岩波『広辞苑』は中国の宣伝媒体になるなー懸念されるその影響力
2008/02/20/Wed

中日新聞が「広辞苑、池の所在地で誤記」との報道を行った(二月十九日配信)。それによると今年一月に発売された岩波書店の『広辞苑』第六版が「薩摩川内」の説明のなかで、鹿児島県薩摩川内市の藺牟田池の所在地を、実際は内陸部であるところを同市内の離島と誤記していると言う。
これだけのことで全国に大きく報道されてしまうのは、言うまでもなくこの辞書の影響力の大きさのためだ。何しろ我が国で最も権威あるものの一つとされている。報道によると、誤記はよくあるようだ。総項目数は二十三万だと言うから、いくらかの誤りが出るのも仕方がないと言えば仕方がない。「藺牟田池」にしても、この地名は薩摩川内市に二カ所あるらしく、「新項目の調査の過程で混同したのだろう」と言う岩波側の弁明も理解できる。
岩波書店は「二刷では訂正したい」と言っているそうだが、そうすればいいのだ。それまでの間、この誤情報を鵜呑みにする人が大勢出ないことを祈りたい。
ただここで問題にしたいのは、それとはまた別の、もう一つの誤記なのだ。
それは「日中共同声明」の説明である。そこでは「一九七二年九月、北京で、田中角栄首相・大平正芳外相と中華人民共和国の周恩来首相・姫鵬飛外相とが調印した声明」とした上で、「戦争状態終結と日中の国交回復を表明したほか、日本は中華人民共和国を唯一の正統政府と認め、台湾がこれに帰属することを承認し、中国は賠償請求を放棄した」との内容説明が続くのだが、同声明には「台湾がこれ(=中華人民共和国)に帰属することを承認」と言ったことは一切書かれていないのである。
なぜなら日本は「承認」をしなかったからだ。
この誤記は一九九八年十一月に発行された第五版以来のものである。一九九一年の第四版にはそれはなかった。
ちなみに第四版では「一九七二年九月、北京で、田中角栄首相・大平正芳外相と中華人民共和国の周恩来首相・姫鵬飛外相とが調印した声明。日中国交回復を表明した」としか書かれていなかった。
ではなぜ第五版以降は、こうした誤った情報を付け加えるだろうか。そして校閲する専門家はそれを許すのだろうか。
日本には台湾が中国の一部であることを承認させ、中国統一を妨害させてはならないとの戦略思考で、「日本は中華人民共和国を正統政権と認めた以上、台湾も中国領土と認めたことになる」との事実歪曲宣伝を進める中国だが、『広辞苑』はまさにその宣伝に乗せられた格好にも見える。事実と宣伝とを「調査の過程で混同」したと言うことだろうか。
だが、中国の宣伝媒体の役を買って出ている識者、学者、出版社だらけの日本にあって、「もしかしたら『広辞苑』も」との疑念も、とうぜん湧いてきてしまうのである。
薩摩川内市内の地名問題も深刻だが、台湾の帰属先の問題はそれよりもさらに、はるかに深刻であるとの思いから、中日新聞社に電話で情報提供を行うと、おそらく『広辞苑』誤記報道の担当者なのであろう、若い感じの記者が出た。「台湾が中国領とされている」と話すと、記者は「私は詳しくないのだが、日本は台湾を中国領と承認していないのか」と聞いてきた。
新聞記者ですら、このことを知らないのだ。しかしこれは不思議なことではない。それほど台湾に関し、誤情報が蔓延していると言うことなのだろう。ますます『広辞苑』の誤記訂正の必要性を痛感した。
そこで私は「中国は日本に台湾を中国領と認めろと言っているでしょう。それは日本が認めていないからだ」と話すと、「それはそうだ」と納得し、この問題に強い関心を寄せるのだった。
つまりこのように話せば、誰もが何が本当であるかを理解できるのである。だからどんどん話して聞かさなくてはならないわけだが、それと同時に誤情報もどんどん訂正させなければならないのである。
それで『広辞苑』の編集部にも電話をし、誤記を指摘したところ、校閲者に問い合わせるなど、調査をすると言う。そしてその結果も数日後に私に伝えると約束した。
『広辞苑』編集部は「日本は台湾が中華人民共和国)に帰属することを承認した」ことが事実ではないと知ることになるだろう。だが私は、外務省中国課が同省HPにおける台湾の中国領土扱いの記述修正を拒むなど、「中国の宣伝媒体」を務める日本人の中国への「忠義心」の強さを知っているだけに、『広辞苑』が①誤りを認め、そしてさらに②訂正すると言う二段階を確かに実行するまでは、安心できないと言うのが正直な気持ちである。
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