「台湾と中国」を「両岸」と呼称させる中国の宣伝工作
2016/03/19/Sat
■「台中」を「両岸」と呼ぶ中国の悪意
「台湾と中国」(台中)を指す言葉として「両岸」(台湾海峡両岸)というのがある。
「一つの中国」(台湾は中国の領土)原則を掲げる中国が好んで使う言葉だ。「台湾と中国」と並列にするのは、「一つの中国・一つの台湾」、あるいは「台湾独立」を作り出す陰謀だとの理屈で、「中台」と言わず、「両岸」と呼ぶわけだ。
ちなみに台湾でも「一つの中国」(一中)を掲げる国民党政権が、「両岸」と呼ぶよう公的機関に通達しているが、しかし「一つの中国・一つの台湾」(一中一台)こそが現実。「一中」はあくまでもフィクションだ。
しかも、中国の台湾侵略を正当化するための悪意の宣伝であるとも言える。
■ひまわり学生運動から二年を迎えるが
台湾で、中国とのサービス貿易協定に反対する学生らが立法院(国会)議場を占拠したヒマワリ(太陽花)学生運動の発生から三月十八日で二年を迎えたが、国会では現在、「両岸協議監督条例」の審議が続いているところだ。

ひまわり学生運動から二年
これは台中協定の監督条例の立法化を求めた学生運動に応じたものだが、そうした動きに警戒信を露わにするのが中国だ。
そもそもこの国にとってサービス貿易協定は、台湾併合への地ならし、つまり政治統一に先立つ経済統一を進めるための道具なのである。その発効を妨害した太陽花学生運動など、断じて許し難い反統一の台湾独立運動以外の何物でもない。
■中国が許容できない「台湾と中国は別々の国」
例えば、中国の国務院台湾事務弁公室の范麗青報道官は二〇一四年四月十六日の記者会見で、次のようなコメントを見せている。
「台湾独立勢力は両岸協議監督の名を借りて、『二国論』(台中は国と国との関係)や『一辺一国』(台中はそれぞれ別の国)という台独運動の主張を条文に組み込み、両岸の協議や関係を破壊するとの目的を果たそうとしている」
「我々は、圧倒的多数の台湾同胞を含む両岸の民衆が、両岸関係の平和的発展が妨害、破壊されるのを望んでいないと信じている」
この「二国論」とは「台中は国と国との関係」とする主張。「一辺一国」は「台中はそれぞれ別々の国)という意味であり、いずれも「一つの中国・一つの台湾」という現実を言い表したものである。
そしてそれが中国には甚だ不都合な現実であるからこそ、あの国はそうした主張を「台独運動の主張」と断定し、台湾がそれらを掲げるなら「武力行使も辞際ない」との構えを見せているわけである。
■民進党も「両岸」を用いるか
そうした中で台湾では一月の選挙の結果、国会では民進党が初めて単独過半数を獲得した。そして五月には同党の蔡英文主席が総統に就任することとなっているが、かの「二国論」を李登輝政権下で考案したのがこの蔡英文であり、「一辺一国」の主張もまた、民進党が打ち出して来たものだ。
そしてこの民進党が現在、台中協定の監督条例案を審議しているところなのだが、同党はこの条例の名を「両岸協議監督条例」に決めたと報じられている。
もし民進党が実際に「両岸」の二字を用いるなら、「一中一台」を否定して「一中」を受け入れたかの如き格好となる。
要するに国家主権の自己否定して来た国民党政権と同じとなってしまうわけだ。そこでそれへ非難の声が台湾国内で上がっている。

台湾独立運動家、林一方は民進党本部前で「両岸」の呼称に抗議するハンガーストライキ
■中国が押し付ける「一つの中国」原則
中国は間もなく政権を手にする民進党政権に対し、一つの中国」受け入れを要求し続けている。
たとえば習近平主席は全人代開催中の三月五日、次のように論じている。
「我々の台湾に対する大方針は明確で一貫している。台湾の政局がどう変化しても変わることはない。我々は九二年合意(「一つの中国」原則での合意)との政治的基礎を堅持し、両岸関係と平和的発展を引き続き推進する」
「我々はいかなる形の台独分裂行為であれ断固抑制し、国家の主権と領土の完全性を守る」

「一つの中国」を受け入れろと恫喝メッセージを発した習近平主席
もし民進党政権が「一つの中国」原則を容認しなければ「平和」は保証しない、と脅しているわけだ。
■米中の顔色をうかがう小国の悲哀
米国もまた、台湾がそのようにして中国を刺激し、緊張が高まるのを望んでいない。
そこで民進党は中国や米国に配慮を見せたのだろう。
かくして民進党政権は、こうした大国の圧力により、「一つの中国」原則を拒絶できなくなるのだろうか。
もしそれであるなら、まさに小国の悲哀としか言いようがない。
■日本の外務省も「両岸」と呼ぶが
日本政府はこれまで、台中を「両岸」として来た。もっとも首相などが口頭で「中台」と呼称したことも少なくないらしいが、しかし出来得る限り中国の「一つの中国」なるフィクションと歩調を合わせて来たのが事実だ。
しかし、二月に私が外務省の中国モンゴル課に問い合わせたところ、最近では「中台」とも呼ぶことが増えているという。そこでその理由を尋ねたが、くわしいことはわからなかった。
たぶんそれには、いつまでも中国の虚構宣伝に振り回され、わざわざ「両岸」という国民にはほとんど馴染みない表現を用いるべきではないとの現実的判断が働いているのではないか。
ところが台湾では、例え民進党政権でも、そんな宣伝に振り回され続けなくてはならないようである。
小国が被るこうした不条理な状況を放置していいのかとの議論は、日本でも聞かれていいと思う。
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「台湾と中国」(台中)を指す言葉として「両岸」(台湾海峡両岸)というのがある。
「一つの中国」(台湾は中国の領土)原則を掲げる中国が好んで使う言葉だ。「台湾と中国」と並列にするのは、「一つの中国・一つの台湾」、あるいは「台湾独立」を作り出す陰謀だとの理屈で、「中台」と言わず、「両岸」と呼ぶわけだ。
ちなみに台湾でも「一つの中国」(一中)を掲げる国民党政権が、「両岸」と呼ぶよう公的機関に通達しているが、しかし「一つの中国・一つの台湾」(一中一台)こそが現実。「一中」はあくまでもフィクションだ。
しかも、中国の台湾侵略を正当化するための悪意の宣伝であるとも言える。
■ひまわり学生運動から二年を迎えるが
台湾で、中国とのサービス貿易協定に反対する学生らが立法院(国会)議場を占拠したヒマワリ(太陽花)学生運動の発生から三月十八日で二年を迎えたが、国会では現在、「両岸協議監督条例」の審議が続いているところだ。

