の信頼に基づき、その名を明らかにできない」と述べた。
【十月十六日】
しかし国民党の呉敦義主席は、事の真相がどうあろうと関係ないらしい。「祝電事件は民進党政府が外交での無能のイメージを変えようと急いだことで生じた。党内で資料を収集し、監察院に告発したい」と述べ、あくまでこの問題で民進党を攻撃する構えを見せた。

祝電はでっち上げとの前提で、政権攻撃を呼びかける国民党の呉敦義主席
【十月十七日】
国民党や親中メディアが執拗に福岡分処の責任を追及するのを受け、謝長廷氏は「福岡分処はどのように祝電を受け取ったのか。誰から受け取ったのか。これらはみな中国が知りたがっていることだ」とした上で、「私が予測したとおり、台湾には中国のため、あらゆる方法で答えを探し出し、中国の報復や制裁を手伝おうとする人間がいる」とコメントした。
【十月二十二日】
台湾外交部の報道官は「祝電が本物」であるとした上で、「祝電の発信元は安倍晋三衆議院議員の地方事務所。祝電は地方性のものだった」ことを打ち明けた。
そしてその上で「福岡分処が台日関係の敏感性を顧みなかったことに対し、厳正な訓戒を行った」ことを明らかにした。

祝電事件の真相を打ち明けた外交部報道官。これにより事件は沈静化へ
おそらく日台間では、安倍氏の地方事務所が祝電を発した事実の公表で合意がなったのではないか。これで騒ぎは沈静化へと向かった。
■問題にされるべきは台湾ではなく日本の属国根性
本国から「日台関係の敏感性」を弁えなかったと訓戒された福岡分処だが、今回の一件で最も問題にするべきは、日台関係を「敏感」なものにしてきた日本政府の過度な中国配慮だろう。
そもそも、安倍氏や麻生氏などの閣僚が、台湾政府と接触してはならないとする法律など存在しない。日中共同声明においても、政府はそうしたことはしないなどと表明していない。
ただ日本政府が、日台関係の強化を嫌う中国への配慮で、台湾との交流を極力避ける習わしを作ってきただけであり、実際には日本が台湾とどう交流しようと、すべて日本の自由なのである。台湾政府と国交樹立交渉を行う権利ですら政府にはあるのだ。なぜなら日本は主権国家だからである。
また「中華民国」や「総統」という言葉を使うなとする中国の言論統制を受けなければならない理由もない。いや日本は中国の属国でない以上、そのような統制を受け入れては絶対にならないのである。
ところが政府の実態はどうか。自ら進んで中国の属国に転落しているではないか。
■台湾が日本の仕打ちに耐え忍ぶ理由
それでありながらも、台湾政府が今回、一切日本側を責めないのはなぜなのか。それは国際社会で孤立を深める台湾が中国の脅威の前で生存し続けるには、米国及び日米同盟がどうしても必要だからなのだ。だから台湾側は日台関係の悪化を何より恐れ、日本側の不条理な仕打ちにも、じっと耐え続けているのである。何しろ日本は、ややもすればすぐに中国の言いなりになるからだ。
一方日本は、台湾がここまで遠慮し、従順であるのをいいことに、かえって中国の顔色を見ながら、必要とあれば今回のように、平然と足蹴にもするのである。
今回、嘘をついていない台湾を嘘つき呼ばわりした日本政府こそが嘘つきだった。こうした背信的な振る舞いは、もし相手が台湾でなく別の国であれば、間違いなく大きな外交問題に発展し、日本の国際的信頼は地に落ちたことだろう。
日本政府は台湾政府に謝罪するべきである。そして日台関係の不当な現状を正すべきだ。
そのためには何より政府の事大主義の姿勢を改善させなくてはならない。国民が日台は生命共同体であること(日本の生存にとっても台湾との良好な関係は不可欠であること)を認識し、中国への配慮で日台関係の強化、深化に反対することは日本が自らの首を絞めるに等しい愚行であると理解した上で、政府の媚中行為、反台行為を抑止するほどにならなければ。
今回の一件を、日本のマスメディアが報道しなかったのは甚だ残念である。国民が悪しき現状を知るにはとても良い機会だったのだが。
台湾支持運動拡大のため、よければクリックをお願いします。
↓ ↓

