平成二十年―東支那海、ますます波高し
2008/01/02/Wed
新しき年を迎えて昨年までの日中関係を考えるに、福田首相が昨年十二月の中国訪問で見せた姿勢ほど、日本人の愚かさ、危うさを感じさせるものはそうないと思われる。
そのとき福田首相は台湾名義での国連加盟を巡る台湾の国民投票に関し「支持しない」と述べた。もし中国の要望どおり、「反対する」と言ったなら、台湾を中国の領土と認めたことになり、台湾に誤ったメセージを送るところだった。米仏が中国に妥協して「反対する」と表明したのに比べ、福田首相は「がんばった」と言うことになるのだろう。そこで産経新聞などは「賢明だった」「日本の首相として最低限のラインは守った」と言った「賛辞」を書いていた。ある中国専門家も「福田首相が台湾の重要性を重視していることがわかる」とのコメントを見せていた。
日中関係において日本は、中国への妥協、譲歩、屈服の繰り返しだったと言える。ところが今回福田首相は、目下中国が最も望むものに応じなかったのだから、たしかに画期的なことではあった。だがこうした「賛辞」は、いつも強い者に従ってきた子供が珍しく意地を見せたとき、他の子供たちが「すごいね、よくやった」と褒めてやるような話で、そうしたものを「日本の首相」に捧げるなど、捧げる方もどうかしている。
そもそも台湾が自国内で国民投票をやると言うのだから、それはそれで黙って見守っていればいいではないか。日本がわざわざ「不支持」などを表明するなど、それ自体がすでに中国を恐れている証拠である。そしてそう表明したことで台湾側にショックを与え(立派な内政干渉だ)、中国を充分に喜ばせているのである(温家宝はそれを高く評価した)。それなのになお「日本の首相として最低限のラインを守り、賢明だった」と褒め称えるのか。
福田首相は、国民投票は緊張を高めるから「支持しない」と言ったが、これでは日本国民も台湾はトラブルメーカーであるとの重大な誤認識を抱いてしまい、まさに中国の目論見どおりだ。しかし緊張を一方的に高めつつあるのは中国の側なのであって、たとえ国民投票をやろうがやるまいが、とうの昔からこの国は軍備拡張、ミサイル配備、そしてそれらを背景にした恫喝宣伝で、充分なまでに緊張を高めているのだ。ところが福田首相は今回の訪中で、そのことに非難などしていないのだ。、日本のマスメディアはこのようなトンチンカンな首相の姿勢をなぜ問題にしないのか。
要するに福田首相もマスメディアも基本的には、中国の台湾侵略の野心は許容することを前提にし、その範囲内において日中関係を安定させることばかりを考えているのだ。それは福田首相が中国で語った「台湾問題を核心的利益に関わる問題とする中国の考えを十分に理解し、重く受け止めている」という言葉にも端的に表れている。
つまり、中国を怒らせて日中関係をこじらせては国益に反する、台湾の利益はこの際軽んじていいと言った姿勢であるわけだが、これほど馬鹿げたものもない。朝日新聞(十二月三十一日)によると、昨年九月、東支那海の白樺(春暁)ガス田上空に、中国の爆撃機が二日間で四十回以上も飛来し、自衛隊機が緊急発進をしていたのだそうだ。それによると、「台湾有事に備え、東シナ海で軍事活動を強化する中国軍の戦略の一環とみられる」「春暁ガス田周辺は横須賀などに停泊する米空母が台湾に向かう航路にあたる海域でもある」とのこと。
福田首相は中国訪問で、東シナ海のガス田の共同開発問題を懸命に提起していたが、中国が日本側の提案に応じるわけがない。なぜならこの国が目指すのは、海底資源開発を通じての同海の支配権確立と、それを基点として台湾及び日本を自国の勢力下に置くことなのであって、そこを「協力・友好の海」にする気などさらさらないのだ。
この一事を見てもわかるように、東アジアと西太平洋に覇権を打ちたてようとする中国から見れば、日本も台湾と同様、「攻略」目標なのである。台湾問題を「我が国の核心的利益に関わる問題だ」として日本に譲歩を要求するのも、すべては日台の分断、日台の連携阻止のためであるということに、なぜ首相もメディアも気がつかないのか。
中国の軍拡のスピードは各国の予想を上回るもので、台湾海峡の軍事バランスを崩すのは時間の問題だ。そうしたなかで危機感を高める台湾が現在行おうとしているのが国連加盟であり、その準備としての国民投票なのである。ところがこともあろうか日本は、中国の側に立ち、それに異を唱えてしまった…。
福田首相は、「台湾問題は日本の核心的利益に関わる」として、中国に台湾侵略の準備の放棄を訴えてこそ、「日本の首相として賢明」と言えるのである。
本年もこうした訴えを行って行きたい。すべてはお国のためである。
すめらみこといやさか
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