法務省が台湾国籍問題で時事・朝日の報道を否定―待たれる根本問題の解明
2016/09/15/Thu
■中国籍扱いしたが故に生まれた誤りの「政府見解」
民進党(日本)の蓮舫代表代行の二重国籍問題に関連し、時事通信は九月七日、次のように報じた。
―――日本政府の見解では、日本は台湾と国交がないため、台湾籍の人には中国の法律が適用される。中国の国籍法では「外国籍を取得した者は中国籍を自動的に失う」と定めており、この見解に基づけば、二重国籍の問題は生じない。
在日台湾人朝日新聞も八日、ほぼ同内容の報道を行っている。いずれも日本在住の台湾国民には中国の法律が適用されるとするのが政府の立場だというのだ。「台湾と国交がない」ため、台湾は中国領土であり、台湾国籍の者は中国国籍を有すると見ていると。
しかしそれが事実なら大きな誤りだ。
台湾は中国の領土の一部だというのは何の法的根拠もない中国の虚構宣伝にすぎず、日本政府も台湾を中国領土とは承認していない。たしかに「地域」との位置付けではあるが、それは「国」と認めていないという意味で、「中国の地域」としているわけではない。
したがって時事、朝日の報道は誤りではないのか。あるいは政府が自らの見解を歪めているのではないか。そうした疑問を解くために、私は九日、法務省で国籍事務を所掌する民事局民事第一課に電話を入れたところ、応対に出た職員は報道内容の否定はしなかった。
そして、「政府は台湾を中国領土と認めていないはず」と話す私に対し、「領土、国籍など、場面、場面で台湾の扱いは変わってくる」と説明するのである。
実は法務省は台湾(中華民国)国籍を持つ在日台湾人の国籍を「中国」として扱っている。だからこうした説明がなされたのだろう。
そしてそうした「中国」籍としての扱いがあるため、「中国の法律が適用される」との誤った「政府見解」なるものが成り立ってしまったのだろう。
しかしどう見ても誤りだ。それでこれが問題になるや、法務省はこれを否定した。
■法務省は報道の何を否定したのか
それについては時事が十四日に報じている。
「法務省は14日、『国籍事務において、台湾出身者に中華人民共和国の法律を適用していない』との見解を発表した」と。
(ちなみに七日の自社記事は誤りだったとは言っていない)。

日本経済新聞の記事

時事通信の記事。7日の自社記事についてはコメントなし。誤報ではなかったのか
一方、台湾紙自由時報も、「これまで『一つの中国原則』や『一つの中国、一つの台湾』といった敏感問題で態度を表明するのを避けてきた日本政府が、国籍問題で見解を示すのは珍しい」と報道し、関心の高さを示した。

