中国に悪用される「台湾国民投票不支持」表明―北京における福田首相発言の問題点(下)
2007/12/30/Sun
■四つのノー?―中国に宣伝材料を提供
十二月二十八日の福田首相と温家宝首相との共同記者会見で、福田首相が台湾問題を巡って行った問題発言の一つが、「台湾独立を支持しない」だった。これは台湾が中国領土ではない以上、中国の要望どおりに「台湾独立に反対する」と言えない日本政府が、中国に納得してもらうために精一杯の言葉だが、これだけで十分に「台湾は中国領土だ」と言っているようなものだ。台湾から言わせれば「中国も日本も何の権限があって台湾の将来に口を出すのか」となるわけである。
そしてもう一つの問題発言が「台湾の国連加盟を巡る公民投票を支持しない」だった。これは、国民投票を「台湾独立の動きだ」として反対し、日本にも反対表明を求める中国に配慮してのものである。福田首相はここでも「反対」とは言わず、注意深く「不支持」と言った。言わば抵抗を見せたわけだ。これについて産経新聞は二十九日の社説で「不支持を表明するにとどめたことは賢明だった」と評価していたが、とんでもないことだ。
なぜなら中国からすればこの「不支持」表明は「日本も公民投票に反対している」と宣伝するには十分な材料となるからだ。劉建超外交部報道局長などは「不支持」と「反対」にそれほど違いはないと強調しているが、それが普通の感覚と言うものである。だからこそ温首相も記者会見で、「(首脳会談で)福田首相が厳重に台湾の国連加盟を巡る公民投票に不支持を表明したことに賛意を表明する」と褒め称えたのだ。
それだけではない。新華社は「福田首相は首脳会談で『四つのノー』を表明した」と報じている。それは同首相が表明した政府の立場である「二つの中国、一つの中国・一つの台湾の立場は取らない」「台湾独立を支持しない」「台湾の国連加盟を支持しない」「台湾の国連加盟を巡る公民投票を支持しない」を、「四つのノー」だと定義付けたのだ。今後これは、クリントンの「三つのノー」のように、中国の台湾孤立化戦略の上で悪用されることになる可能性がある。
言うまでもなく「ノー」と言えば「反対」の意味だ。これにより中国は「福田首相は反対を原則とすることを約束した」と宣伝し、あるいはこれを金科玉条として、日本政府の言動を制約する手段を手に入れたわけだ。
産経新聞は二十六日の社説で、「福田首相が住民投票に反対する姿勢を示せば、台湾住民は日本も中国の要求に屈したとみなし、対日不信を強めるだろう。日台関係にも悪影響を及ぼす。台湾海峡の緊張を高める結果にもつながりかねない」と警告を発していたが、ついに福田首相は台湾に「反対姿勢」を示してしまったのだ。
■日本に期待した台湾への裏切り
台湾のテレビ局TVBSは二十八日、「福田康夫は公開の場において初めて、台湾の公民投票に反対を表明した」と報じている。このように台湾で「不支持」は確実に「反対」と捉えられた。
TVBSが「初めて反対を表明した」と強調したのは、米仏露など主要国がつぎつぎと国民投票に反対を表明するなか、日本だけがそれをしないできたことが、台湾では注目されていたからだ。これまで中国追従姿勢ばかりが目立ってきた日本だが、この一件での姿勢は、好意的に受け取られてきた。ところが今回「やはり日本もか」となったわけだ。
これについて台湾政府はどのような反応を示したのだろうか。
外交部は共同記者会見の後、直ちに次のような声明を出した。
「国連加盟は台湾人民のコンセンサスであり願望だ。国民投票は正当な民主的手続きを通じて国際社会に対し、我が国の主流民意を表明するものであり、統一か独立化の問題に関わらない。海峡両岸の現状を変更するものでもさらにない。我が国は台湾人民の知恵を信じ、台湾の国民が民主国家として当然の権利の行使を尊重すべきだということを、日本および国際社会に呼びかけたい」
そして「日台関係は密接不可分。福田首相の訪中に影響を受けることなく、将来も安定した基礎の上で発展して行くものと認識している」と付け加えた。
声明からは、台湾政府は冷静に受け止めているようにも見えるが、じっさいにはおそらく相当の動揺があったことだろう。日本からの異議は、台湾人の投票への自信に影響を及ぼすからだ。
ここまで内政に干渉される台湾に、いったいどのような罪があると言うのか。
九月の段階で政府は、国民投票は台湾内部の問題との見解を示していた。その後、安倍首相から親中派の福田首相にバトンタッチされたとき、多くの台湾人は「台湾に悪影響はないだろうか」との懸念を抱いたが、ついにそれが現実のものとなったかたちだ。
日本国内には、福田首相が「反対」ではなく「不支持」としたことに、「台湾を重視している表れ」との見方もずいぶん出ているが、ここまでの内政干渉をやっている人間に対し、何を基準にそう評価するのか。
■なぜ中国には非を鳴らすことができないのか
