「歴史問題」で狙う日本の属国化―李克強の対日アピールにメディアは呼応するな
2016/03/18/Fri
■メディアが注目した李克強の対日発言
中国の李克強首相が、三月十六日の全人代閉幕後の記者会見で見せた発言が、日本もメディアに盛んに取り上げられている。

全人代閉幕後の会見に臨んだ李克強首相。対日関係について触れたが・・・
たとえば東京新聞はこう報じた。
―――(李克強首相は)日中関係について「改善傾向にあるが、まだ強固ではなく脆弱だ」と述べた。
―――李氏は「両国は歴史問題の原則を認識し、言行を一致させなければならない。来た道を戻るのを見たくない」と従来の立場をあらためて説明。
要するに李克強は、日本の歴史問題における譲歩が、日中関係改善の前提だと強調しているのだ。
日本では多くのメディアがこの発言にうなずいているはず。「親中反安倍」の急先鋒たるこの東京新聞にしても、「安倍政権は侵略の歴史を脇に置いて『未来志向』にばかり焦点を当てるのでは信頼は勝ち得ない」(二〇一五年十一月三日社説「日韓・日中会談 指導者の信頼構築こそ」)が持論である。
だが、そう安易に中国の求めに同調していいのだろうか。何しろ中国の関係改善の要求は、単に「関係改善=仲直り」と考える一般日本人とは異なり、極めて戦略的であり謀略的なのだ。
■台湾の民進党には「平和」維持をアピール
中国には好ましからざる民進党政権が台湾で五月に発足するが、この日の会見で李克強は、その台湾との関係の在り方(民進党との関係改善)についても次のように論じている。

5月に台湾総統に就任する民進党の蔡英文主席。李克強は同党にも関係改善のメッセージを
発している
「我々は両岸(中台)経済貿易協力の措置は継続するが、もちろんその前提は九二年コンセンサスを基礎に両岸の平和的発展を維持して行くことだ。この政治的基礎に従い、皆で『同じ一つの中国』に帰属すると認めれば、どんな問題でも話し合うことができる」
この「九二年コンセンサス」とは国民党と中共との間の「一つの中国」(台湾は中国の一部)での合意のこと。国共両党はこれを「基礎」に台中関係の改善を進めてきたが、中共の関係改善の最大の目的は、台湾側を「平和統一」交渉のテーブルに就かせることなのである。
実際に国民党政権はこれまで、そうした中共のペースに乗せられてきた。同政権の所謂「対中国傾斜」というのがそれである。
それにしても、「平和的発展を維持しよう。どんな問題でも話し合うことができる」との李克強のアピールに滲み出るのが、あの国の焦燥感だ。
何しろ民進党は「一つの中国」なるフィクションを認めていない。
■第一列島線上の台湾と日本に行使する謀略
「台湾の問題は百年間放っておいていいと思う。何でそんなに急ぐのか。たかだか千数百万人の島ではないか」と語ったのは毛沢東だが(一九七一年、ニクソン米大統領との会談で)、今の中国が一転して台湾併呑を急ぐのは、かつてとは桁違いに国力が増大するなどの状況変化のためだけではなく、その国力増強を支える国家戦略のためでもある。
国家戦略とは言うまでもなく、海洋強国の建設である。
西へ西へと軍事力を伸張させ、対米防衛線を第一列島線、そしてさらには第二列島線へと移し行き、そこに至る海域で覇権を確立し、新たなアジア太平洋秩序を打ち立てようと(華夷秩序の再興=中華民族の偉大なる復興)、軍備拡張に余念なき中国にとり、第一列島線上の戦略的要衝である台湾の島は、何としても属領として支配すべきターゲットなのだ。
したがって、李克強が台湾に対し、「平和的発展の維持」の交換条件として行った「一つの中国」容認の要求は、つまるところは台湾攻略の謀略の一環なのである。
そしてそうした謀略は、台湾と共に第一列島線を構成する日本に対しても、もちろん行使されているのである。「一つの山に二匹の虎は容れない」というのが中国の華夷秩序観だ。今後構築するアジア秩序において虎(強国)は中国だけでよく、もう一方の雄である日本は米国から切り離して弱体化させ、大人しい猫にしてしまおうと目指している。

