中国影響下のWHOー年次総会に台湾は参加できるか
2017/05/01/Mon
■世界保健機関が台湾への政治的差別という憲章違反か
台湾の蔡英文総統は四月二十九日、ツイッターでこう発言した。
―――台湾はいかなる理由であれ、今年のWHA(世界保健機関=WHO年次総会)から排除されるべきではない。健康の問題で国境を設けてはならない。台湾の世界的健康問題に対する役割は重要だ。
―――台湾は困難な健康問題に直面する他の国々を支援することに尽力し、積極的に世界的な健康計画にも積極的に貢献している。

WHO憲章は「人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることはあらゆる人々にとり基本的人権の一つ」と謳っているが、そのWHOから台湾は差別され、そして排除されようとしているのか。
今年のWHAは五月二十二日から開催されるが、参加申請は八日に締め切られる。台湾はWHO加盟国ではないが、二〇〇九年からは毎年、WHO事務局から招待状を受け、オブザーバーとして参加してきただが、しかし今年は四月三十日現在、まだそれが届いていないのだ。
そこで蔡総統は上記の訴えを発信したのである。
■「一つの中国」掲げる中国がWHO事務局と密約締結
そもそもなぜ台湾はWHOに加盟しないのかと言えば、それは中国の妨害で加盟できないのだ。
中華民国(台湾)はもともと加盟国だったのだが、一九七一年の国連第二七五八決議(アルバニア決議)で、中華人民共和国に「中国唯一の合法政権」の座を奪われ、国連及びそれに帰属する機関からの追放が決まったため、それにともなうWHA第二五・一決議に基づき、WHOからも脱退を余儀なくされた。しかし「中国唯一の合法政権」の座を争うのを停止した民主化後の一九九七年以降は、WHAへのオブザーバー参加の申請を開始した。
しかし毎年、「台湾は中国の一部であり、参加の資格はない」と主張する中国の妨害圧力を背景に、台湾参加の可否は議題にもならなかったのである。
そうしたなか、二〇〇三年のSARAS騒動の際はWHOからの疫病情報が台湾に伝達されず、被害を拡大する結果となった。そこで翌年から日米などが台湾のオブザーバー参加の支持を公に表明するようになった。
これに対して中国は「一つの中国」(台湾は中国領土の一部)の虚構を押し付ける法律戦に出る。二〇〇五年、WHO事務局との間で「台湾の専門家の参加については事前に中国に連絡し、その同意が必要」「台湾で疫病が発生した際の支援活動は中国の同意が必要」等々と規定する覚書を密かに締結したのだ。
■中国人事務局長の就任でますます中国の傀儡色が
二〇〇六年には香港のマーガレット・チャン元衛生署長が事務局長に就任。中国人がトップになったことで、事務局の中国傀儡色はますます深みを帯びて行った。

習近平主席から「一つの中国」原則の捧持ぶりを讃えられたWHOのトップ、マーガレット・チャン事務局長
彼女は二〇〇七年、この覚書を執行すると表明した。二〇〇八年には中国の王光亜国連大使が「台湾の衛生事業は覚書を通じて中国の協力を得られるようになった」と公言している。
そして台湾では二〇〇八年、「一つの中国」原則を掲げる国民党の馬英九政権が発足。中国側にWHA参加の意向を伝えた。かくて二〇〇九年以来毎年、チャン事務局長は中国の同意の下、「チャイニーズタイペイ」(中国領台北)名義でのオブザーバー参加を許すこととした。それ以来、馬英九政権は毎年チャン氏から招待状を受け取り、そのような形で参加を繰り返した。

「チャイニーズタイペイ」の名でのオブザーバー参加しか認められなかった台湾。しかし馬英九総統はこうした屈辱
も自らの栄光とした