福田首相は台中問題の平和的解決を希望するとして、「一方的な現状変更の試みは支持できず、その観点から台湾の公民投票が一方的な現状変更に繋がって行くのであれば、支持できない」と述べた。
だがこの国民投票とはそもそもどのようなものであろうか。
中国は領土的野心から、自国領ではない台湾を自国領だと主張して併呑しようとし、そしてその一環として台湾の国連加盟を妨害してきた。しかし併呑を望まない台湾は、台湾は中国領ではなく、一つの主権国家であることを世界に知らせるためにも、何としてでも国連に加盟しなければならない。ところが中国はそれに激しく反対し、台湾国民の国連加盟を希望する声が国際社会に届かない。そこで行われようとするのがこの国民投票なのだ。
福田首相は、この投票が台湾海峡の緊張を高め、現状を破壊すると懸念しているが、そのとき現状を破壊するのは台湾の投票ではなく、それを妨害し、あるいは報復する中国の軍事行動であるはずだ。ところが記者会見で福田首相は、「台湾の公民投票は支持しない」と言っても、「中国の軍事恫喝、武力行使は支持しない」とは言わなかった。
福田首相はこうも言った。「台湾問題は中国の核心的利益に関わるものとする中国側の考えを十分に理解しており、従来から重く受け止めている」と。これを問題視する日本のマスメディアはほとんど存在しないが、じつに恐ろしい発言である。
この発言を言い換えるなら、「台湾をいかに併呑するかは、中国の対外膨張と言う国家政策での最重要問題になっていることは十分承知しており、この重大事に我が国が反対、妨害をしたことはありませんでしたし、これからもありません」となるだろう。
このような事大主義だからこそ、中国の武力を伴う台湾への妨害行為、圧力行使には非を鳴らすことはなく、その一方で中国に言われるまま、台湾の国民投票にのみ非難を加えることができるのだろう。
日中関係を守るため、いかに中国の希望に沿うかだけを考える福田首相には、台湾の国民投票への不支持表明が立派な内政干渉になっていることに気がついていない。
台湾のみなさん、申し訳ありません。国際社会の冷淡さに挫けることなく、ぜひ国民投票を完遂してください。これに失敗したら世界から「台湾に国連加盟の意思希薄」「国連加盟の資格なしと自ら認めた」となりかねません。日本国民の多くは投票の成功を断固支持しております。
■中国に媚びて台湾の内政に干渉した福田首相に抗議せよ!
首相官邸 http://www.kantei.go.jp/jp/forms/dokusha.html
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十二月二十八日の福田首相と温家宝首相との共同記者会見で、福田首相が台湾問題を巡って行った問題発言の一つが、「台湾独立を支持しない」だった。これは台湾が中国領土ではない以上、中国の要望どおりに「台湾独立に反対する」と言えない日本政府が、中国に納得してもらうために精一杯の言葉だが、これだけで十分に「台湾は中国領土だ」と言っているようなものだ。台湾から言わせれば「中国も日本も何の権限があって台湾の将来に口を出すのか」となるわけである。
そしてもう一つの問題発言が「台湾の国連加盟を巡る公民投票を支持しない」だった。これは、国民投票を「台湾独立の動きだ」として反対し、日本にも反対表明を求める中国に配慮してのものである。福田首相はここでも「反対」とは言わず、注意深く「不支持」と言った。言わば抵抗を見せたわけだ。これについて産経新聞は二十九日の社説で「不支持を表明するにとどめたことは賢明だった」と評価していたが、とんでもないことだ。
なぜなら中国からすればこの「不支持」表明は「日本も公民投票に反対している」と宣伝するには十分な材料となるからだ。劉建超外交部報道局長などは「不支持」と「反対」にそれほど違いはないと強調しているが、それが普通の感覚と言うものである。だからこそ温首相も記者会見で、「(首脳会談で)福田首相が厳重に台湾の国連加盟を巡る公民投票に不支持を表明したことに賛意を表明する」と褒め称えたのだ。
それだけではない。新華社は「福田首相は首脳会談で『四つのノー』を表明した」と報じている。それは同首相が表明した政府の立場である「二つの中国、一つの中国・一つの台湾の立場は取らない」「台湾独立を支持しない」「台湾の国連加盟を支持しない」「台湾の国連加盟を巡る公民投票を支持しない」を、「四つのノー」だと定義付けたのだ。今後これは、クリントンの「三つのノー」のように、中国の台湾孤立化戦略の上で悪用されることになる可能性がある。
言うまでもなく「ノー」と言えば「反対」の意味だ。これにより中国は「福田首相は反対を原則とすることを約束した」と宣伝し、あるいはこれを金科玉条として、日本政府の言動を制約する手段を手に入れたわけだ。
