中国空母が西太平洋へ/「張り子の虎」と笑えるか
2016/12/25/Sun
■ついに迎えた「遼寧」遠洋航海の日
十二月二十四日午後四時頃、中国海軍の空母「遼寧」が、駆逐艦三隻、フリゲート三隻、補給艦一隻とともに東に向かって航行しているのを、警戒に当たっていた海自護衛艦が初確認した。

海自が撮影した東支那海を航行中の遼寧
この日夜、中国海軍は「中国初の空母艦隊は西太平洋海域で遠洋訓練を実施する。これは遼寧にとり初の遠洋訓練だ」と発表した。
おそらく宮古水道を通過し、西太平洋へ出るのだろう。中国の海・空軍は近年、たびたびそこを経由し、西太平洋で訓練を繰り返している。
そして十日に宮古水道から西太平洋に進出した爆撃機が台湾の東側を南下してバシー海峡から南支那海へ入ったが、遼寧もやはりバシー海峡を目指すものとも分析されている。
今回の訓練について国防部の揚宇報道官は、「『空母は宅男(オタク)ではない。必ず遠洋航海を行う』との願いが、ついに実現した」と強調した。
というのは、ウクライナ製の中古品を独自に改修した遼寧の空母としての性能が海外メディアから疑われる中の二〇一三年四月、同報道官は「オタクではないのだから、いつかは軍港から遠洋航海に出る。
しかしいつ、どの海域に向かうかは、その時になってから判断する」と強がっていた。そしていよいよその日を迎えたということでホッとしたのだろう。「あの時の予告が現実化するまで三年かかった」と感慨深げに心境を吐露した。
■西太平洋を狙う中国の戦略に注目を
環球時報も誇らしげだ。二十四日、次のような専門家のコメントを紹介している。
「先ず、自己防衛の能力が形成されたから、列島線(※日本、台湾と連なる第一列島線)を超えることができるようになった。そして、艦載機とパイロットの数が一定水準に達し、空母自体の設備が整い、各種艦載機の維持、保障能力が備わったということでもある。そして更には艦隊の空母支援能力が向上したことを証明している」
もっとも産経新聞によれば、「遼寧の実戦能力に疑問を呈する声は多い。艦載機のJ15は出力不足が指摘されている上、『パイロットの訓練の精度からみても複雑な運用は困難だ』(軍事研究者)との声もある」とか。

空母としての機能が疑われる遼寧だが…
こうした海外の相変わらぬ「遼寧=張り子の虎」論に、これまで中国はいたく自尊心を傷つけられ続けてきた訳だが、しかし実際に「張り子」かどうかはともかくともかく、我々がここで再認識しなければならないことがある。
それは、どこの国も中国を攻撃しようとしていないに関わらず、あの国の軍隊がこれほどの執念を以って、東支那海、南支那海だけでなく、さらには西太平洋にまで着々と勢力を伸張させつつあるということ。その覇権主義的野心だ。
そうした好戦性、残忍性においては、日本も米国もとてもあの国にはかなわない。
■「中国空母の父」の戦略とは
防衛白書(平成二十八年度版)は最近の中国の軍事的動向について次のように指摘している。
―――近年、中国は、より遠方の海空域における作戦遂行能力の構築を目指していると考えられ、その海上戦力及び航空戦力による海洋における活動を質・量ともに急速に拡大させている。
―――海上戦力の動向としては、中国海軍の艦艇部隊による太平洋への進出回数が近年増加傾向にあり、当該進出は現在も高い頻度で継続している。
―――中国の軍事力強化においては、台湾問題への対処、具体的には台湾の独立及び外国軍隊による台湾の独立支援を阻止する能力の向上が、最優先の課題として念頭に置かれていると考えられる。
中国軍が「より遠方の海空域における作戦遂行能力の構築を目指」すのは、かつての劉華清海軍司令官の「近海防御戦略」に基づくものだ。
劉は第一・第二列島線の概念を作り出し、第一列島線内側の海域を手中にした後、第二列島線に至るまでの西太平洋海域の支配権確立を訴えた。そのため現在、「太平洋への進出回数が近年増加傾向」にあるのだ。
そして劉がその支配権確立のために不可欠であるとして提唱し続けたのが空母の建造なのである。かくて彼は「中国空母の父」と呼ばれることになる。
■日台が生命共同体である所以
