台湾問題で日米騙す中国の手口
2017/03/01/Wed
■中国による印象操作が行われている
米国のトランプ大統領は就任前の昨年十二月十一日、「なぜ『一つの中国』という政策に縛られなくてはならないのか」と、米国従来の政策の見直しを示唆する発言を行い、中国を反撥させた。
かくして世界で注目された「一つの中国」なる考えだが、この問題を巡って日本では、大きな誤解が横行している。つまりマスメディアも国民も、その多くがトランプ氏は台湾を中国領土の一部と強調する中国の「一つの中国」原則を受け入れたと思い込んでいるのである。実際にそうした誤報は、三月一日現在もなお続いている。

台湾と中国は不可分とする「一つの中国」原則をトランプ大統領が尊重すると表明との誤報が日本で続出
では何がどう誤解なのかだが、実はトランプ氏が言及した米国の「一つの中国」政策とは、中国の「一つの中国」原則とは異なり、台湾を中国領土とは認めていないものなのだ。
しかし、ともに「一つの中国」の名だから誰もが混同する。そしてそればかりか、中国側があえてそれらを混同させる印象操作を繰り返すため、ますます誤解は広がるばかりである。
■世界を惑わす中国の手の込んだ嘘
そこで中国の印象操作の手口を見てみよう。
たとえば上記のトランプ氏の発言を受けて、中国国営の新華社通信は論説を配信し、同氏を次のように牽制している。
―――米国政府は「中華人民共和国を唯一の合法政府」と承認し、「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分」であると承認することが、中米関係の政治的基礎であり、国交樹立以来の米国の歴代政権が堅持してきた政策であることをはっきり知っている。
―――この原則を破壊するいかなる言論、行為も火遊びと異ならず、中米関係の基礎を揺るがすものに他ならない。
このように、米国は「中華人民共和国を唯一の合法政府」と承認し、「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分」であるとも承認したのだと強調するのである。要するに米国は「一つの中国」原則を受け入れたはずであると。
そしてその原則こそが米中関係の政治的基礎であり、それを破壊することは許されないと恫喝しているのだが、ここにこそ世界中を惑わす、実に手の込んだ「嘘」が含まれているのである。
■米国は台湾を中国領土と認めたのか
米国が、「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分」であると承認したのは、一九七九年の米中国交樹立時に発表された共同コミュニケだ、と中国は言うだろう。
だがそれこそが、コミュニケの改竄なのである。かくて中国の「嘘」が広がる訳である。
このコミュニケを検証しよう。米国は先ずそれにおいて、確かに次の如く、「中華人民共和国は唯一の合法政府」であることは承認している。
「米合衆国は中華人民共和国政府を唯一の合法政府と承認する」
英語原文では「The United States of America recognizes the Government of the People's Republic of China as the sole legal Government of China」とあり、中国語原文では「美利堅合眾國承認中華人民共和國政府是中國的唯一合法政府」となっている。
英語では「recognize」で、中国語では「承認」とあるが、これが「(国家、政府などを正式に)承認する」の意だ。
それでは「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部」であるとも承認したのだろうか。
■中国は米中コミュニケを改竄宣伝している
それに関してはコミュニケにはこうあるだけだ。
「米合衆国は、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であるとする中国の立場を認識する」
つまり米国は「「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部」であると承認したのではなく、そのように主張する中国の立場を認識する、つまりそのような主張であるとの事実を認めると表明したのである。
これは英語原文では「The Government of the United States of America acknowledges the Chinese position that there is but one China and Taiwan is part of China」である。
そして中国語原文では「美利堅合眾國政府承認中國的立場,即只有一個中國,臺灣是中國的一部份」なのだが、ここで留意すべきは、「(事実を)認識する」の部分が、英語では「acknowledge」であるのに対し、中国語では「承認」になっていることだ。
たしかに中国語の「承認」には「recognize」の意味もあれば「acknowledge」の意味もある。そこでコミュニケの起草段階で、中国側は米国側にその旨を説明し、「acknowledge」を「承認」と中国語訳したいと申し出て許しを得たわけだ。