第二列島線までの海域を「中国の内海」化しようと目指す中国。そのためには台湾と日本をそれぞれ支配
下、影響下に組み込まなければならない
■「原則的共通認識」なるものを振りかざす李克強
そこで今一度、李克強の対日関係に関わる発言を見てみよう。詳しく言えば次のようなものだった。
「改善傾向にあるが、まだ強固ではなく脆弱だ。我々はお互いの歴史問題に関する原則的共通認識に基づき、言行一致でなければならない。私は来た道を戻るのを見たくない」
この「原則的共通認識」とは、両国政府が二〇一四年十一月、首脳会談に先立ち、関係改善に向けて行った協議の合意内容のメモを、厳かにも(大袈裟にも)「原則的共通認識」なる名称を付し、あたかも「外交文書」であるかのようにでっち上げられた文書に書かれた、歴史問題に関する合意の部分だろう。
それは以下のようなものだ。
「双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた」
こうしたものを振りかざす中国だが、そもそもこの文言にどんな意味が含まれているのだろう。
■中国の要求は安倍首相の靖国神社不参拝
中国側の解釈はこうだ。これは向こうの御用学者(曲星・中国国際問題研究院院長)
による解説で、中共機関紙人民日報(電子版)が配信したものである。
―――「歴史を直視し未来に向かう」だが、この「正視」とは、日本が歴史上侵略戦争を行ったことは必ず正視しなければならないということ。
―――もう一つ重要なのは「双方が達した」だ。歴史問題を巡り双方の関係の発展に対する政治的障害の最たるものが日本の指導者による靖国神社参拝だ。ここではそれに触れられていないが、しかし論理的にははっきりしている。もし中日関係を引き続き発展させたいなら、日本は正確なことをしなければならないということだ。
実際にはこの合意内容は、安倍晋三首相は任期中に靖国神社参拝をしないとの確約を求めて譲らない中国側と、「国のために戦い、倒れた方々に尊崇の念を表すのはリーダーとして当然」と強調し続ける日本側との妥協の産物なのだ。
実際に「靖国神社」の文字が見られないように、首相は靖国神社を参拝しないとの合意はなされなかったのである。
もっとも、実際にはどうであろうと中国には重要ではない。重要なのは、どんなでっち上げを行ってでも、安倍首相に「参拝しない」と誓約させる状況を作り出すことなのだ。中華皇帝の前における属国国王の如く、日本の首相に命じて自国の戦没者慰霊という国家の神聖な事業を放棄させれば、華夷秩序の再興にみ弾みがつくとでも考えているのだろう。
■「関係改善」で狙うのは日本の属国化
「右翼」の安倍首相にさえも、歴史問題=靖国神社問題で妥協、屈従の前例を作らせることに成功すれば、日本は再び従来のように、福田康夫元首相ではないが「中国の嫌がることは敢えてしない・言わない」という贖罪意識(精神的奴隷意識)に基づく対中位負け外交に回帰するだろうと、中国は期待しているのである。

華夷秩序再興を目指す中国にとり安倍首相の靖国神社参拝は断じて許せない「中華への反
逆」だ
国民党政権のように民進党政権の取込みにも成功すれば、台湾は属領の道を転げ落ちると踏んでいるのと同様、たとえばかつての反米親中の鳩山政権のように、日本も弱体化、属国化していくことを待ち望んでいるわけだ。
もちろん中国にとっては歴史問題だけでない。あるいはそれ以上に、尖閣諸島問題(東支那海問題)での日本の譲歩も重要視していることだろう。しかし今回、李克強がそこまで要求しなかったのはなぜかと言えば、覇権主義をまる出しにして日本側の対中警戒をこれ以上高めさせたくないからではないか。
少なくとも歴史問題を巡る要求であれば、日本の「親中反安倍」メディアなどの援護射撃も期待できる。
以上の如く、中国が求める日本との「関係改善」の要求は反日謀略なのである。したがって金科玉条の如く「関係改善」を訴える日本のメディアには今後注意が必要だ。
台湾では中国の影響を受けた多くのメディアが「一つの中国」なるフィクションに立っていたずらに「関係改善」を訴え、その売国姿勢が批判されているが、日本のメディアも「反日史観」に立脚し、同じようなことやらかしてはいないか。
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中国の李克強首相が、三月十六日の全人代閉幕後の記者会見で見せた発言が、日本もメディアに盛んに取り上げられている。

