法務省の台湾人「中国籍」扱い問題(上)―朝日・毎日報道が触れた驚くべき実態
2016/09/17/Sat
■毎日が訂正記事―悪いのは法務省では
毎日新聞は九月十五日、こんな訂正記事を配信した。
―――毎日新聞は「日本は台湾を国として承認していないため、台湾籍の人には中国の法律が適用される」と報じてきましたが、誤りでした。
それはどういうことかと言うと、次のような話だ。
―――法務省は15日、「国籍事務において、台湾出身者の人に中国の法律を適用していない。日本の国籍法が適用される」との見解を明らかにした。13日の毎日新聞の取材に対し、同省民事1課の担当者は「台湾は中国として扱う」などと説明していた。こうした点について、同省幹部は「言葉足らずの面があったが、中国の国籍法を日本政府が適用する権限も立場にもない」との見解を強調した。

報道の「謝り」を認めた毎日の記事だが・・・
実は同じ「誤報」を時事通信や朝日新聞も行っていた。
要するに各社は、蓮舫氏の二重国籍疑惑に関し、「日本政府の見解では、日本は台湾と国交がないため、台湾籍の人には中国の法律が適用される。中国の国籍法では『外国籍を取得した者は中国籍を自動的に失う』と定めており、この見解に基づけば、二重国籍の問題は生じない」といった見方を示していたのだ。
ただ朝日や時事は自らの誤報を認めてはいないようだ。しかしそれはそれで納得できる。なぜなら今回の誤報の責任はメディア各社ではなく法務省にあると思われるからだ。
■法務省はやはり「中国の法律適用」を容認している
朝日も十六日、このように書いているのである。
―――朝日新聞など複数のメディアが法務省への取材に基づき、日本政府は台湾と国交がないため、台湾籍を持つ人に中国の法律が適用されるとの立場をとるなどと報じたことから、日本在住の台湾出身者に不安が広がっているとして、法務省はこの日(※十五日)、「言葉が足りなかった」などと改めて説明した。
要するに各社は、法務省からの説明をそのまま報じただけだったのだろう。
私自身も同省から話を聞いているのだ。
「政府の見解では台湾籍の人には中国の法律が適用される」との報道の真偽を確認すべく、九日に国籍事務を所掌する法務省の民事局民事第一課に電話を入れたところ、報道については「中国の法律を適用するかどうかは中国が判断すること。(こちらの説明にも関わらず)言葉足らずだ」としながらも、誤報であるとは言わなかったのである。
しかも毎日に報道によれば、「言葉足らず」だったのはメディアではなく、法務省だったそうではないか。
同省が「台湾籍の人には中国の法律が適用される」と説明したのは間違いないと思う。
私が十五日に同課に聞いたところ、「政府は在日台湾人に中国の法律が適用されるべきだとの見解ではない。中国の法律が適用されることはあり得るという立場」と説明していた。いずれにせよ「中国の法律の適用を容認する立場」ということだ。
しかしそんな立場が許されるのか。
■台湾人に不安を与える問題は未解決のまま
「日本在住の台湾出身者に不安」を与えた今回の法務省情報だが、同省が「台湾出身者の人に中国の法律を適用していない」と声明したことで一件落着となるのだろう。蓮舫二重国籍問題に絡んで高まった世間の関心も、これで一気に薄れて行くのではないか。
しかし上記の毎日の記事をよく読むと、台湾出身者がさらに「不安」に思うべき問題が未解決であることが分かるはずだ。次の部分を再び読もう。
―――法務省は・・・13日の毎日新聞の取材に対し、同省民事1課の担当者は「台湾は中国として扱う」などと説明していた。
そして上記の朝日の記事にも。「法務省はこの日、『言葉が足りなかった』などと改めて説明した」の後に、実はこんなことも書かれているのだ。
―――ただ、日本の国籍事務では、台湾を「『中国』として扱っている」とした。

朝日の記事。「台湾人は中国籍と扱う」との看過できない法務省の
コメントが載っている
これがどれほど許されない行為であることがわかるだろうか。
一九七二年、中華人民共和国と中華民国(当時は国民党独裁時代で、いまだ自らを中国の正統政権と主張していた)のうち、前者との国交樹立を選んだ日本政府は、日中共同声明で「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と声明している。
したがって日本政府にとり「中国」とは、「中華人民共和国」しか意味せず、これにより法務省は「台湾は中華人民共和国として扱う」「国籍事務では台湾を『中華人民共和国』として扱っている」とことになるのである。
