台湾総統選挙に介入を試みる中国と日本メディアの媚中
2015/09/14/Mon
■米国を利用する中国の台湾の総統選挙への妨害

民進党後任の総統候補の蔡英文主席。洪秀柱(国民党)、宋楚瑜(親民党)ら他候補を支持率で大きく上回り、政権を奪取する公算が高まっている
台湾併呑という侵略目標を正当化するため、「一つの中国」(台湾は中国の一部)なる虚構を掲げる中国。台湾の総統選挙のたびに、様々な形で介入している。
たとえば「台湾は中国に隷属しない主権独立国家」と強調する国民党本土派の李登輝氏(一九九六年)や、民進党の陳水扁氏(二〇〇〇年)といった候補者を、「台湾独立の分裂主義者」と位置付け、その当選を何としてでも阻止しようと、文攻武嚇(恫喝宣伝や軍事演習で台湾への武力行使の意志を見せつけること)を繰り返した。
しかしそのたびに失敗している。有権者は中国に反撥し、それら候補者の票を逆に押し上げた。そこでその後は、米国の力を借りて民進党候補者を牽制する手段に出ている。
それはこういうことだ。民進党政権は二〇〇四年の総統選挙では「中国に対する国防強化」などに関する公民投票を、二〇〇八年の総統選挙では「台湾の国連加盟」などに関する公民投票をそれぞれ同時に実施したが、そのつど米国は、中国から「もし投票の実施を許したら、台湾は火の海だ」などと脅された模様。いずれに対しても反対表明という内政干渉を行っている。
ところで二〇一六年一月に行われる総統選挙だが、現在のところ民進党の蔡英文候補が当選し、八年ぶりに国民党から政権を奪取する可能性が高まっている。そのため穏やかでいられないのが中国だ。
目下その動きに注目が集まっている。
■政権奪取の公算高まる民進党を牽制する中国の蠢き
実際に中国の動きは活発化している。
今年三月、習近平主席は「九二年コンセンサス」(台中間での「一つの中国」での合意とされる)を守ることが両岸(台中)関係の政治的基礎だとした上で、「基礎が牢固でなければ、地は動き山は揺れる」などと発言した。
これは「九二年コンセンサス」を認めない民進党への「文攻」とも言えるし、それと同時に利益誘導であるとも言える。
九月十一日には鳴り物(大々的な事前宣伝)入りで台湾海峡での実弾演習を実施。こちらは台湾有権者の反撥など、もはや度外視した「武嚇」とも見られるが、米国に対する要求圧力だとする分析もある。つまり例によって「米国が台湾海峡の平和を求めるなら、我々に協力し、民進党に九二年コンセンサスを受け入れるよう圧力をかけろ」と要求である。
それでは、今月下旬に訪米する習近平氏は、会見するオバマ大統領にそのような要求を行うだろうか。
■米国のアジア回帰政策で高まる台湾の重要性
「習近平氏のオバマ氏との会見は時間的な制限があるが、それでも必ず要求するだろう」
九月十一日にワシントンで開かれた台湾総統選挙に関するシンポジウム席上、そのような見方を示したのが米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の中国問題の専門家、ボニー・グレーザー氏だ。

シンポジウムで登壇したボニー・グレーザー氏(左2)
この日、同氏は次のように論じている。
―――もし国民党候補者や親民党の宋楚瑜候補が当選しても、彼らは「九二年コンセンサス」を受け入れているため、台中関係は解決困難な問題にはならない。しかし蔡英文氏がそれを受け入れることはないと思う。
―――もし蔡英文氏が当選したら、中国は対話のドアを閉じ、台湾の国際社会での活動空間を狭めるだろう。これは米国の利益にはマイナスだ。しかし台湾には将来、たくさんの困難が待ち受けてる。誰が当選しても、それらから逃げることはできない。
―――蔡英文氏は中国を挑発するようなことはしないだろう。台中関係を悪化させれば、米国との関係も影響を受ける。台湾海峡が不安定になれば米国の利益が損なわれるからだ。そのため中国は選挙終了後、あるいは総統就任後の蔡英文氏の動向を観察すると思う。米国も両者には更に弾力性を持つよう奨励するはずだ。
このように聞けば、米国もかつてほどは、台湾を中国との緊張を高める「トラブルメーカー」だと迷惑がってはいないかに感じる。アジア回帰政策により、米国にとっての台湾(民進党)の重要性が増したためともみられている。
■中国の宣伝に従う日本メディアの台湾報道
ところが、こうした状況を喜ばないのが国民党勢力だ。同党系で親中的なメディア聯合報は、この日のグレーザー氏の発言を次のように捏造して報じた。
「両岸の安定のため、次期総統は『九二年コンセンサス』を受け入れる必要がある」と。
クレーザー氏は、台湾の親中メディアの情報捏造体質をよく知っているらしい。「台湾メディアにはもううんざりだ」と吐き捨てた。裁判に訴える構えだという。
ところで、私もそれと同様に、日本の朝日、日経、産経、東京(中日)、毎日新聞などには「うんざり」している。
これらは「民進党」「民進党の蔡英文」を報じる時、しばしばその前に「台湾独立志向の」「独立の思考が強い」といった言葉を枕詞のようにくっつけるが、おかしな話だ。
だいたい「台湾独立」とは中華民国体制の否定を意味する。だが民進党はすでに十数年前から、中華民国を独立国家と位置付け、同体制を容認する立場をとっているのである。
それでもなお、各紙がその語を用いるのは、それは中国の宣伝に従っているからだろう。