ただし問題は、それがあくまでも中華人民共和国の一員としての参加という位置付けであるということだ。それはチャン氏が二〇一〇年に加盟各国に対し、対外秘として送付した「中国台湾省に対する執行作業規則」なる文書を見れば明らかである。その名称の通り、そこには「印刷であれ電子版であれ、すべてのWHOの文書は中国台湾省としなければならない」ととあり、また「台湾省に関する情報資料は中国へと分類され、その他の国のものと看做してはならない」とも記されていた。
まさに亡国のWHA参加というべきだろう。しかし馬英九総統もまた中国の傀儡の如き人物だった。彼は退任直前、「チャイニーズタイペイという適切な名称を用い、正式なオブザーバーとして各国と平等な待遇を受け、WHOから直接連絡も受けられるようになるなど、以前には夢にも思わなかったことだ」と、自らの“外交成果”を自慢気に振り返っている。
そうした中の二〇一六年五月二十日、台湾で発足したのが「一つの中国」原則の受け入れない民進党の蔡英文政権だ。当時注目されたのは、それから三日後の二十三日に開幕するその年のWHAへの招待状をもらえるかどうかだった。
■「一つの中国」認めない蔡英文政権に仕掛けた中国の罠か
結局それは届けられたのだが、ただしそこには以下のような内容の異例の断り書きが。
「国連第二七五八号決議とWHA第二五・一号決議で述べられた『一つの中国』原則に依拠しての招待である」
しかもこれが届いたのは、参加申し込み期限二日前の五月六日である。いまだ総統に就任していなかった蔡英文氏は慌ただしく参加を決めた。そして結果的には、不本意ながらも「一つの中国」を受け入れるかのような格好となった。全ては中国側が、そうなるように仕組んだ罠だったのだろうか。
ちなみにWHO事務局は、その招待状にもあるように、国連第二七五八号決議とWHA第二五・一号決議で採用されたとして「一つの中国」原則を掲げているのだが、これなどは彼らが中国の影響下に完全に組み込まれている証である。
そもそも上記の二つの決議は既述の通り、中華民国ではなく中華人民共和国を「中国唯一の合法政権」はであると認定したものである。中国はそれを以って「一つの中国原則が国際社会に受け入れられた」(台湾白書)証であるなどと宣伝するが、それは事実捏造である。これら決議は決して台湾を中華人民共和国の領土と認定したものではなかったのだ。
中国寄りとされた潘基文元国連事務総長も在任中は、第二七五八号決議を理由に「一つの中国」原則が国連事務局の立場だと表明したが、後に日米など複数の国からの批判を受け、その誤りを認めている。しかしWHOのチャン事務局長は決して自らの非を認めようとはしない。
今年一月、来訪した中国の習近平国家主席と記者会見を開いたチャン氏が、習近平氏からWHOの「一つの中国」原則の順守を称賛されるや、「WHOは中国との協力を強化して行く。引き続き『一つの中国』原則を堅持して行く」と表明している。
■理性ある国々は不条理な中国支配の状況を打破すべき
WHO憲章は「いかなる政府からも、又はこの機関外のいかなる権力者からも訓令を求め、又は受けてはならない」との中立義務を事務局長に課しているが、チャン事務局長はそれに違反し、中国の「訓令」を受けているとの疑いが濃厚だとは、多くの人々の指摘するところだ。
しかしそのチャン氏も間もなく任期が切れ、今年のWHAでは後任者が選出されることになる。候補者は三人いるが、中でも最も有力なのが英国の公衆衛生専門家であるデビッド・ナバロ国連事務総長特別顧問だ。台湾ではこの人物の就任が自国には有利だと期待されている。なぜなら他の候補者の出身国はエチオピアとパキスタンであり、それらの国に比べて英国は最も中国の圧力に抵抗できると見られているからだ。
報道ではWHO事務局には日米加仏独が今回の台湾の参加に支持を表明したそうだ。そのため蔡英文総統はツイッターで次のようにも発信していた。
―――台湾のWHA参加に関し、国際社会が継続して台湾に協力してくれることに感謝する。台湾のために声を上げていただきありがとうございます!