モバイルはこちら
↓ ↓
http://blog.with2.net/link.phplink.php
******************************************
日本のマスコミは報じていないが、台湾の政界では、安倍晋三首相と麻生太郎副総理が福岡にある台湾の出先機関に送った国慶節の「祝電」を巡り大きな騒ぎとなった。そしてこの騒動の原因となったのが、日本政府の台湾政府に対するとんでもない非礼行為だった―――――。
■台湾を驚喜させた安倍、麻生氏の台湾への友情
台北駐大阪経済文化弁事処(台湾の駐大阪総領事館)の福岡分処は十月四日、福岡市内で「中華民国一〇八年国慶レセプション」を開催した。中華民国の建国記念日を祝う毎年恒例の祝宴であるが、今回参列者を驚喜させたのが、安倍晋三首相と麻生太郎副総理から届いた以下の祝電だった。

―――中華民国108年国慶節祝賀レセプションが盛大に開催されますことを心よりお祝い申し上げますとともに、今後ますますのご繁栄と、ご参会の皆様方のご健勝とご多幸を祈念申し上げます。内閣総理大臣 安倍晋三
―――中華民国108年国慶節祝賀レセプションの開催を心からお慶び申し上げますとともに、両国の友好が更に深まりますよう、併せてご来場の皆様の益々のご発展を祈念致します。副総理兼財務金融担当大臣 衆議院議員 麻生太郎
これは台湾にとり、一大事件と言えた。なぜなら日本の政界トップから「祝電が寄せられたというだけにとどまらず、どちらも台湾を『中華民国』と呼んでおり、これは稀に見ること」(台湾紙自由時報)だからだった。


■日本にとっても頼もしい安倍首相の台湾重視
安倍、麻生両氏は、我が国政界における親台派の代表格と言える。しかし今や共に閣僚であるため、日台政府間の接触(台湾を事実上「国」として遇する)を過度に警戒する中国に配慮し、台湾との交流は自粛すべき立場にあると見られている。従って、今回のような台湾の「国」の機関が主催する行事への出席や関与などはあり得ず、中華民国という「国」の呼称の使用も許されるはずがないと一般には考えられている。
そうした閣僚の自粛こそ、日中友好を金科玉条としてきた政府、政界の習わし、掟なのであるが、台湾から見れば不条理極まるそうした掟を、この二人の政界のトップが見事に打ち破ってくれたのだから大喜びしたのは当然だ。
同国のネットメディアの新頭殻は、「中国が全力で台湾の外交空間を押し潰そうとする中、日本の安倍首相は北京の反対をも顧みず、麻生副総理とともに祝電を送り、共に『中華民国』と台湾を呼称し、台湾の「国運隆昌」を祝ってくれた」と絶賛した(「国運隆昌」とは、安倍氏の「ますますのご繁栄」との言葉の漢語訳)。これは多くの台湾国民の思いを代弁したものだろう。また対米関係に次いで対日関係を重視する台湾政府にとっても、外交政策上の大きな成果となった。
また日本からしても、中国の脅威の前において台湾は日本の生命共同体である以上、堂々と台湾との友情を深めることのできるこの首相の存在は、とても頼もしい。
しかし台湾側の喜びも束の間、やがて状況は一転する。中国が日本政府に圧力をかけてきたためだ。
■岡田官房副長官による台湾に対する背信発言
十一月七日、岡田直樹内閣官房副長官の記者会見会場に、中国国営新華社通信の女性記者が姿を見せ、こう質問した。
「報道によれば安倍首相は(中略)レセプションに祝電を送りました。その中で台湾を中華民国と称したそうです。これについてコメントをお願いします。また台湾問題に関する日本政府の立場に変化があるかどうか、お伺いします」と。
岡田氏はこれに対して驚くなかれ、次のように答えたのである。
「安倍総理が、ご指摘のような祝電を出したという事実はございません。そして日本政府の台湾に関する立場は、一九七二年の日中共同声明にある通りです」