全人代閉幕後の会見に臨んだ李克強首相。対日関係について触れたが・・・
たとえば東京新聞はこう報じた。
―――(李克強首相は)日中関係について「改善傾向にあるが、まだ強固ではなく脆弱だ」と述べた。
―――李氏は「両国は歴史問題の原則を認識し、言行を一致させなければならない。来た道を戻るのを見たくない」と従来の立場をあらためて説明。
要するに李克強は、日本の歴史問題における譲歩が、日中関係改善の前提だと強調しているのだ。
日本では多くのメディアがこの発言にうなずいているはず。「親中反安倍」の急先鋒たるこの東京新聞にしても、「安倍政権は侵略の歴史を脇に置いて『未来志向』にばかり焦点を当てるのでは信頼は勝ち得ない」(二〇一五年十一月三日社説「日韓・日中会談 指導者の信頼構築こそ」)が持論である。
だが、そう安易に中国の求めに同調していいのだろうか。何しろ中国の関係改善の要求は、単に「関係改善=仲直り」と考える一般日本人とは異なり、極めて戦略的であり謀略的なのだ。
■台湾の民進党には「平和」維持をアピール
中国には好ましからざる民進党政権が台湾で五月に発足するが、この日の会見で李克強は、その台湾との関係の在り方(民進党との関係改善)についても次のように論じている。

5月に台湾総統に就任する民進党の蔡英文主席。李克強は同党にも関係改善のメッセージを
発している
「我々は両岸(中台)経済貿易協力の措置は継続するが、もちろんその前提は九二年コンセンサスを基礎に両岸の平和的発展を維持して行くことだ。この政治的基礎に従い、皆で『同じ一つの中国』に帰属すると認めれば、どんな問題でも話し合うことができる」
この「九二年コンセンサス」とは国民党と中共との間の「一つの中国」(台湾は中国の一部)での合意のこと。国共両党はこれを「基礎」に台中関係の改善を進めてきたが、中共の関係改善の最大の目的は、台湾側を「平和統一」交渉のテーブルに就かせることなのである。
実際に国民党政権はこれまで、そうした中共のペースに乗せられてきた。同政権の所謂「対中国傾斜」というのがそれである。
それにしても、「平和的発展を維持しよう。どんな問題でも話し合うことができる」との李克強のアピールに滲み出るのが、あの国の焦燥感だ。
何しろ民進党は「一つの中国」なるフィクションを認めていない。
■第一列島線上の台湾と日本に行使する謀略
「台湾の問題は百年間放っておいていいと思う。何でそんなに急ぐのか。たかだか千数百万人の島ではないか」と語ったのは毛沢東だが(一九七一年、ニクソン米大統領との会談で)、今の中国が一転して台湾併呑を急ぐのは、かつてとは桁違いに国力が増大するなどの状況変化のためだけではなく、その国力増強を支える国家戦略のためでもある。
国家戦略とは言うまでもなく、海洋強国の建設である。
西へ西へと軍事力を伸張させ、対米防衛線を第一列島線、そしてさらには第二列島線へと移し行き、そこに至る海域で覇権を確立し、新たなアジア太平洋秩序を打ち立てようと(華夷秩序の再興=中華民族の偉大なる復興)、軍備拡張に余念なき中国にとり、第一列島線上の戦略的要衝である台湾の島は、何としても属領として支配すべきターゲットなのだ。
したがって、李克強が台湾に対し、「平和的発展の維持」の交換条件として行った「一つの中国」容認の要求は、つまるところは台湾攻略の謀略の一環なのである。
そしてそうした謀略は、台湾と共に第一列島線を構成する日本に対しても、もちろん行使されているのである。「一つの山に二匹の虎は容れない」というのが中国の華夷秩序観だ。今後構築するアジア秩序において虎(強国)は中国だけでよく、もう一方の雄である日本は米国から切り離して弱体化させ、大人しい猫にしてしまおうと目指している。

