台北「故宮博物院」は洗脳教育施設―人気観光スポットの正体
2016/03/21/Mon
■「故宮」は国民党の財産か否かという議論
台湾の国立故宮博物院は世界四大博物館の一つとされ、日本人の台北観光ツアーの多くも立ち寄る有名スポットで、言うまでもなく所蔵の文物は中国歴代王朝の皇帝コレクションだ。

故宮博物院は台湾を代表する観光スポットで日本人にも人気だが…
それではなぜそれが今、台北などにあるのかと言えば、蒋介石が中国から運び込んだからである。彼がこれら文物を接収したのは一九二八年、北伐で北京を占領した際である。そして国共内戦が激化した一九四八年から四九年にかけ、文物の中でも殊更価値の高い一部が戦火の及ばぬ台湾へ疎開したわけだ。
ところで台湾の国会では現在、先頃の選挙で初めて過半数を確保した民進党が、国民党の党資産問題を追及中だ。要するに「国庫は党庫に通ず」とされた国民党独裁時代、同党が不正取得した党資産を国に返還せよと求めているのだが、そうした中で故宮博物院の文物の帰属先も問題となっている。
なぜならそれらも、国民党により党資産と位置付けられてきたからだ。最近同党が公表した「党資産報告」にも、そのように記載されていた。
■「故宮」は中華民族の証とする民族主義者
そうした動きを苦々しく思うのが新党の郁慕明主席だ。次のような民進党痛罵を繰り返している。
「あなた達の理屈で言えば、故宮の文物は国民党が大陸(中国)から持ってきたものなのだから、国民党か大陸に返還すべきということになるが、それでもいいのか」
「もし自分達が中華民族であるのを否定するなら、直ちに故宮の国宝を大陸に返還し、台湾と大陸との関係をきれいさっぱりと清算したらいい。中華民族であることを否認するなら叛徒だ。あなた達の祖国日本へお帰りを」(※中華民族主義者は反中台湾人をしばしば日本人と蔑称する)
「先日も言った通り国宝を返還したらいい。その代わり台湾は二度と中華民族の土地ではなくなるが、それでもいいのか」
新党は極端な中華民族主義の政党で、おそらく蔣介石崇敬は国民党以上。台湾人政党である民進党への憎悪も強烈で、中華民族主義を忘れた「叛徒」(日本時代に中国人であることも忘れた日本の狗)と蔑んでいるのが、こうした発言からもわかるだろう。
■「故宮」には台湾と中国を結ぶ何かがある
それはともかく、「故宮」には台湾と中国とを結び付ける何かがあるようだ。
こうした議論を受け、馮明珠・故宮博物院長(閣僚)は三月十六日、国会の教育文化委員会でこう述べた。

中国から文物の返還要求を受けたことはないと述べた馮明珠院長
「故宮博物院の文物の所有権は中華民国にある。財政部(財務省)にも登録されている」
そしてその上で、「(中国への)返還の問題は存在しない。少なくとも私の任期中はあり得ない」と説明した。
また「中国から返還要求はないか」との質問に対し、「従来そのようなものはない」とも断言した。
それは本当ではないだろうか。なぜなら、繰り返すが「故宮」は台中を結ぶ何らかの絆になっているからだ。
■産経新聞が取り上げた中国人の意見
この問題は産経新聞(電子版)も報じている(三月二十一日、「台湾の政権交代で浮上した故宮博物院所蔵品の帰属問題」)。
それによれば台湾での議論は中国でも報じられたが、しかしあの国のネットユーザーの反応は、次のように「思いのほか冷静」だったそうだ。
「絶対に(大陸に)返還するな。戻ってきたら、訳が分からぬうちになくなってしまう」
「返還されたら、(中国共産)党が私物化してしまう」
「大陸は安全ではないので、台湾でしっかり保存してほしい」
「大陸になくてよかった。さもなければ、紅衛兵に壊されてしまっていた」
どれもこれも正論かも知れない。たしかに文化財保護の観点からは、台湾での収蔵が一番ではある。
■「故宮」文物の中国返還は台湾独立を意味する
ただ、以下のような意見もあったようだ。これは正論とは言えないと思う。
「もともと一つの中国なのだから返還する、しないの問題はないはずだ」
台湾も「中国の一部」なのだから返還する必要はないというのだが、もちろん「一つの中国」など、国民党が台湾支配を正当化するために、そして中共が台湾併呑を正当化するために、それぞれ掲げてきたフィクションなのである。
そこでもし逆に、台湾側が「返還する」と言い出したらどうなるだろう。
中国ではきっと大きな衝撃が走り、狼狽することだろう。
そして実はそうした懸念を、前出の郁慕明は代弁していたのだ。
つまり、台湾が故宮の宝物を返還するのなら、それは「自分達が中華民族であるのを否定」し、「台湾と大陸との関係をきれいさっぱりと清算」し、そして「台湾は二度と中華民族の土地ではなくなる」、つまり台湾独立に繋がりかねないということだ。
中共がそうした事態になることを警戒していないはずがない。だから中国からの返還要求が「従来ない」というのも頷ける話なのだ。
一昨年、日本で故宮博物院点が開催され、それに先立ち日本の国会では、日本での展示品の中国による差押えを防ぐための法律が、国民党政権に求めに応じて制定されたものの、ついに中国から返還請求は起こらなかったが、それも当然のことではないのか。
■故宮博物院は内外を騙す政治的施設
これは中国人独特の歴史感覚なのだが、蔣介石が故宮の文物を台湾まで運んだのは、彼がそれらを所持することこそ中国皇帝(支配者)の証であると考えていたからだ。
文物と共に台湾へ渡ってきた故宮博物院の那志良研究員は、「全世界に中華民国の台湾統治の正統性と正当性を明らかにする」ことがその目的だったと語っている。
要するに中華民国こそが中国唯一の正統なる合法政権であり、蔣介石が中国の正統なる支配者として中国の一部たる台湾を支配する正当性を、国際社会に宣伝する施設として故宮博物院が台北で建てられたということなのだ。