「台湾問題への対処、具体的には台湾の独立及び外国軍隊による台湾の独立支援を阻止する能力」とは米軍(=日米同盟)に対する所謂「A2/AD」(接近阻止・領海拒否)能力のことだ。
それの向上を「最優先の課題」とする中国。戦略的要衝たる台湾を攻略しさえすれば、西太平洋は容易に自国の内海と化し、やがて中国はアジアに覇権を確立し、もう一方の覇権国家、米国と世界を二分するまでになるとの戦略的な計算が働いている。
ちなみに遼寧だが、その艦名が考案中の時、「施琅」が候補になったことがある。それは十七世紀、台湾を攻略した清朝の福建水師提督の名に他ならない。
なお、軍内からは「釣魚島」とすべきだとの声も上がっていた。言うまでもなくそれは尖閣諸島を指している。要するに中国は、台湾の併呑と共に、日本の属国化も狙っている訳だ。そもそも西太平洋までを「中国の海」にするというのはそういうことなのである。日台が運命共同体、生命共同体と呼ばれる所以だ。
中共が執政理念として掲げる「中国の夢=中華民族の偉大なる復興」だが、これについて二〇一五年の「国防白書」ではこう説明している。
「中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現すること。中国の夢とは強国の夢であり、軍隊にとっては強軍の夢だ。強軍であって初めて国を守ることができ、強国たるには強軍が必要なのだ」
何度も言うが、いったいどこの国からの攻撃から「国を守る」というのか。「中国の夢」とは軍事力を背景とした中国による新秩序建設に他ならず、この国の空母建造は、それへの執念の象徴に他ならない。
産経新聞によれば「中国は遼寧で得られたノウハウを継承した国産空母の建造を進めており、来年初めにも進水する見通し」である。
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【日時】平成29年1月3日(火) 10時00分~16時00分
【場所】靖国神社 第一鳥居前 (東京メトロ「九段下」駅 1番出口前)
【主催】台湾研究フォーラム(台湾研究論壇)
【連絡先】070-6484-2624/080-7796-6353
十二月二十四日午後四時頃、中国海軍の空母「遼寧」が、駆逐艦三隻、フリゲート三隻、補給艦一隻とともに東に向かって航行しているのを、警戒に当たっていた海自護衛艦が初確認した。

海自が撮影した東支那海を航行中の遼寧
この日夜、中国海軍は「中国初の空母艦隊は西太平洋海域で遠洋訓練を実施する。これは遼寧にとり初の遠洋訓練だ」と発表した。
おそらく宮古水道を通過し、西太平洋へ出るのだろう。中国の海・空軍は近年、たびたびそこを経由し、西太平洋で訓練を繰り返している。
そして十日に宮古水道から西太平洋に進出した爆撃機が台湾の東側を南下してバシー海峡から南支那海へ入ったが、遼寧もやはりバシー海峡を目指すものとも分析されている。
今回の訓練について国防部の揚宇報道官は、「『空母は宅男(オタク)ではない。必ず遠洋航海を行う』との願いが、ついに実現した」と強調した。
というのは、ウクライナ製の中古品を独自に改修した遼寧の空母としての性能が海外メディアから疑われる中の二〇一三年四月、同報道官は「オタクではないのだから、いつかは軍港から遠洋航海に出る。
しかしいつ、どの海域に向かうかは、その時になってから判断する」と強がっていた。そしていよいよその日を迎えたということでホッとしたのだろう。「あの時の予告が現実化するまで三年かかった」と感慨深げに心境を吐露した。
■西太平洋を狙う中国の戦略に注目を
環球時報も誇らしげだ。二十四日、次のような専門家のコメントを紹介している。
「先ず、自己防衛の能力が形成されたから、列島線(※日本、台湾と連なる第一列島線)を超えることができるようになった。そして、艦載機とパイロットの数が一定水準に達し、空母自体の設備が整い、各種艦載機の維持、保障能力が備わったということでもある。そして更には艦隊の空母支援能力が向上したことを証明している」
もっとも産経新聞によれば、「遼寧の実戦能力に疑問を呈する声は多い。艦載機のJ15は出力不足が指摘されている上、『パイロットの訓練の精度からみても複雑な運用は困難だ』(軍事研究者)との声もある」とか。