第二列島線までの海域を「中国の内海」化しようと目指す中国。そのためには台湾と日本をそれぞれ支配
下、影響下に組み込まなければならない
■「原則的共通認識」なるものを振りかざす李克強
そこで今一度、李克強の対日関係に関わる発言を見てみよう。詳しく言えば次のようなものだった。
「改善傾向にあるが、まだ強固ではなく脆弱だ。我々はお互いの歴史問題に関する原則的共通認識に基づき、言行一致でなければならない。私は来た道を戻るのを見たくない」
この「原則的共通認識」とは、両国政府が二〇一四年十一月、首脳会談に先立ち、関係改善に向けて行った協議の合意内容のメモを、厳かにも(大袈裟にも)「原則的共通認識」なる名称を付し、あたかも「外交文書」であるかのようにでっち上げられた文書に書かれた、歴史問題に関する合意の部分だろう。
それは以下のようなものだ。
「双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた」
こうしたものを振りかざす中国だが、そもそもこの文言にどんな意味が含まれているのだろう。
■中国の要求は安倍首相の靖国神社不参拝
中国側の解釈はこうだ。これは向こうの御用学者(曲星・中国国際問題研究院院長)
による解説で、中共機関紙人民日報(電子版)が配信したものである。
―――「歴史を直視し未来に向かう」だが、この「正視」とは、日本が歴史上侵略戦争を行ったことは必ず正視しなければならないということ。
―――もう一つ重要なのは「双方が達した」だ。歴史問題を巡り双方の関係の発展に対する政治的障害の最たるものが日本の指導者による靖国神社参拝だ。ここではそれに触れられていないが、しかし論理的にははっきりしている。もし中日関係を引き続き発展させたいなら、日本は正確なことをしなければならないということだ。
実際にはこの合意内容は、安倍晋三首相は任期中に靖国神社参拝をしないとの確約を求めて譲らない中国側と、「国のために戦い、倒れた方々に尊崇の念を表すのはリーダーとして当然」と強調し続ける日本側との妥協の産物なのだ。
実際に「靖国神社」の文字が見られないように、首相は靖国神社を参拝しないとの合意はなされなかったのである。
もっとも、実際にはどうであろうと中国には重要ではない。重要なのは、どんなでっち上げを行ってでも、安倍首相に「参拝しない」と誓約させる状況を作り出すことなのだ。中華皇帝の前における属国国王の如く、日本の首相に命じて自国の戦没者慰霊という国家の神聖な事業を放棄させれば、華夷秩序の再興にみ弾みがつくとでも考えているのだろう。
■「関係改善」で狙うのは日本の属国化
「右翼」の安倍首相にさえも、歴史問題=靖国神社問題で妥協、屈従の前例を作らせることに成功すれば、日本は再び従来のように、福田康夫元首相ではないが「中国の嫌がることは敢えてしない・言わない」という贖罪意識(精神的奴隷意識)に基づく対中位負け外交に回帰するだろうと、中国は期待しているのである。

華夷秩序再興を目指す中国にとり安倍首相の靖国神社参拝は断じて許せない「中華への反
逆」だ
国民党政権のように民進党政権の取込みにも成功すれば、台湾は属領の道を転げ落ちると踏んでいるのと同様、たとえばかつての反米親中の鳩山政権のように、日本も弱体化、属国化していくことを待ち望んでいるわけだ。
もちろん中国にとっては歴史問題だけでない。あるいはそれ以上に、尖閣諸島問題(東支那海問題)での日本の譲歩も重要視していることだろう。しかし今回、李克強がそこまで要求しなかったのはなぜかと言えば、覇権主義をまる出しにして日本側の対中警戒をこれ以上高めさせたくないからではないか。
少なくとも歴史問題を巡る要求であれば、日本の「親中反安倍」メディアなどの援護射撃も期待できる。
以上の如く、中国が求める日本との「関係改善」の要求は反日謀略なのである。したがって金科玉条の如く「関係改善」を訴える日本のメディアには今後注意が必要だ。
台湾では中国の影響を受けた多くのメディアが「一つの中国」なるフィクションに立っていたずらに「関係改善」を訴え、その売国姿勢が批判されているが、日本のメディアも「反日史観」に立脚し、同じようなことやらかしてはいないか。
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