■中国の立場に立った「台湾の中国領土扱い」
しかし政府は台湾を中国領土とは認めていない。日中共同声明で政府は「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」とする「中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する」と表明したに過ぎないのだ。
この意味については同声明の調印を終えて帰国した大平正芳外相が、次のように明確な説明を行っている。
「理解し、尊重するとし、承認する立場はとらなかった。両国が永久に一致できない立場を表明した」
そして「台湾がどこのものであるかなど、舌が切れてもいえない」(とも発言している。
いかに中国から「中国領土と認めろ」と言われても、そう勝手に承認する権限は日本政府にはないということだ。政府は今日、「台湾の領土的な位置付けに関して独自の認定を行う立場にない」との見解だが、それもそういうことなのである。
ところが法務省はそうした見解を無視し、逆に「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」とする「中華人民共和国政府の立場」に立ち、台湾をその一部と「独自の認定」を行っているのだ。
そしてそうした独自見解が、「日本は台湾と国交がないため、台湾籍の人には中国の法律が適用される」との政府見解の捏造に繋がってしまったのである。
そしてさらに驚くべきは、法務省が自らのそうした振る舞いを悪いことと考えていないことなのである。だからこそ「台湾は中国として扱う」と、毎日や朝日にしゃあしゃあと言ってのけることができた。
こうした状況に毎日、朝日は何も言わないのか。
(つづく)
【過去の関連記事】
誤報か事実か―蓮舫報道で浮かび上がった政府の台湾人処遇問題 16/09/09
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2948.html
在日台湾人国籍問題―中国迎合を厭わない政府の実態 16/09/13
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2953.html
法務省が台湾国籍問題で時事・朝日の報道を否定―待たれる根本問題の解明 16/09/15
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台湾反撥!蓮舫「一つの中国」発言を考える (附:台湾チャンネル関連報道動画) 16/09/16
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2956.html
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毎日新聞は九月十五日、こんな訂正記事を配信した。
―――毎日新聞は「日本は台湾を国として承認していないため、台湾籍の人には中国の法律が適用される」と報じてきましたが、誤りでした。
それはどういうことかと言うと、次のような話だ。
―――法務省は15日、「国籍事務において、台湾出身者の人に中国の法律を適用していない。日本の国籍法が適用される」との見解を明らかにした。13日の毎日新聞の取材に対し、同省民事1課の担当者は「台湾は中国として扱う」などと説明していた。こうした点について、同省幹部は「言葉足らずの面があったが、中国の国籍法を日本政府が適用する権限も立場にもない」との見解を強調した。

報道の「謝り」を認めた毎日の記事だが・・・
実は同じ「誤報」を時事通信や朝日新聞も行っていた。
要するに各社は、蓮舫氏の二重国籍疑惑に関し、「日本政府の見解では、日本は台湾と国交がないため、台湾籍の人には中国の法律が適用される。中国の国籍法では『外国籍を取得した者は中国籍を自動的に失う』と定めており、この見解に基づけば、二重国籍の問題は生じない」といった見方を示していたのだ。
ただ朝日や時事は自らの誤報を認めてはいないようだ。しかしそれはそれで納得できる。なぜなら今回の誤報の責任はメディア各社ではなく法務省にあると思われるからだ。
■法務省はやはり「中国の法律適用」を容認している
朝日も十六日、このように書いているのである。
―――朝日新聞など複数のメディアが法務省への取材に基づき、日本政府は台湾と国交がないため、台湾籍を持つ人に中国の法律が適用されるとの立場をとるなどと報じたことから、日本在住の台湾出身者に不安が広がっているとして、法務省はこの日(※十五日)、「言葉が足りなかった」などと改めて説明した。