「祝電は事実ではない」と断言した岡田氏。それでは福岡に届いたあの祝電は、偽物だったというのか。あるいは福岡分処は、祝電をでっち上げたと言うのか。完全に信義に背いた振舞である。
■一人の中国人記者の質問に恐れ戦いた日本政府
岡田氏の「日中共同声明にある通りです」というのは、政府がよく中国に対して用いるセリフである。
要するに「台湾に関する場に変化はありません」という意味だ。細かく言えば、「日本政府は日中共同声明で、中華民国ではなく、『中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する』と表明しました。その立場は今も変わりはありません。だから中華民国政府との関係を深めているなど滅相もないことで、どうぞお疑いなきよう」という感じだ。
たった一人の女性記者の質問に、政府はこれほど恐れ戦いた。もしここで「祝電は事実だ」などと答えれば、中国政府から「台湾問題は日中関係の政治的基礎。日本はそれを根底から覆す気か」と騒がれかねない。そこで日中関係の改善が急がれる今、台湾側が嘘をついたという話にし、中国に許しを請おうとしたようだ。
高々祝電くらいで、なぜここまでするのか。まるで中国の属国である。
■大国に媚び小国を足蹴にする事大主義の典型
このように、大国に迎合するためなら小国など足蹴にして恥じることのない政府は、まさに事大主義者の典型と言える。
実はこれと同じようなことは昨年二月にも見られた。当時、台湾の花蓮で大きな地震が発生したのを受け、安倍氏は「蔡英文総統宛お見舞いメッセージ」と題する見舞い電を送り、台湾で大きな話題となった。そして首相官邸のHPがその原文を掲載したのだが、外務省中国モンゴル課からの要請により、ほどなく「蔡英文総統宛」の六文字を、非礼にも削除したのだった。

実はその時に中国モンゴル課は、中国外交部(外務省)から「厳正なる交渉」(同部報道官)という名の圧力を受けていた。中国から見れば「総統」という「国」の元首の職名を用いることは、台湾を「国」と認めるに等しく、断じて許容できない。そして政府は従順にも、そうした中国のヒステリックな言論統制を受け入れ。安倍氏の台湾への友情メッセージを改竄してしまったのである。
今回の祝電事件もそれと同じような展開らしい。
前回も今回も、安倍氏の友情のメッセージは、国際社会で孤立する台湾国民を大いに励ましたのだが、せっかくのこうした日台の絆を強くして行こうという営みも、結局は政府内部の媚中勢力によって足を引っ張られるのである。
そして今回のこうした愚劣極まりない妨害行為は、台湾で大きな波紋を呼ぶことになる。
■活気づいた中国政府と台湾の媚中勢力
岡田氏の「祝電は事実ではない」発言は、福岡分処が外交の得点を稼ぐ目的で作り話をしたとの誤解を広げ、台湾の民進党政権の顔に泥を塗った。そしてそれによって中国の民進党に対する誹謗宣伝工作は更に勢いづき、台湾国内の親中勢力(野党国民党)をも活気づかせ、日本や米国との関係を重視する同政権が窮地に追い込まれる事態となった。その経緯を以下に見よう。
【十月八日】
中国外交部(外務省)は日本政府への圧力が効いたことに満足気だ。同部報道官は「我々は日本政府がすでに公の場で(祝電が)事実でないことを認め、日本政府が中日中共同声明での立場を堅持すると再表明したことに注意をしている」などと、居丈高なコメントを発した。そして更に「台湾島内の一部の人々は自惚れないことだ。さもないと恥をかくだけ。公の場で嘘が暴露されるなど、あまり良いものではないだろう」などと、台湾政府を嘲笑して見せた。

日台両国政府を見下すコメントを発した中国外交部報道官
一方、福岡分処だが、「(祝電は)政界の友人から受け取った。長期的な信用に基づき、それらを会場(のスクリーン)で披露した。発信元が書かれていなかったため、正式な記録には載せなかった」と、その説明にはなぜか釈然としないものがある。本当に安倍氏から祝電を受けたのかはっきりしない。
そのため立法院(国会)では、国民党の議員が「国際外交における笑い話だ」などと政府を批判。それに対し蘇貞昌行政院長(首相)は「外交の訓練を受けた者としては不謹慎」と非を認め、「この件で責任を追及する」との考えを示した。徐斯倹外交部次長も「日本側の説明を尊重する」と述べた。

国民党議員からの批判を受け入れた蘇貞昌行政院長
かくして国民党や親中メディアの攻撃は更に激しさを増すのだが、実は福岡分処が祝電を巡る経緯を詳しく説明できずにいたのだ。それについて台北駐日経済文化代表処(台湾の駐日大使館)の謝長廷代表(大使)はこう述べる。
「祝電は間違いなく受け取っている。しかし(祝電に関与した)善意の友人を明らかにできない。その人が中国に報復されかねないからだ。このようにどんなに批判され辱められようとも、明確にできないことがあるのだ」
「安倍氏の故郷は山口県で、麻生氏の故郷は福岡県。両県は福岡分処の管轄であり、日頃から両県の有力者とは交流があり、いろいろなルートで祝電を送ってくる」
「外交とは微妙なものだ。嘘は犯罪だが、しかし日本側は嘘とは言っていない。それが何を意味しているか分かるだろうか。これが外交というものなのだ」

