台湾新政権は反日か(下)―実は日本人の真心が通じる国であると知れ
2016/02/02/Tue
「尖閣諸島は台湾に帰属する」と発言した台湾次期総統の蔡英文・民進党主席。これに対して「反日だ」と不信感や怒りを煽ろうとする言説が日本で見られるが(日台分断を狙い中国は喜びそうだ)、実際に「反日」かと言えば同党は決してそうは見えない。それよりも日本人が問題にするべきは、同党や台湾国民に、いかにして尖閣の真実を理解させるか。日台新時代を迎え、これまで怠ってきたことをやるべきなのだ。

総統選当選直後、蔡英文が記者会見で見せた発言が一部で波紋を呼んだが…
■台湾人々には遠慮なく「尖閣の真実」を
まず我々民間にも着手できるレベルの「戦略」を考えよう。「台湾は反日だ」と怒っている閑があるなら、それを検討する方が国のためである。
以上に見てきたとおり、台湾人は中韓の人々とは違い対日問題では理性的、つまり「話せばわかる」人々なのだ。だから向こうの政府、政治家、メディア、そして国民に向い、尖閣問題の真実を遠慮なく発信し続ければいいのである。
「歴史的に見ても、国際法的に見ても、尖閣諸島は日本の領土だ」
「台湾人は中国人の嘘に踊らされてはならない」
「ともに中国から東支那海の安全を守って行こう」
こんな感じでだ。
■友情・共闘のメッセージを送れ
何しろ尖閣諸島が中国に占領されれば、日本以上に台湾が存亡の危機に立たされる可能性が高いからである。それであるのに、迫りくる中国の脅威を前に日台が不必要な対立に陥ってしまっていいのかという訴えだ。友情、共闘を求める訴えとも言っていい。
「言葉が通じない」「伝達の手段がない」というのは必ずしも問題にならない。
なぜなら今はネット時代だから。まずは日本国内で「台湾に真実のメッセージを届けよう」との気運を高めればいいのである。そしてそうした気運が高まれば、メッセージはいつの間にか台湾へと伝わって行くことだろう。
中国批判、韓国罵倒のようなストレス発散効果はないが、そうした個人的な感情に左右されずに遂行すべきものが「戦略」というものなのだ。
では、そうした民間の「戦略」はうまく行くものだろうか。
■台湾人に共鳴されたという私の経験
そこでささやかながらも、私自身の経験を話そう。実は私は長年間、台湾のマスメディアを通じたアピールなどを行ってきた。
テレビカメラを呼んで日本駐在の台湾政府機関に対して抗議を行い、それを台湾で報道させたところ、たんなる反台湾の民族主義者として扱われてしまったとのハプニングもあったが、しかしその一方で、私の主張を好意的に掲載してくれた日刊紙があったり(発行部数最大の自由時報!)、あるいは逆に批判的に取り上げたつもりで、私の訴えを全国のお茶の間に届けてくれたテレビ局があったり・・・。
そしてそうした訴えを行った結果、実は大勢の台湾人が好意的に受け止めてくれた。
前記の通り、台湾国内には尖閣の真実を知る人々は大勢おり、自国政府の尖閣に関する誤った言動には不満もあるため、そういった方面からは「よく言ってくれた」との共鳴の声も少なくないのだ。
「尖閣は日本領だ」と訴えることで台湾側から誤解を受け、私の日台交流活動に支障を来すことも覚悟していただけに、「台湾人には日本人の真心が通じる」との思いが私には強い。

「尖閣は日本領」だとした上で、中国の侵略に対する日台共闘を訴えた私の台湾向
けのビデオメッセージ。中国寄りの台湾メディアが批判的ながらもそれを取り上げ、
台湾全国に紹介してくれたのは幸い。やり続ければ道は開ける、と感じた
■中国に遠慮がちだった政府だが
そしてこうしたアピールは、日本の政府もやらなくてはならない。
これまで政府は中国に対しては、「尖閣諸島は日本固有の領土。解決すべき領有権の問題は存在しない」といった主張を、同国を過度に反撥させて両国関係がこじれない程度の穏やかさで行ってきたが、台湾に対しては今後もっと多くを語って好い。
たとえば「国民党の主張は事実に反している。民進党までが騙されて国共両党のペースに乗せられるべきではない」という説得も行うなどだ。
■政府にこそ求められる戦略的思考
もちろん一国の政府が従来の領有権の主張を取り下げるには、計り知れないリスクが伴うものだろう。しかしたとえ至難の業ではあっても、領土拡張欲などを持たない台湾人の理性を信じつつ、どれほど時間をかけてでも訴えは継続するべきだ。
台湾政府が「釣魚台は中国台湾に帰属する」との主張を取り下げることは、「台湾は中国の帰属する」との虚構宣伝の打破にも直結する。
中国が台湾併呑という長期戦略を進める以上、日本もまた日台関係の深化という長期戦略で対抗しなければならない、といった発想くらいは持つべきだろう。
■日本が種を播き育てた慰安婦のデマ
なお尖閣問題と並びもう一つ、「反日台湾」との印象をもたらすものに慰安婦問題を巡る台湾側の対日批判があるが、これについても、「反日台湾」はけしからんなどと、簡単には怒れないものがある。