台湾紙自由時報も。この問題への関心の高さを示した
それでは法務省は、時事、朝日の報道の何がどのように誤っていたというのだろうか。私は十五日、再び民事第一課に電話で尋ねた。
電話口に出たのは前回とは違う職員。次のような理由で報道を誤りだとした。
「政府は在日台湾人に中国の法律が適用されるべきだとの見解ではない。中国の法律が適用されることはあり得るという立場」
「中国は在日台湾人に中国の法律を適用すると規定していることは、ある程度把握している。しかし実際に適用するか否かは中国が判断すること」
この程度の説明なら、私はすでに九日に電話した時にも聞かされている。もっともあの時の職員は、報道を「説明不足」とするのみで「誤り」とはしていなかった。
そしてこの説明は正しいと思う。もし実際に政府が中国の法を在日台湾人に押し付けるようなことをすれば、当の昔に大問題になっているはずである。
■「一つの中国」に従う法務省の不可解な回答
それよりも、ここではもっと重要で、根本的な問題がある。それは法務省はなぜ「中国の法律が適用されることはあり得る」との見解を持つのかということだ。
私が「米国や韓国の法律が適用される可能性はあるか」と聞くと、「それはない。中国だけだ」とのこと。
これを聞いてもわかるように、法務省は「台湾は中国の一部である」する「一つの中国」の宣伝を否定していないのである。
いや法務省は「一つの中国」を否定しないばかりか、むしろそれを明確に受け入れてしまっている。上述の通り、台湾の国籍を中国籍として扱っているのだから。
「なぜそのようなことをするのか」と聞いて見た。するとこんな回答が。
「台湾の位置付けは外務省がやる。法務省は国籍事務を遂行するだけ」
前回聞かされたように、「領土、国籍など、場面、場面で台湾の扱いは変わってくる」というわけだ。
そこですかさず聞いた。「日本政府にとり『中国』とは『中華人民共和国』。中華人民共和国の外のエリアの籍を持つ人々を、どうして中華人民共和国籍と断じて好いのか」と。
これに対する説明は以下の通り。
「国籍の事務の上で『中国』と『中華人民共和国』とは必ずしもイコールではない」
不可解な回答である。
■待たれる法務省の回答と公式見解の表明
そもそも「中華人民共和国ではない中国」など、一体どこに存在するのだろうか。
政府は「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」(日中共同声明)以上、それは「中華民国」を意味しないはずである。それでは更に別の「中国」が存在するのか。
存在するはずがないのである。それであるにもかかわらず法務省は、いったい何に基づいて台湾人の国籍を「中国」とするのか。そうしなければならない根拠を聞いた。
職員は熱心な人で、私の質問にできるだけわかりやすく答えようとしてくれたのだが、この問いには「すぐには答えられない」とのこと。ただ「答えられる範囲だけになるかも知れないが、調べた後に連絡する」と約束はしてくれた。
たぶん説得力のある回答は見つけ出せないと思う。その職員は気が付いていないようだが、「一つの中国」とはフィクションであり、そんなものを受容してしまったことを正当化するなど不可能なのだ。
このような状況につき、必ずしも自由時報が書いたような、政府の「珍しい態度表明」という話ではないのである。
ただ職員によれば、それはこれからのようだ。「法務省は近く正式な見解を発表する」と言っていた。
私に質問に対する回答と共に、それにも注目しよう。
法務省には一刻も早く在日台湾人の中国籍扱いを止めてもらわなければ。中国ではなく日本の法務省なのだから。
【過去の関連記事】
誤報か事実か―蓮舫報道で浮かび上がった政府の台湾人処遇問題 16/09/09
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2948.html
在日台湾人国籍問題―中国迎合を厭わない政府の実態 16/09/13
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2953.html
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―――日本政府の見解では、日本は台湾と国交がないため、台湾籍の人には中国の法律が適用される。中国の国籍法では「外国籍を取得した者は中国籍を自動的に失う」と定めており、この見解に基づけば、二重国籍の問題は生じない。
在日台湾人朝日新聞も八日、ほぼ同内容の報道を行っている。いずれも日本在住の台湾国民には中国の法律が適用されるとするのが政府の立場だというのだ。「台湾と国交がない」ため、台湾は中国領土であり、台湾国籍の者は中国国籍を有すると見ていると。
しかしそれが事実なら大きな誤りだ。
台湾は中国の領土の一部だというのは何の法的根拠もない中国の虚構宣伝にすぎず、日本政府も台湾を中国領土とは承認していない。たしかに「地域」との位置付けではあるが、それは「国」と認めていないという意味で、「中国の地域」としているわけではない。
したがって時事、朝日の報道は誤りではないのか。あるいは政府が自らの見解を歪めているのではないか。そうした疑問を解くために、私は九日、法務省で国籍事務を所掌する民事局民事第一課に電話を入れたところ、応対に出た職員は報道内容の否定はしなかった。
そして、「政府は台湾を中国領土と認めていないはず」と話す私に対し、「領土、国籍など、場面、場面で台湾の扱いは変わってくる」と説明するのである。
実は法務省は台湾(中華民国)国籍を持つ在日台湾人の国籍を「中国」として扱っている。だからこうした説明がなされたのだろう。
そしてそうした「中国」籍としての扱いがあるため、「中国の法律が適用される」との誤った「政府見解」なるものが成り立ってしまったのだろう。
しかしどう見ても誤りだ。それでこれが問題になるや、法務省はこれを否定した。
■法務省は報道の何を否定したのか
それについては時事が十四日に報じている。
「法務省は14日、『国籍事務において、台湾出身者に中華人民共和国の法律を適用していない』との見解を発表した」と。
(ちなみに七日の自社記事は誤りだったとは言っていない)。