台湾人の基本的人権に顧みることなく、ひたすら台湾統一工作のためにWHOを政治利用し続ける中国。こうした不条理な状況は果たしていつ打破されるのか。
先ずは何の法的効力もない台湾差別の覚書を破棄するべきだ。台湾支持を表明するこれら理性ある国々のこれからの動向に期待を寄せたい。
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台湾の蔡英文総統は四月二十九日、ツイッターでこう発言した。
―――台湾はいかなる理由であれ、今年のWHA(世界保健機関=WHO年次総会)から排除されるべきではない。健康の問題で国境を設けてはならない。台湾の世界的健康問題に対する役割は重要だ。
―――台湾は困難な健康問題に直面する他の国々を支援することに尽力し、積極的に世界的な健康計画にも積極的に貢献している。

WHO憲章は「人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることはあらゆる人々にとり基本的人権の一つ」と謳っているが、そのWHOから台湾は差別され、そして排除されようとしているのか。
今年のWHAは五月二十二日から開催されるが、参加申請は八日に締め切られる。台湾はWHO加盟国ではないが、二〇〇九年からは毎年、WHO事務局から招待状を受け、オブザーバーとして参加してきただが、しかし今年は四月三十日現在、まだそれが届いていないのだ。
そこで蔡総統は上記の訴えを発信したのである。
■「一つの中国」掲げる中国がWHO事務局と密約締結
そもそもなぜ台湾はWHOに加盟しないのかと言えば、それは中国の妨害で加盟できないのだ。
中華民国(台湾)はもともと加盟国だったのだが、一九七一年の国連第二七五八決議(アルバニア決議)で、中華人民共和国に「中国唯一の合法政権」の座を奪われ、国連及びそれに帰属する機関からの追放が決まったため、それにともなうWHA第二五・一決議に基づき、WHOからも脱退を余儀なくされた。しかし「中国唯一の合法政権」の座を争うのを停止した民主化後の一九九七年以降は、WHAへのオブザーバー参加の申請を開始した。
しかし毎年、「台湾は中国の一部であり、参加の資格はない」と主張する中国の妨害圧力を背景に、台湾参加の可否は議題にもならなかったのである。
そうしたなか、二〇〇三年のSARAS騒動の際はWHOからの疫病情報が台湾に伝達されず、被害を拡大する結果となった。そこで翌年から日米などが台湾のオブザーバー参加の支持を公に表明するようになった。
これに対して中国は「一つの中国」(台湾は中国領土の一部)の虚構を押し付ける法律戦に出る。二〇〇五年、WHO事務局との間で「台湾の専門家の参加については事前に中国に連絡し、その同意が必要」「台湾で疫病が発生した際の支援活動は中国の同意が必要」等々と規定する覚書を密かに締結したのだ。
■中国人事務局長の就任でますます中国の傀儡色が
二〇〇六年には香港のマーガレット・チャン元衛生署長が事務局長に就任。中国人がトップになったことで、事務局の中国傀儡色はますます深みを帯びて行った。

習近平主席から「一つの中国」原則の捧持ぶりを讃えられたWHOのトップ、マーガレット・チャン事務局長
彼女は二〇〇七年、この覚書を執行すると表明した。二〇〇八年には中国の王光亜国連大使が「台湾の衛生事業は覚書を通じて中国の協力を得られるようになった」と公言している。
そして台湾では二〇〇八年、「一つの中国」原則を掲げる国民党の馬英九政権が発足。中国側にWHA参加の意向を伝えた。かくて二〇〇九年以来毎年、チャン事務局長は中国の同意の下、「チャイニーズタイペイ」(中国領台北)名義でのオブザーバー参加を許すこととした。それ以来、馬英九政権は毎年チャン氏から招待状を受け取り、そのような形で参加を繰り返した。

「チャイニーズタイペイ」の名でのオブザーバー参加しか認められなかった台湾。しかし馬英九総統はこうした屈辱
も自らの栄光とした
ただし問題は、それがあくまでも中華人民共和国の一員としての参加という位置付けであるということだ。それはチャン氏が二〇一〇年に加盟各国に対し、対外秘として送付した「中国台湾省に対する執行作業規則」なる文書を見れば明らかである。その名称の通り、そこには「印刷であれ電子版であれ、すべてのWHOの文書は中国台湾省としなければならない」ととあり、また「台湾省に関する情報資料は中国へと分類され、その他の国のものと看做してはならない」とも記されていた。