朝日新聞。「台湾統一」を「悲願」などと言って、中国に同情を集める気か。少なくとも中国の侵
略政策に一定の理解を示した記事だ

産経新聞。「中国統一」に反対するのが「独立」ということか。台湾はすでに独立しており、「中
国からの独立」などあり得ない

東京新聞。「台湾独立反対」を軸にした「平和的発展」などと書かれると、民進党が反「平和」と
の誤った印象が持たれかねない

日本経済新聞。民進党は「台湾独立」志向で中国の武力行使を誘発しかねないトラブルメーカ
ーと言うことか
中国が定義する「台湾独立」は中華人民共和国からの独立だ。そして「一つの中国」の容認を拒否する民進党を、「台湾独立の分裂主義」の「トラブルメーカー」などと言ったレッテルを張って来た。もちろんこれは悪質な虚構宣伝である。なぜなら台湾は中国に帰属しておらず、それからの独立という問題は存在しないからだ。
ところがメディア各社は、現実よりも中国のプロパガンダを優先しているではないか。
長年にわたって日本メディアの台湾報道を観察して来たが、どうも台湾の政治問題になると、中国の前で委縮する傾向が目立つ。つまり「二つの中国を認めるのか」「一つの中国・一つの台湾を作り出す陰謀に加担するのか」「台湾独立を支持するのか」「一つの中国の原則に遵守しろ」などと中国に文句を言われないよう、その宣伝に努めて歩調を合わせたがるのである。
民進党政権の発足を警戒する中国。このような時に、あの国が困っている時に、それについ手を差し伸べ、忠誠心のようなものを見せてしまうのが媚中勢力の特徴ではある。
同政権の発足は米国に対してだけでなく、日本にとっても戦略的に重要なのだが、そのことを的確に報道できるメディアは存在しないのか。
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民進党後任の総統候補の蔡英文主席。洪秀柱(国民党)、宋楚瑜(親民党)ら他候補を支持率で大きく上回り、政権を奪取する公算が高まっている
台湾併呑という侵略目標を正当化するため、「一つの中国」(台湾は中国の一部)なる虚構を掲げる中国。台湾の総統選挙のたびに、様々な形で介入している。
たとえば「台湾は中国に隷属しない主権独立国家」と強調する国民党本土派の李登輝氏(一九九六年)や、民進党の陳水扁氏(二〇〇〇年)といった候補者を、「台湾独立の分裂主義者」と位置付け、その当選を何としてでも阻止しようと、文攻武嚇(恫喝宣伝や軍事演習で台湾への武力行使の意志を見せつけること)を繰り返した。
しかしそのたびに失敗している。有権者は中国に反撥し、それら候補者の票を逆に押し上げた。そこでその後は、米国の力を借りて民進党候補者を牽制する手段に出ている。
それはこういうことだ。民進党政権は二〇〇四年の総統選挙では「中国に対する国防強化」などに関する公民投票を、二〇〇八年の総統選挙では「台湾の国連加盟」などに関する公民投票をそれぞれ同時に実施したが、そのつど米国は、中国から「もし投票の実施を許したら、台湾は火の海だ」などと脅された模様。いずれに対しても反対表明という内政干渉を行っている。
ところで二〇一六年一月に行われる総統選挙だが、現在のところ民進党の蔡英文候補が当選し、八年ぶりに国民党から政権を奪取する可能性が高まっている。そのため穏やかでいられないのが中国だ。
目下その動きに注目が集まっている。
■政権奪取の公算高まる民進党を牽制する中国の蠢き
実際に中国の動きは活発化している。
今年三月、習近平主席は「九二年コンセンサス」(台中間での「一つの中国」での合意とされる)を守ることが両岸(台中)関係の政治的基礎だとした上で、「基礎が牢固でなければ、地は動き山は揺れる」などと発言した。
これは「九二年コンセンサス」を認めない民進党への「文攻」とも言えるし、それと同時に利益誘導であるとも言える。
九月十一日には鳴り物(大々的な事前宣伝)入りで台湾海峡での実弾演習を実施。こちらは台湾有権者の反撥など、もはや度外視した「武嚇」とも見られるが、米国に対する要求圧力だとする分析もある。つまり例によって「米国が台湾海峡の平和を求めるなら、我々に協力し、民進党に九二年コンセンサスを受け入れるよう圧力をかけろ」と要求である。
それでは、今月下旬に訪米する習近平氏は、会見するオバマ大統領にそのような要求を行うだろうか。
■米国のアジア回帰政策で高まる台湾の重要性
「習近平氏のオバマ氏との会見は時間的な制限があるが、それでも必ず要求するだろう」
九月十一日にワシントンで開かれた台湾総統選挙に関するシンポジウム席上、そのような見方を示したのが米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の中国問題の専門家、ボニー・グレーザー氏だ。