故宮博物院の文物は独裁者、蔣介石の台湾支配を正当化するための具だった
そして故宮博物院はまた、台湾住民に中華民族主義を扶植するための「中国人化」洗脳教育の施設としても機能して来た。
要するに「一つの中国」というフィクションを支えるための文物であり、それを内外に宣伝するための博物館であるわけだ。だから中国としては、何としてもこの施設を台湾側に維持させたいと考えているはずなのだ。少なくとも中国統一(台湾併呑)が達成されるその日までは。
中国人による台湾人支配の遺構とも言うべき故宮博物院。そんな場所とも知らずに「台湾観光と言えば故宮」と考える日本人がいかに多いことか。
あそこを訪れては、台湾と中国とは元来一体であるとの印象を深めてきたのが日本人なのだ。
そうした「故宮批判」を行うと、「芸術と政治は切り離して考えるべきだ」との意見もたまに受けるが、しかしあの博物館はあくまでも、芸術であれ歴史であれ、何事をも政治に収斂させたがる中国人ならではの政治的施設なのである。
【過去の関連記事】
媚中日本―台湾・故宮博物院展の行方/いっそ中止にしたら 14/06/21/
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2379.html
日本の「反台湾」メディアにも優しい台湾―故宮博物院事件の続報 14/06/22
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台北故宮展は中止を免れ開幕へ―日本メディアは自らの「媚中不祥事」を闇に葬るか 14/06/23
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「故宮博物院展」の展示物は台湾の物?中国の物? 14/07/01
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2388.html
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台湾の国立故宮博物院は世界四大博物館の一つとされ、日本人の台北観光ツアーの多くも立ち寄る有名スポットで、言うまでもなく所蔵の文物は中国歴代王朝の皇帝コレクションだ。

故宮博物院は台湾を代表する観光スポットで日本人にも人気だが…
それではなぜそれが今、台北などにあるのかと言えば、蒋介石が中国から運び込んだからである。彼がこれら文物を接収したのは一九二八年、北伐で北京を占領した際である。そして国共内戦が激化した一九四八年から四九年にかけ、文物の中でも殊更価値の高い一部が戦火の及ばぬ台湾へ疎開したわけだ。
ところで台湾の国会では現在、先頃の選挙で初めて過半数を確保した民進党が、国民党の党資産問題を追及中だ。要するに「国庫は党庫に通ず」とされた国民党独裁時代、同党が不正取得した党資産を国に返還せよと求めているのだが、そうした中で故宮博物院の文物の帰属先も問題となっている。
なぜならそれらも、国民党により党資産と位置付けられてきたからだ。最近同党が公表した「党資産報告」にも、そのように記載されていた。
■「故宮」は中華民族の証とする民族主義者
そうした動きを苦々しく思うのが新党の郁慕明主席だ。次のような民進党痛罵を繰り返している。
「あなた達の理屈で言えば、故宮の文物は国民党が大陸(中国)から持ってきたものなのだから、国民党か大陸に返還すべきということになるが、それでもいいのか」
「もし自分達が中華民族であるのを否定するなら、直ちに故宮の国宝を大陸に返還し、台湾と大陸との関係をきれいさっぱりと清算したらいい。中華民族であることを否認するなら叛徒だ。あなた達の祖国日本へお帰りを」(※中華民族主義者は反中台湾人をしばしば日本人と蔑称する)
「先日も言った通り国宝を返還したらいい。その代わり台湾は二度と中華民族の土地ではなくなるが、それでもいいのか」
新党は極端な中華民族主義の政党で、おそらく蔣介石崇敬は国民党以上。台湾人政党である民進党への憎悪も強烈で、中華民族主義を忘れた「叛徒」(日本時代に中国人であることも忘れた日本の狗)と蔑んでいるのが、こうした発言からもわかるだろう。
■「故宮」には台湾と中国を結ぶ何かがある
それはともかく、「故宮」には台湾と中国とを結び付ける何かがあるようだ。
こうした議論を受け、馮明珠・故宮博物院長(閣僚)は三月十六日、国会の教育文化委員会でこう述べた。