最初に「強制連行」説を台湾に持ち込んだのは日本の左翼活動家たちだが、そうした誤解がその後定着してしまった背景には、そうしたデマを日本政府がきっぱりと否定しないで来たというのがあるのである。
前記の国民党政権による歴史教科書の親中反日化にも、こうしたデマはしっかりと利用されている。そしてそれに対し、良識ある学者から、またはネット上では、慰安婦の「志願」説が広がり、国民党政権との間で論争も行われて来たが、最近「強制連行」のデマに正当性を与える出来事があった。
■日韓合意が台湾に与えた不信感
所謂日韓合意という安倍晋三首相による韓国向けの不必要な謝罪がそれである。
これはさらに「なぜ台湾の元慰安婦には謝罪しないのか」との対日不信も広げてしまった。「反日韓国」を宥めるのに必死なあまり、「親日台湾」に与える誤解まで計算しなかった軽率外交の結果が、これなのである。
このように「親日台湾」を軽視、無視するという傲慢さこそ、これまで日本の官民に普遍的に見られてきたものなのだ。
そして日本人にそんな傲慢さがあるからこそ、台湾が「親日」とは異なる顔を少し見せるだけで、怒ったり、失望したりするのではないか。
■日本こそ愚かな「反台親中」国家
中国は、そんな日本人の操縦しやすい性格を見逃さないはずがない。
しばしば台湾では尖閣、慰安婦などに関する激越な反日デモが行われ、それがメディア報道を通じて日本人に衝撃を与えてきたが、あのような運動の多くは中国の影響下にある中国系住民グループによるもの。つまり日本を挑発するための中国の日台分断工作の一環でもあると私は見ている。
今回の蔡英文発言に端を発した「反日台湾」批判の言説も現れるべくして現れたという感がある。先に書いたような「反日台湾を許すな!」と言論は、今後もよく聞かれることとなるのではないか。日台関係が強化へと向かおうとすれば、中国の宣伝代行は盛んになるはずだ。
「尖閣は台湾に帰属する」と主張するのが「反日台湾」なら、日本こそ「親日台湾」を侮辱し続ける「反台日本」だった。
政府もメディアも民間も「台湾は中国に帰属する」との中国のプロパガンダを受け入れ、またはそれにあえて反対、否定しないで来たではないか。
それで台湾が、中韓の如き本物の「反日」国家にならなかったのが不思議なほどである。
(おわり)
台湾新政権は反日か(上)―波紋呼ぶ「尖閣は台湾領」発言 (附:台湾チャンネル第117回動画) 16/01/31
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2750.html
台湾新政権は反日か(中)―なぜ国民党の「尖閣」捏造宣伝から脱却できない 16/02/01
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2751.html
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総統選当選直後、蔡英文が記者会見で見せた発言が一部で波紋を呼んだが…
■台湾人々には遠慮なく「尖閣の真実」を
まず我々民間にも着手できるレベルの「戦略」を考えよう。「台湾は反日だ」と怒っている閑があるなら、それを検討する方が国のためである。
以上に見てきたとおり、台湾人は中韓の人々とは違い対日問題では理性的、つまり「話せばわかる」人々なのだ。だから向こうの政府、政治家、メディア、そして国民に向い、尖閣問題の真実を遠慮なく発信し続ければいいのである。
「歴史的に見ても、国際法的に見ても、尖閣諸島は日本の領土だ」
「台湾人は中国人の嘘に踊らされてはならない」
「ともに中国から東支那海の安全を守って行こう」
こんな感じでだ。
■友情・共闘のメッセージを送れ
何しろ尖閣諸島が中国に占領されれば、日本以上に台湾が存亡の危機に立たされる可能性が高いからである。それであるのに、迫りくる中国の脅威を前に日台が不必要な対立に陥ってしまっていいのかという訴えだ。友情、共闘を求める訴えとも言っていい。
「言葉が通じない」「伝達の手段がない」というのは必ずしも問題にならない。
なぜなら今はネット時代だから。まずは日本国内で「台湾に真実のメッセージを届けよう」との気運を高めればいいのである。そしてそうした気運が高まれば、メッセージはいつの間にか台湾へと伝わって行くことだろう。
中国批判、韓国罵倒のようなストレス発散効果はないが、そうした個人的な感情に左右されずに遂行すべきものが「戦略」というものなのだ。
では、そうした民間の「戦略」はうまく行くものだろうか。
■台湾人に共鳴されたという私の経験
そこでささやかながらも、私自身の経験を話そう。実は私は長年間、台湾のマスメディアを通じたアピールなどを行ってきた。
テレビカメラを呼んで日本駐在の台湾政府機関に対して抗議を行い、それを台湾で報道させたところ、たんなる反台湾の民族主義者として扱われてしまったとのハプニングもあったが、しかしその一方で、私の主張を好意的に掲載してくれた日刊紙があったり(発行部数最大の自由時報!)、あるいは逆に批判的に取り上げたつもりで、私の訴えを全国のお茶の間に届けてくれたテレビ局があったり・・・。