まさに亡国のWHA参加というべきだろう。しかし馬英九総統もまた中国の傀儡の如き人物だった。彼は退任直前、「チャイニーズタイペイという適切な名称を用い、正式なオブザーバーとして各国と平等な待遇を受け、WHOから直接連絡も受けられるようになるなど、以前には夢にも思わなかったことだ」と、自らの“外交成果”を自慢気に振り返っている。
そうした中の二〇一六年五月二十日、台湾で発足したのが「一つの中国」原則の受け入れない民進党の蔡英文政権だ。当時注目されたのは、それから三日後の二十三日に開幕するその年のWHAへの招待状をもらえるかどうかだった。
■「一つの中国」認めない蔡英文政権に仕掛けた中国の罠か
結局それは届けられたのだが、ただしそこには以下のような内容の異例の断り書きが。
「国連第二七五八号決議とWHA第二五・一号決議で述べられた『一つの中国』原則に依拠しての招待である」
しかもこれが届いたのは、参加申し込み期限二日前の五月六日である。いまだ総統に就任していなかった蔡英文氏は慌ただしく参加を決めた。そして結果的には、不本意ながらも「一つの中国」を受け入れるかのような格好となった。全ては中国側が、そうなるように仕組んだ罠だったのだろうか。
ちなみにWHO事務局は、その招待状にもあるように、国連第二七五八号決議とWHA第二五・一号決議で採用されたとして「一つの中国」原則を掲げているのだが、これなどは彼らが中国の影響下に完全に組み込まれている証である。
そもそも上記の二つの決議は既述の通り、中華民国ではなく中華人民共和国を「中国唯一の合法政権」はであると認定したものである。中国はそれを以って「一つの中国原則が国際社会に受け入れられた」(台湾白書)証であるなどと宣伝するが、それは事実捏造である。これら決議は決して台湾を中華人民共和国の領土と認定したものではなかったのだ。
中国寄りとされた潘基文元国連事務総長も在任中は、第二七五八号決議を理由に「一つの中国」原則が国連事務局の立場だと表明したが、後に日米など複数の国からの批判を受け、その誤りを認めている。しかしWHOのチャン事務局長は決して自らの非を認めようとはしない。
今年一月、来訪した中国の習近平国家主席と記者会見を開いたチャン氏が、習近平氏からWHOの「一つの中国」原則の順守を称賛されるや、「WHOは中国との協力を強化して行く。引き続き『一つの中国』原則を堅持して行く」と表明している。
■理性ある国々は不条理な中国支配の状況を打破すべき
WHO憲章は「いかなる政府からも、又はこの機関外のいかなる権力者からも訓令を求め、又は受けてはならない」との中立義務を事務局長に課しているが、チャン事務局長はそれに違反し、中国の「訓令」を受けているとの疑いが濃厚だとは、多くの人々の指摘するところだ。
しかしそのチャン氏も間もなく任期が切れ、今年のWHAでは後任者が選出されることになる。候補者は三人いるが、中でも最も有力なのが英国の公衆衛生専門家であるデビッド・ナバロ国連事務総長特別顧問だ。台湾ではこの人物の就任が自国には有利だと期待されている。なぜなら他の候補者の出身国はエチオピアとパキスタンであり、それらの国に比べて英国は最も中国の圧力に抵抗できると見られているからだ。
報道ではWHO事務局には日米加仏独が今回の台湾の参加に支持を表明したそうだ。そのため蔡英文総統はツイッターで次のようにも発信していた。
―――台湾のWHA参加に関し、国際社会が継続して台湾に協力してくれることに感謝する。台湾のために声を上げていただきありがとうございます!
台湾人の基本的人権に顧みることなく、ひたすら台湾統一工作のためにWHOを政治利用し続ける中国。こうした不条理な状況は果たしていつ打破されるのか。
先ずは何の法的効力もない台湾差別の覚書を破棄するべきだ。台湾支持を表明するこれら理性ある国々のこれからの動向に期待を寄せたい。
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