中国から文物の返還要求を受けたことはないと述べた馮明珠院長
「故宮博物院の文物の所有権は中華民国にある。財政部(財務省)にも登録されている」
そしてその上で、「(中国への)返還の問題は存在しない。少なくとも私の任期中はあり得ない」と説明した。
また「中国から返還要求はないか」との質問に対し、「従来そのようなものはない」とも断言した。
それは本当ではないだろうか。なぜなら、繰り返すが「故宮」は台中を結ぶ何らかの絆になっているからだ。
■産経新聞が取り上げた中国人の意見
この問題は産経新聞(電子版)も報じている(三月二十一日、「台湾の政権交代で浮上した故宮博物院所蔵品の帰属問題」)。
それによれば台湾での議論は中国でも報じられたが、しかしあの国のネットユーザーの反応は、次のように「思いのほか冷静」だったそうだ。
「絶対に(大陸に)返還するな。戻ってきたら、訳が分からぬうちになくなってしまう」
「返還されたら、(中国共産)党が私物化してしまう」
「大陸は安全ではないので、台湾でしっかり保存してほしい」
「大陸になくてよかった。さもなければ、紅衛兵に壊されてしまっていた」
どれもこれも正論かも知れない。たしかに文化財保護の観点からは、台湾での収蔵が一番ではある。
■「故宮」文物の中国返還は台湾独立を意味する
ただ、以下のような意見もあったようだ。これは正論とは言えないと思う。
「もともと一つの中国なのだから返還する、しないの問題はないはずだ」
台湾も「中国の一部」なのだから返還する必要はないというのだが、もちろん「一つの中国」など、国民党が台湾支配を正当化するために、そして中共が台湾併呑を正当化するために、それぞれ掲げてきたフィクションなのである。
そこでもし逆に、台湾側が「返還する」と言い出したらどうなるだろう。
中国ではきっと大きな衝撃が走り、狼狽することだろう。
そして実はそうした懸念を、前出の郁慕明は代弁していたのだ。
つまり、台湾が故宮の宝物を返還するのなら、それは「自分達が中華民族であるのを否定」し、「台湾と大陸との関係をきれいさっぱりと清算」し、そして「台湾は二度と中華民族の土地ではなくなる」、つまり台湾独立に繋がりかねないということだ。
中共がそうした事態になることを警戒していないはずがない。だから中国からの返還要求が「従来ない」というのも頷ける話なのだ。
一昨年、日本で故宮博物院点が開催され、それに先立ち日本の国会では、日本での展示品の中国による差押えを防ぐための法律が、国民党政権に求めに応じて制定されたものの、ついに中国から返還請求は起こらなかったが、それも当然のことではないのか。
■故宮博物院は内外を騙す政治的施設
これは中国人独特の歴史感覚なのだが、蔣介石が故宮の文物を台湾まで運んだのは、彼がそれらを所持することこそ中国皇帝(支配者)の証であると考えていたからだ。
文物と共に台湾へ渡ってきた故宮博物院の那志良研究員は、「全世界に中華民国の台湾統治の正統性と正当性を明らかにする」ことがその目的だったと語っている。
要するに中華民国こそが中国唯一の正統なる合法政権であり、蔣介石が中国の正統なる支配者として中国の一部たる台湾を支配する正当性を、国際社会に宣伝する施設として故宮博物院が台北で建てられたということなのだ。

故宮博物院の文物は独裁者、蔣介石の台湾支配を正当化するための具だった
そして故宮博物院はまた、台湾住民に中華民族主義を扶植するための「中国人化」洗脳教育の施設としても機能して来た。
要するに「一つの中国」というフィクションを支えるための文物であり、それを内外に宣伝するための博物館であるわけだ。だから中国としては、何としてもこの施設を台湾側に維持させたいと考えているはずなのだ。少なくとも中国統一(台湾併呑)が達成されるその日までは。
中国人による台湾人支配の遺構とも言うべき故宮博物院。そんな場所とも知らずに「台湾観光と言えば故宮」と考える日本人がいかに多いことか。
あそこを訪れては、台湾と中国とは元来一体であるとの印象を深めてきたのが日本人なのだ。
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