空母としての機能が疑われる遼寧だが…
こうした海外の相変わらぬ「遼寧=張り子の虎」論に、これまで中国はいたく自尊心を傷つけられ続けてきた訳だが、しかし実際に「張り子」かどうかはともかくともかく、我々がここで再認識しなければならないことがある。
それは、どこの国も中国を攻撃しようとしていないに関わらず、あの国の軍隊がこれほどの執念を以って、東支那海、南支那海だけでなく、さらには西太平洋にまで着々と勢力を伸張させつつあるということ。その覇権主義的野心だ。
そうした好戦性、残忍性においては、日本も米国もとてもあの国にはかなわない。
■「中国空母の父」の戦略とは
防衛白書(平成二十八年度版)は最近の中国の軍事的動向について次のように指摘している。
―――近年、中国は、より遠方の海空域における作戦遂行能力の構築を目指していると考えられ、その海上戦力及び航空戦力による海洋における活動を質・量ともに急速に拡大させている。
―――海上戦力の動向としては、中国海軍の艦艇部隊による太平洋への進出回数が近年増加傾向にあり、当該進出は現在も高い頻度で継続している。
―――中国の軍事力強化においては、台湾問題への対処、具体的には台湾の独立及び外国軍隊による台湾の独立支援を阻止する能力の向上が、最優先の課題として念頭に置かれていると考えられる。
中国軍が「より遠方の海空域における作戦遂行能力の構築を目指」すのは、かつての劉華清海軍司令官の「近海防御戦略」に基づくものだ。
劉は第一・第二列島線の概念を作り出し、第一列島線内側の海域を手中にした後、第二列島線に至るまでの西太平洋海域の支配権確立を訴えた。そのため現在、「太平洋への進出回数が近年増加傾向」にあるのだ。
そして劉がその支配権確立のために不可欠であるとして提唱し続けたのが空母の建造なのである。かくて彼は「中国空母の父」と呼ばれることになる。
■日台が生命共同体である所以
「台湾問題への対処、具体的には台湾の独立及び外国軍隊による台湾の独立支援を阻止する能力」とは米軍(=日米同盟)に対する所謂「A2/AD」(接近阻止・領海拒否)能力のことだ。
それの向上を「最優先の課題」とする中国。戦略的要衝たる台湾を攻略しさえすれば、西太平洋は容易に自国の内海と化し、やがて中国はアジアに覇権を確立し、もう一方の覇権国家、米国と世界を二分するまでになるとの戦略的な計算が働いている。
ちなみに遼寧だが、その艦名が考案中の時、「施琅」が候補になったことがある。それは十七世紀、台湾を攻略した清朝の福建水師提督の名に他ならない。
なお、軍内からは「釣魚島」とすべきだとの声も上がっていた。言うまでもなくそれは尖閣諸島を指している。要するに中国は、台湾の併呑と共に、日本の属国化も狙っている訳だ。そもそも西太平洋までを「中国の海」にするというのはそういうことなのである。日台が運命共同体、生命共同体と呼ばれる所以だ。
中共が執政理念として掲げる「中国の夢=中華民族の偉大なる復興」だが、これについて二〇一五年の「国防白書」ではこう説明している。
「中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現すること。中国の夢とは強国の夢であり、軍隊にとっては強軍の夢だ。強軍であって初めて国を守ることができ、強国たるには強軍が必要なのだ」
何度も言うが、いったいどこの国からの攻撃から「国を守る」というのか。「中国の夢」とは軍事力を背景とした中国による新秩序建設に他ならず、この国の空母建造は、それへの執念の象徴に他ならない。
産経新聞によれば「中国は遼寧で得られたノウハウを継承した国産空母の建造を進めており、来年初めにも進水する見通し」である。
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【場所】靖国神社 第一鳥居前 (東京メトロ「九段下」駅 1番出口前)
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