産経新聞は二十六日の社説で、「福田首相が住民投票に反対する姿勢を示せば、台湾住民は日本も中国の要求に屈したとみなし、対日不信を強めるだろう。日台関係にも悪影響を及ぼす。台湾海峡の緊張を高める結果にもつながりかねない」と警告を発していたが、ついに福田首相は台湾に「反対姿勢」を示してしまったのだ。
■日本に期待した台湾への裏切り
台湾のテレビ局TVBSは二十八日、「福田康夫は公開の場において初めて、台湾の公民投票に反対を表明した」と報じている。このように台湾で「不支持」は確実に「反対」と捉えられた。
TVBSが「初めて反対を表明した」と強調したのは、米仏露など主要国がつぎつぎと国民投票に反対を表明するなか、日本だけがそれをしないできたことが、台湾では注目されていたからだ。これまで中国追従姿勢ばかりが目立ってきた日本だが、この一件での姿勢は、好意的に受け取られてきた。ところが今回「やはり日本もか」となったわけだ。
これについて台湾政府はどのような反応を示したのだろうか。
外交部は共同記者会見の後、直ちに次のような声明を出した。
「国連加盟は台湾人民のコンセンサスであり願望だ。国民投票は正当な民主的手続きを通じて国際社会に対し、我が国の主流民意を表明するものであり、統一か独立化の問題に関わらない。海峡両岸の現状を変更するものでもさらにない。我が国は台湾人民の知恵を信じ、台湾の国民が民主国家として当然の権利の行使を尊重すべきだということを、日本および国際社会に呼びかけたい」
そして「日台関係は密接不可分。福田首相の訪中に影響を受けることなく、将来も安定した基礎の上で発展して行くものと認識している」と付け加えた。
声明からは、台湾政府は冷静に受け止めているようにも見えるが、じっさいにはおそらく相当の動揺があったことだろう。日本からの異議は、台湾人の投票への自信に影響を及ぼすからだ。
ここまで内政に干渉される台湾に、いったいどのような罪があると言うのか。
九月の段階で政府は、国民投票は台湾内部の問題との見解を示していた。その後、安倍首相から親中派の福田首相にバトンタッチされたとき、多くの台湾人は「台湾に悪影響はないだろうか」との懸念を抱いたが、ついにそれが現実のものとなったかたちだ。
日本国内には、福田首相が「反対」ではなく「不支持」としたことに、「台湾を重視している表れ」との見方もずいぶん出ているが、ここまでの内政干渉をやっている人間に対し、何を基準にそう評価するのか。
■なぜ中国には非を鳴らすことができないのか
福田首相は台中問題の平和的解決を希望するとして、「一方的な現状変更の試みは支持できず、その観点から台湾の公民投票が一方的な現状変更に繋がって行くのであれば、支持できない」と述べた。
だがこの国民投票とはそもそもどのようなものであろうか。
中国は領土的野心から、自国領ではない台湾を自国領だと主張して併呑しようとし、そしてその一環として台湾の国連加盟を妨害してきた。しかし併呑を望まない台湾は、台湾は中国領ではなく、一つの主権国家であることを世界に知らせるためにも、何としてでも国連に加盟しなければならない。ところが中国はそれに激しく反対し、台湾国民の国連加盟を希望する声が国際社会に届かない。そこで行われようとするのがこの国民投票なのだ。
福田首相は、この投票が台湾海峡の緊張を高め、現状を破壊すると懸念しているが、そのとき現状を破壊するのは台湾の投票ではなく、それを妨害し、あるいは報復する中国の軍事行動であるはずだ。ところが記者会見で福田首相は、「台湾の公民投票は支持しない」と言っても、「中国の軍事恫喝、武力行使は支持しない」とは言わなかった。
福田首相はこうも言った。「台湾問題は中国の核心的利益に関わるものとする中国側の考えを十分に理解しており、従来から重く受け止めている」と。これを問題視する日本のマスメディアはほとんど存在しないが、じつに恐ろしい発言である。
この発言を言い換えるなら、「台湾をいかに併呑するかは、中国の対外膨張と言う国家政策での最重要問題になっていることは十分承知しており、この重大事に我が国が反対、妨害をしたことはありませんでしたし、これからもありません」となるだろう。
このような事大主義だからこそ、中国の武力を伴う台湾への妨害行為、圧力行使には非を鳴らすことはなく、その一方で中国に言われるまま、台湾の国民投票にのみ非難を加えることができるのだろう。
日中関係を守るため、いかに中国の希望に沿うかだけを考える福田首相には、台湾の国民投票への不支持表明が立派な内政干渉になっていることに気がついていない。
台湾のみなさん、申し訳ありません。国際社会の冷淡さに挫けることなく、ぜひ国民投票を完遂してください。これに失敗したら世界から「台湾に国連加盟の意思希薄」「国連加盟の資格なしと自ら認めた」となりかねません。日本国民の多くは投票の成功を断固支持しております。
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