要するに各社は、法務省からの説明をそのまま報じただけだったのだろう。
私自身も同省から話を聞いているのだ。
「政府の見解では台湾籍の人には中国の法律が適用される」との報道の真偽を確認すべく、九日に国籍事務を所掌する法務省の民事局民事第一課に電話を入れたところ、報道については「中国の法律を適用するかどうかは中国が判断すること。(こちらの説明にも関わらず)言葉足らずだ」としながらも、誤報であるとは言わなかったのである。
しかも毎日に報道によれば、「言葉足らず」だったのはメディアではなく、法務省だったそうではないか。
同省が「台湾籍の人には中国の法律が適用される」と説明したのは間違いないと思う。
私が十五日に同課に聞いたところ、「政府は在日台湾人に中国の法律が適用されるべきだとの見解ではない。中国の法律が適用されることはあり得るという立場」と説明していた。いずれにせよ「中国の法律の適用を容認する立場」ということだ。
しかしそんな立場が許されるのか。
■台湾人に不安を与える問題は未解決のまま
「日本在住の台湾出身者に不安」を与えた今回の法務省情報だが、同省が「台湾出身者の人に中国の法律を適用していない」と声明したことで一件落着となるのだろう。蓮舫二重国籍問題に絡んで高まった世間の関心も、これで一気に薄れて行くのではないか。
しかし上記の毎日の記事をよく読むと、台湾出身者がさらに「不安」に思うべき問題が未解決であることが分かるはずだ。次の部分を再び読もう。
―――法務省は・・・13日の毎日新聞の取材に対し、同省民事1課の担当者は「台湾は中国として扱う」などと説明していた。
そして上記の朝日の記事にも。「法務省はこの日、『言葉が足りなかった』などと改めて説明した」の後に、実はこんなことも書かれているのだ。
―――ただ、日本の国籍事務では、台湾を「『中国』として扱っている」とした。

朝日の記事。「台湾人は中国籍と扱う」との看過できない法務省の
コメントが載っている
これがどれほど許されない行為であることがわかるだろうか。
一九七二年、中華人民共和国と中華民国(当時は国民党独裁時代で、いまだ自らを中国の正統政権と主張していた)のうち、前者との国交樹立を選んだ日本政府は、日中共同声明で「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と声明している。
したがって日本政府にとり「中国」とは、「中華人民共和国」しか意味せず、これにより法務省は「台湾は中華人民共和国として扱う」「国籍事務では台湾を『中華人民共和国』として扱っている」とことになるのである。
■中国の立場に立った「台湾の中国領土扱い」
しかし政府は台湾を中国領土とは認めていない。日中共同声明で政府は「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」とする「中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する」と表明したに過ぎないのだ。
この意味については同声明の調印を終えて帰国した大平正芳外相が、次のように明確な説明を行っている。
「理解し、尊重するとし、承認する立場はとらなかった。両国が永久に一致できない立場を表明した」
そして「台湾がどこのものであるかなど、舌が切れてもいえない」(とも発言している。
いかに中国から「中国領土と認めろ」と言われても、そう勝手に承認する権限は日本政府にはないということだ。政府は今日、「台湾の領土的な位置付けに関して独自の認定を行う立場にない」との見解だが、それもそういうことなのである。
ところが法務省はそうした見解を無視し、逆に「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」とする「中華人民共和国政府の立場」に立ち、台湾をその一部と「独自の認定」を行っているのだ。
そしてそうした独自見解が、「日本は台湾と国交がないため、台湾籍の人には中国の法律が適用される」との政府見解の捏造に繋がってしまったのである。
そしてさらに驚くべきは、法務省が自らのそうした振る舞いを悪いことと考えていないことなのである。だからこそ「台湾は中国として扱う」と、毎日や朝日にしゃあしゃあと言ってのけることができた。
こうした状況に毎日、朝日は何も言わないのか。
(つづく)
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