シンポジウムで登壇したボニー・グレーザー氏(左2)
この日、同氏は次のように論じている。
―――もし国民党候補者や親民党の宋楚瑜候補が当選しても、彼らは「九二年コンセンサス」を受け入れているため、台中関係は解決困難な問題にはならない。しかし蔡英文氏がそれを受け入れることはないと思う。
―――もし蔡英文氏が当選したら、中国は対話のドアを閉じ、台湾の国際社会での活動空間を狭めるだろう。これは米国の利益にはマイナスだ。しかし台湾には将来、たくさんの困難が待ち受けてる。誰が当選しても、それらから逃げることはできない。
―――蔡英文氏は中国を挑発するようなことはしないだろう。台中関係を悪化させれば、米国との関係も影響を受ける。台湾海峡が不安定になれば米国の利益が損なわれるからだ。そのため中国は選挙終了後、あるいは総統就任後の蔡英文氏の動向を観察すると思う。米国も両者には更に弾力性を持つよう奨励するはずだ。
このように聞けば、米国もかつてほどは、台湾を中国との緊張を高める「トラブルメーカー」だと迷惑がってはいないかに感じる。アジア回帰政策により、米国にとっての台湾(民進党)の重要性が増したためともみられている。
■中国の宣伝に従う日本メディアの台湾報道
ところが、こうした状況を喜ばないのが国民党勢力だ。同党系で親中的なメディア聯合報は、この日のグレーザー氏の発言を次のように捏造して報じた。
「両岸の安定のため、次期総統は『九二年コンセンサス』を受け入れる必要がある」と。
クレーザー氏は、台湾の親中メディアの情報捏造体質をよく知っているらしい。「台湾メディアにはもううんざりだ」と吐き捨てた。裁判に訴える構えだという。
ところで、私もそれと同様に、日本の朝日、日経、産経、東京(中日)、毎日新聞などには「うんざり」している。
これらは「民進党」「民進党の蔡英文」を報じる時、しばしばその前に「台湾独立志向の」「独立の思考が強い」といった言葉を枕詞のようにくっつけるが、おかしな話だ。
だいたい「台湾独立」とは中華民国体制の否定を意味する。だが民進党はすでに十数年前から、中華民国を独立国家と位置付け、同体制を容認する立場をとっているのである。
それでもなお、各紙がその語を用いるのは、それは中国の宣伝に従っているからだろう。

朝日新聞。「台湾統一」を「悲願」などと言って、中国に同情を集める気か。少なくとも中国の侵
略政策に一定の理解を示した記事だ

産経新聞。「中国統一」に反対するのが「独立」ということか。台湾はすでに独立しており、「中
国からの独立」などあり得ない

東京新聞。「台湾独立反対」を軸にした「平和的発展」などと書かれると、民進党が反「平和」と
の誤った印象が持たれかねない

日本経済新聞。民進党は「台湾独立」志向で中国の武力行使を誘発しかねないトラブルメーカ
ーと言うことか
中国が定義する「台湾独立」は中華人民共和国からの独立だ。そして「一つの中国」の容認を拒否する民進党を、「台湾独立の分裂主義」の「トラブルメーカー」などと言ったレッテルを張って来た。もちろんこれは悪質な虚構宣伝である。なぜなら台湾は中国に帰属しておらず、それからの独立という問題は存在しないからだ。
ところがメディア各社は、現実よりも中国のプロパガンダを優先しているではないか。
長年にわたって日本メディアの台湾報道を観察して来たが、どうも台湾の政治問題になると、中国の前で委縮する傾向が目立つ。つまり「二つの中国を認めるのか」「一つの中国・一つの台湾を作り出す陰謀に加担するのか」「台湾独立を支持するのか」「一つの中国の原則に遵守しろ」などと中国に文句を言われないよう、その宣伝に努めて歩調を合わせたがるのである。
民進党政権の発足を警戒する中国。このような時に、あの国が困っている時に、それについ手を差し伸べ、忠誠心のようなものを見せてしまうのが媚中勢力の特徴ではある。
同政権の発足は米国に対してだけでなく、日本にとっても戦略的に重要なのだが、そのことを的確に報道できるメディアは存在しないのか。
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