ひまわり学生運動から二年
これは台中協定の監督条例の立法化を求めた学生運動に応じたものだが、そうした動きに警戒信を露わにするのが中国だ。
そもそもこの国にとってサービス貿易協定は、台湾併合への地ならし、つまり政治統一に先立つ経済統一を進めるための道具なのである。その発効を妨害した太陽花学生運動など、断じて許し難い反統一の台湾独立運動以外の何物でもない。
■中国が許容できない「台湾と中国は別々の国」
例えば、中国の国務院台湾事務弁公室の范麗青報道官は二〇一四年四月十六日の記者会見で、次のようなコメントを見せている。
「台湾独立勢力は両岸協議監督の名を借りて、『二国論』(台中は国と国との関係)や『一辺一国』(台中はそれぞれ別の国)という台独運動の主張を条文に組み込み、両岸の協議や関係を破壊するとの目的を果たそうとしている」
「我々は、圧倒的多数の台湾同胞を含む両岸の民衆が、両岸関係の平和的発展が妨害、破壊されるのを望んでいないと信じている」
この「二国論」とは「台中は国と国との関係」とする主張。「一辺一国」は「台中はそれぞれ別々の国)という意味であり、いずれも「一つの中国・一つの台湾」という現実を言い表したものである。
そしてそれが中国には甚だ不都合な現実であるからこそ、あの国はそうした主張を「台独運動の主張」と断定し、台湾がそれらを掲げるなら「武力行使も辞際ない」との構えを見せているわけである。
■民進党も「両岸」を用いるか
そうした中で台湾では一月の選挙の結果、国会では民進党が初めて単独過半数を獲得した。そして五月には同党の蔡英文主席が総統に就任することとなっているが、かの「二国論」を李登輝政権下で考案したのがこの蔡英文であり、「一辺一国」の主張もまた、民進党が打ち出して来たものだ。
そしてこの民進党が現在、台中協定の監督条例案を審議しているところなのだが、同党はこの条例の名を「両岸協議監督条例」に決めたと報じられている。
もし民進党が実際に「両岸」の二字を用いるなら、「一中一台」を否定して「一中」を受け入れたかの如き格好となる。
要するに国家主権の自己否定して来た国民党政権と同じとなってしまうわけだ。そこでそれへ非難の声が台湾国内で上がっている。

台湾独立運動家、林一方は民進党本部前で「両岸」の呼称に抗議するハンガーストライキ
■中国が押し付ける「一つの中国」原則
中国は間もなく政権を手にする民進党政権に対し、一つの中国」受け入れを要求し続けている。
たとえば習近平主席は全人代開催中の三月五日、次のように論じている。
「我々の台湾に対する大方針は明確で一貫している。台湾の政局がどう変化しても変わることはない。我々は九二年合意(「一つの中国」原則での合意)との政治的基礎を堅持し、両岸関係と平和的発展を引き続き推進する」
「我々はいかなる形の台独分裂行為であれ断固抑制し、国家の主権と領土の完全性を守る」

「一つの中国」を受け入れろと恫喝メッセージを発した習近平主席
もし民進党政権が「一つの中国」原則を容認しなければ「平和」は保証しない、と脅しているわけだ。
■米中の顔色をうかがう小国の悲哀
米国もまた、台湾がそのようにして中国を刺激し、緊張が高まるのを望んでいない。
そこで民進党は中国や米国に配慮を見せたのだろう。
かくして民進党政権は、こうした大国の圧力により、「一つの中国」原則を拒絶できなくなるのだろうか。
もしそれであるなら、まさに小国の悲哀としか言いようがない。
■日本の外務省も「両岸」と呼ぶが
日本政府はこれまで、台中を「両岸」として来た。もっとも首相などが口頭で「中台」と呼称したことも少なくないらしいが、しかし出来得る限り中国の「一つの中国」なるフィクションと歩調を合わせて来たのが事実だ。
しかし、二月に私が外務省の中国モンゴル課に問い合わせたところ、最近では「中台」とも呼ぶことが増えているという。そこでその理由を尋ねたが、くわしいことはわからなかった。
たぶんそれには、いつまでも中国の虚構宣伝に振り回され、わざわざ「両岸」という国民にはほとんど馴染みない表現を用いるべきではないとの現実的判断が働いているのではないか。
ところが台湾では、例え民進党政権でも、そんな宣伝に振り回され続けなくてはならないようである。
小国が被るこうした不条理な状況を放置していいのかとの議論は、日本でも聞かれていいと思う。
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