そしてそうした訴えを行った結果、実は大勢の台湾人が好意的に受け止めてくれた。
前記の通り、台湾国内には尖閣の真実を知る人々は大勢おり、自国政府の尖閣に関する誤った言動には不満もあるため、そういった方面からは「よく言ってくれた」との共鳴の声も少なくないのだ。
「尖閣は日本領だ」と訴えることで台湾側から誤解を受け、私の日台交流活動に支障を来すことも覚悟していただけに、「台湾人には日本人の真心が通じる」との思いが私には強い。

「尖閣は日本領」だとした上で、中国の侵略に対する日台共闘を訴えた私の台湾向
けのビデオメッセージ。中国寄りの台湾メディアが批判的ながらもそれを取り上げ、
台湾全国に紹介してくれたのは幸い。やり続ければ道は開ける、と感じた
■中国に遠慮がちだった政府だが
そしてこうしたアピールは、日本の政府もやらなくてはならない。
これまで政府は中国に対しては、「尖閣諸島は日本固有の領土。解決すべき領有権の問題は存在しない」といった主張を、同国を過度に反撥させて両国関係がこじれない程度の穏やかさで行ってきたが、台湾に対しては今後もっと多くを語って好い。
たとえば「国民党の主張は事実に反している。民進党までが騙されて国共両党のペースに乗せられるべきではない」という説得も行うなどだ。
■政府にこそ求められる戦略的思考
もちろん一国の政府が従来の領有権の主張を取り下げるには、計り知れないリスクが伴うものだろう。しかしたとえ至難の業ではあっても、領土拡張欲などを持たない台湾人の理性を信じつつ、どれほど時間をかけてでも訴えは継続するべきだ。
台湾政府が「釣魚台は中国台湾に帰属する」との主張を取り下げることは、「台湾は中国の帰属する」との虚構宣伝の打破にも直結する。
中国が台湾併呑という長期戦略を進める以上、日本もまた日台関係の深化という長期戦略で対抗しなければならない、といった発想くらいは持つべきだろう。
■日本が種を播き育てた慰安婦のデマ
なお尖閣問題と並びもう一つ、「反日台湾」との印象をもたらすものに慰安婦問題を巡る台湾側の対日批判があるが、これについても、「反日台湾」はけしからんなどと、簡単には怒れないものがある。
最初に「強制連行」説を台湾に持ち込んだのは日本の左翼活動家たちだが、そうした誤解がその後定着してしまった背景には、そうしたデマを日本政府がきっぱりと否定しないで来たというのがあるのである。
前記の国民党政権による歴史教科書の親中反日化にも、こうしたデマはしっかりと利用されている。そしてそれに対し、良識ある学者から、またはネット上では、慰安婦の「志願」説が広がり、国民党政権との間で論争も行われて来たが、最近「強制連行」のデマに正当性を与える出来事があった。
■日韓合意が台湾に与えた不信感
所謂日韓合意という安倍晋三首相による韓国向けの不必要な謝罪がそれである。
これはさらに「なぜ台湾の元慰安婦には謝罪しないのか」との対日不信も広げてしまった。「反日韓国」を宥めるのに必死なあまり、「親日台湾」に与える誤解まで計算しなかった軽率外交の結果が、これなのである。
このように「親日台湾」を軽視、無視するという傲慢さこそ、これまで日本の官民に普遍的に見られてきたものなのだ。
そして日本人にそんな傲慢さがあるからこそ、台湾が「親日」とは異なる顔を少し見せるだけで、怒ったり、失望したりするのではないか。
■日本こそ愚かな「反台親中」国家
中国は、そんな日本人の操縦しやすい性格を見逃さないはずがない。
しばしば台湾では尖閣、慰安婦などに関する激越な反日デモが行われ、それがメディア報道を通じて日本人に衝撃を与えてきたが、あのような運動の多くは中国の影響下にある中国系住民グループによるもの。つまり日本を挑発するための中国の日台分断工作の一環でもあると私は見ている。
今回の蔡英文発言に端を発した「反日台湾」批判の言説も現れるべくして現れたという感がある。先に書いたような「反日台湾を許すな!」と言論は、今後もよく聞かれることとなるのではないか。日台関係が強化へと向かおうとすれば、中国の宣伝代行は盛んになるはずだ。
「尖閣は台湾に帰属する」と主張するのが「反日台湾」なら、日本こそ「親日台湾」を侮辱し続ける「反台日本」だった。
政府もメディアも民間も「台湾は中国に帰属する」との中国のプロパガンダを受け入れ、またはそれにあえて反対、否定しないで来たではないか。
それで台湾が、中韓の如き本物の「反日」国家にならなかったのが不思議なほどである。
(おわり)
台湾新政権は反日か(上)―波紋呼ぶ「尖閣は台湾領」発言 (附:台湾チャンネル第117回動画) 16/01/31
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-2750.html
台湾新政権は反日か(中)―なぜ国民党の「尖閣」捏造宣伝から脱却できない 16/02/01
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