そしてその結果、こうしたコミュニケの中国語版が生まれ、それ以来中国は、米国は「中華人民共和国を唯一の合法政府」であると同時に、「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分」であるとも承認(recognize」)したと宣伝しているのだ。
■日本メディアは謀略に加担しているのか
繰り返すが米国は、「中華人民共和国を中国唯一の合法政府」であることは承認するも、「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分」とは認めていない。そしてこの姿勢こそが米国の「一つの中国」政策なのである。
トランプ氏は大統領就任後の二月九日、習近平主席と初の米中首脳会談を電話で行った。そしてホワイトハウスの発表によるとトランプ氏は、「習主席の求めに応じ、我々の『一つの中国』政策に従うことに同意した」という。
この所謂「我々の『一つの中国』政策」こそ、上で説明した「米国の『一つの中国』政策」なのだが、日本ではトランプ氏が「『一つの中国』原則を尊重すると表明」だとか、「台湾を中国の一部とする『一つの中国』政策の維持を表明」などといった、まさに中国の印象操作に騙された形の誤報が相次いでいるのである。

誤解の広がりの背景には中国の印象操作もある
マスメディアともあろうものが、なぜこうも簡単に騙されるのだろうか。
中にはNHKが「『台湾は中国の一部』だとする中国政府の『1つの中国』の主張を認識するとしたアメリカの政策」と正確に表現したり、産経新聞が「一つの中国」の関する米中の考えの違いを説明するとの例もあるのだが…。
私自身もマスメディア各社に誤りを指摘しつづけ、どこの読者、視聴者の窓口もそれを真摯に受け止めてくれてはいるのだが、それでもいつまでも誤りを正そうとしないのであれば、それは中国に騙されているというよりも、中国と一緒になって虚偽報道を続けていると疑わざるを得なくなる。
中国が、米国政府は「台湾は中国の一部」と承認しているとの謀略宣伝を行う最大の目的は、日米国内にそうした誤った認識を植え付け、台湾有事の際における日米同盟の発動を牽制することにある。そうした謀略にマスメディアが加担しているというなら、これはきわめて大きな問題なのである。
【過去の関連記事】
トランプは台湾を中国領土と認めていないー中国に惑わされる朝日の誤報 17/02/11
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3068.html
間違だらけの日本の報道―トランプは台湾を中国領土と認めていない(続) 17/02/13
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3069.html
必読!産経の記事が正確―トランプは台湾を中国領土と認めていない(続々)17/02/16
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-3072.html
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米国のトランプ大統領は就任前の昨年十二月十一日、「なぜ『一つの中国』という政策に縛られなくてはならないのか」と、米国従来の政策の見直しを示唆する発言を行い、中国を反撥させた。
かくして世界で注目された「一つの中国」なる考えだが、この問題を巡って日本では、大きな誤解が横行している。つまりマスメディアも国民も、その多くがトランプ氏は台湾を中国領土の一部と強調する中国の「一つの中国」原則を受け入れたと思い込んでいるのである。実際にそうした誤報は、三月一日現在もなお続いている。

台湾と中国は不可分とする「一つの中国」原則をトランプ大統領が尊重すると表明との誤報が日本で続出
では何がどう誤解なのかだが、実はトランプ氏が言及した米国の「一つの中国」政策とは、中国の「一つの中国」原則とは異なり、台湾を中国領土とは認めていないものなのだ。
しかし、ともに「一つの中国」の名だから誰もが混同する。そしてそればかりか、中国側があえてそれらを混同させる印象操作を繰り返すため、ますます誤解は広がるばかりである。
■世界を惑わす中国の手の込んだ嘘
そこで中国の印象操作の手口を見てみよう。
たとえば上記のトランプ氏の発言を受けて、中国国営の新華社通信は論説を配信し、同氏を次のように牽制している。
―――米国政府は「中華人民共和国を唯一の合法政府」と承認し、「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分」であると承認することが、中米関係の政治的基礎であり、国交樹立以来の米国の歴代政権が堅持してきた政策であることをはっきり知っている。
―――この原則を破壊するいかなる言論、行為も火遊びと異ならず、中米関係の基礎を揺るがすものに他ならない。
このように、米国は「中華人民共和国を唯一の合法政府」と承認し、「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分」であるとも承認したのだと強調するのである。要するに米国は「一つの中国」原則を受け入れたはずであると。
そしてその原則こそが米中関係の政治的基礎であり、それを破壊することは許されないと恫喝しているのだが、ここにこそ世界中を惑わす、実に手の込んだ「嘘」が含まれているのである。
■米国は台湾を中国領土と認めたのか