祝電は本物だとメディアに語る謝長廷駐日代表
■やはり事実だった―打ち明けられた「祝電」の真相
【十月九日】
台湾の外交部報道官は「福岡分処は確かに祝電を受けている。それは偽物ではない。しかし日本側の記録にはそれがない。問題は祝電が届けられたプロセスに手落ちがなかったかどうかだ。祝電を届けてくれた政界の友人については、台日間の信頼に基づき、その名を明らかにできない」と述べた。
【十月十六日】
しかし国民党の呉敦義主席は、事の真相がどうあろうと関係ないらしい。「祝電事件は民進党政府が外交での無能のイメージを変えようと急いだことで生じた。党内で資料を収集し、監察院に告発したい」と述べ、あくまでこの問題で民進党を攻撃する構えを見せた。

祝電はでっち上げとの前提で、政権攻撃を呼びかける国民党の呉敦義主席
【十月十七日】
国民党や親中メディアが執拗に福岡分処の責任を追及するのを受け、謝長廷氏は「福岡分処はどのように祝電を受け取ったのか。誰から受け取ったのか。これらはみな中国が知りたがっていることだ」とした上で、「私が予測したとおり、台湾には中国のため、あらゆる方法で答えを探し出し、中国の報復や制裁を手伝おうとする人間がいる」とコメントした。
【十月二十二日】
台湾外交部の報道官は「祝電が本物」であるとした上で、「祝電の発信元は安倍晋三衆議院議員の地方事務所。祝電は地方性のものだった」ことを打ち明けた。
そしてその上で「福岡分処が台日関係の敏感性を顧みなかったことに対し、厳正な訓戒を行った」ことを明らかにした。

祝電事件の真相を打ち明けた外交部報道官。これにより事件は沈静化へ
おそらく日台間では、安倍氏の地方事務所が祝電を発した事実の公表で合意がなったのではないか。これで騒ぎは沈静化へと向かった。
■問題にされるべきは台湾ではなく日本の属国根性
本国から「日台関係の敏感性」を弁えなかったと訓戒された福岡分処だが、今回の一件で最も問題にするべきは、日台関係を「敏感」なものにしてきた日本政府の過度な中国配慮だろう。
そもそも、安倍氏や麻生氏などの閣僚が、台湾政府と接触してはならないとする法律など存在しない。日中共同声明においても、政府はそうしたことはしないなどと表明していない。
ただ日本政府が、日台関係の強化を嫌う中国への配慮で、台湾との交流を極力避ける習わしを作ってきただけであり、実際には日本が台湾とどう交流しようと、すべて日本の自由なのである。台湾政府と国交樹立交渉を行う権利ですら政府にはあるのだ。なぜなら日本は主権国家だからである。
また「中華民国」や「総統」という言葉を使うなとする中国の言論統制を受けなければならない理由もない。いや日本は中国の属国でない以上、そのような統制を受け入れては絶対にならないのである。
ところが政府の実態はどうか。自ら進んで中国の属国に転落しているではないか。
■台湾が日本の仕打ちに耐え忍ぶ理由
それでありながらも、台湾政府が今回、一切日本側を責めないのはなぜなのか。それは国際社会で孤立を深める台湾が中国の脅威の前で生存し続けるには、米国及び日米同盟がどうしても必要だからなのだ。だから台湾側は日台関係の悪化を何より恐れ、日本側の不条理な仕打ちにも、じっと耐え続けているのである。何しろ日本は、ややもすればすぐに中国の言いなりになるからだ。
一方日本は、台湾がここまで遠慮し、従順であるのをいいことに、かえって中国の顔色を見ながら、必要とあれば今回のように、平然と足蹴にもするのである。
今回、嘘をついていない台湾を嘘つき呼ばわりした日本政府こそが嘘つきだった。こうした背信的な振る舞いは、もし相手が台湾でなく別の国であれば、間違いなく大きな外交問題に発展し、日本の国際的信頼は地に落ちたことだろう。
日本政府は台湾政府に謝罪するべきである。そして日台関係の不当な現状を正すべきだ。
そのためには何より政府の事大主義の姿勢を改善させなくてはならない。国民が日台は生命共同体であること(日本の生存にとっても台湾との良好な関係は不可欠であること)を認識し、中国への配慮で日台関係の強化、深化に反対することは日本が自らの首を絞めるに等しい愚行であると理解した上で、政府の媚中行為、反台行為を抑止するほどにならなければ。
今回の一件を、日本のマスメディアが報道しなかったのは甚だ残念である。国民が悪しき現状を知るにはとても良い機会だったのだが。
スポンサーサイト