日本経済新聞の記事

時事通信の記事。7日の自社記事についてはコメントなし。誤報ではなかったのか
一方、台湾紙自由時報も、「これまで『一つの中国原則』や『一つの中国、一つの台湾』といった敏感問題で態度を表明するのを避けてきた日本政府が、国籍問題で見解を示すのは珍しい」と報道し、関心の高さを示した。

台湾紙自由時報も。この問題への関心の高さを示した
それでは法務省は、時事、朝日の報道の何がどのように誤っていたというのだろうか。私は十五日、再び民事第一課に電話で尋ねた。
電話口に出たのは前回とは違う職員。次のような理由で報道を誤りだとした。
「政府は在日台湾人に中国の法律が適用されるべきだとの見解ではない。中国の法律が適用されることはあり得るという立場」
「中国は在日台湾人に中国の法律を適用すると規定していることは、ある程度把握している。しかし実際に適用するか否かは中国が判断すること」
この程度の説明なら、私はすでに九日に電話した時にも聞かされている。もっともあの時の職員は、報道を「説明不足」とするのみで「誤り」とはしていなかった。
そしてこの説明は正しいと思う。もし実際に政府が中国の法を在日台湾人に押し付けるようなことをすれば、当の昔に大問題になっているはずである。
■「一つの中国」に従う法務省の不可解な回答
それよりも、ここではもっと重要で、根本的な問題がある。それは法務省はなぜ「中国の法律が適用されることはあり得る」との見解を持つのかということだ。
私が「米国や韓国の法律が適用される可能性はあるか」と聞くと、「それはない。中国だけだ」とのこと。
これを聞いてもわかるように、法務省は「台湾は中国の一部である」する「一つの中国」の宣伝を否定していないのである。
いや法務省は「一つの中国」を否定しないばかりか、むしろそれを明確に受け入れてしまっている。上述の通り、台湾の国籍を中国籍として扱っているのだから。
「なぜそのようなことをするのか」と聞いて見た。するとこんな回答が。
「台湾の位置付けは外務省がやる。法務省は国籍事務を遂行するだけ」
前回聞かされたように、「領土、国籍など、場面、場面で台湾の扱いは変わってくる」というわけだ。
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これに対する説明は以下の通り。
「国籍の事務の上で『中国』と『中華人民共和国』とは必ずしもイコールではない」
不可解な回答である。
■待たれる法務省の回答と公式見解の表明
そもそも「中華人民共和国ではない中国」など、一体どこに存在するのだろうか。
政府は「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」(日中共同声明)以上、それは「中華民国」を意味しないはずである。それでは更に別の「中国」が存在するのか。
存在するはずがないのである。それであるにもかかわらず法務省は、いったい何に基づいて台湾人の国籍を「中国」とするのか。そうしなければならない根拠を聞いた。
職員は熱心な人で、私の質問にできるだけわかりやすく答えようとしてくれたのだが、この問いには「すぐには答えられない」とのこと。ただ「答えられる範囲だけになるかも知れないが、調べた後に連絡する」と約束はしてくれた。
たぶん説得力のある回答は見つけ出せないと思う。その職員は気が付いていないようだが、「一つの中国」とはフィクションであり、そんなものを受容してしまったことを正当化するなど不可能なのだ。
このような状況につき、必ずしも自由時報が書いたような、政府の「珍しい態度表明」という話ではないのである。
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