米国が、「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分」であると承認したのは、一九七九年の米中国交樹立時に発表された共同コミュニケだ、と中国は言うだろう。
だがそれこそが、コミュニケの改竄なのである。かくて中国の「嘘」が広がる訳である。
このコミュニケを検証しよう。米国は先ずそれにおいて、確かに次の如く、「中華人民共和国は唯一の合法政府」であることは承認している。
「米合衆国は中華人民共和国政府を唯一の合法政府と承認する」
英語原文では「The United States of America recognizes the Government of the People's Republic of China as the sole legal Government of China」とあり、中国語原文では「美利堅合眾國承認中華人民共和國政府是中國的唯一合法政府」となっている。
英語では「recognize」で、中国語では「承認」とあるが、これが「(国家、政府などを正式に)承認する」の意だ。
それでは「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部」であるとも承認したのだろうか。
■中国は米中コミュニケを改竄宣伝している
それに関してはコミュニケにはこうあるだけだ。
「米合衆国は、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であるとする中国の立場を認識する」
つまり米国は「「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部」であると承認したのではなく、そのように主張する中国の立場を認識する、つまりそのような主張であるとの事実を認めると表明したのである。
これは英語原文では「The Government of the United States of America acknowledges the Chinese position that there is but one China and Taiwan is part of China」である。
そして中国語原文では「美利堅合眾國政府承認中國的立場,即只有一個中國,臺灣是中國的一部份」なのだが、ここで留意すべきは、「(事実を)認識する」の部分が、英語では「acknowledge」であるのに対し、中国語では「承認」になっていることだ。
たしかに中国語の「承認」には「recognize」の意味もあれば「acknowledge」の意味もある。そこでコミュニケの起草段階で、中国側は米国側にその旨を説明し、「acknowledge」を「承認」と中国語訳したいと申し出て許しを得たわけだ。
そしてその結果、こうしたコミュニケの中国語版が生まれ、それ以来中国は、米国は「中華人民共和国を唯一の合法政府」であると同時に、「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分」であるとも承認(recognize」)したと宣伝しているのだ。
■日本メディアは謀略に加担しているのか
繰り返すが米国は、「中華人民共和国を中国唯一の合法政府」であることは承認するも、「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分」とは認めていない。そしてこの姿勢こそが米国の「一つの中国」政策なのである。
トランプ氏は大統領就任後の二月九日、習近平主席と初の米中首脳会談を電話で行った。そしてホワイトハウスの発表によるとトランプ氏は、「習主席の求めに応じ、我々の『一つの中国』政策に従うことに同意した」という。
この所謂「我々の『一つの中国』政策」こそ、上で説明した「米国の『一つの中国』政策」なのだが、日本ではトランプ氏が「『一つの中国』原則を尊重すると表明」だとか、「台湾を中国の一部とする『一つの中国』政策の維持を表明」などといった、まさに中国の印象操作に騙された形の誤報が相次いでいるのである。

誤解の広がりの背景には中国の印象操作もある
マスメディアともあろうものが、なぜこうも簡単に騙されるのだろうか。
中にはNHKが「『台湾は中国の一部』だとする中国政府の『1つの中国』の主張を認識するとしたアメリカの政策」と正確に表現したり、産経新聞が「一つの中国」の関する米中の考えの違いを説明するとの例もあるのだが…。
私自身もマスメディア各社に誤りを指摘しつづけ、どこの読者、視聴者の窓口もそれを真摯に受け止めてくれてはいるのだが、それでもいつまでも誤りを正そうとしないのであれば、それは中国に騙されているというよりも、中国と一緒になって虚偽報道を続けていると疑わざるを得なくなる。
中国が、米国政府は「台湾は中国の一部」と承認しているとの謀略宣伝を行う最大の目的は、日米国内にそうした誤った認識を植え付け、台湾有事の際における日米同盟の発動を牽制することにある。そうした謀略にマスメディアが加担しているというなら、これはきわめて大きな問題なのである。
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間違だらけの日本の報道―トランプは台湾を中国領土と認めていない(続) 17/02/13
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