友邦台湾―「抗日勝利七十年」を巡る様々な見方/空軍機の反日標示問題
2015/07/01/Wed
中共の抗日戦争勝利七十周年を記念する軍事パレードの計画に対抗し、七月四日から戦力展示を行う台湾の国民党政権。
そこに参加する空軍の戦闘機F16と国産のIDF(経国号)の二機に、戦時中の中国軍(蒋介石の国民党軍)の戦闘機P40に見られたサメの顔(シャークティース)のペイントを施した。

抗日勝利70周年を記念し、戦時中のサメのペイントを再現した台湾空軍のF16(手前)と経国号
そのようにしてF16は米義勇部隊フライングタイガースの撃墜王、ロバート・ニール中隊長の搭乗機を、そしてIDFは米中混成部隊の徐華江中隊長の搭乗機を再現したという。

P40の前に立つ徐華江(右2)ら米中混合部隊の隊員
それぞれの機体には、さらに撃墜した日本軍機の数を示す日本国旗まで描かれた。前者は十六、後者には五の日の丸が並べられたのだが、この二機が六月八日に空軍基地で公開されるや、それが問題となった。
毎日新聞は翌九日、「日本関係筋は『現役の戦闘機に日本のシンボルである国旗で撃墜マークを描くのは、日台関係への配慮が足りない』と懸念を示している」と報じている。

日本側の抗議を惹起した日の丸
台湾紙自由時報(七月一日)によれば、「日本側は各方面から抗議を行い、『戦時中、機体に日本軍機の撃墜数を示す標示はなかった。現役戦闘機に標示を施せば、自衛隊の挑発とも受け取られ、また反日感情も煽ることになりかねない』との見方を伝えた」。そしてその結果、「日本側の度重なる抗議は軍への大きな圧力になり、国旗のデザインは消されることになった」と報じる。
これについて林長楽外交部長(外相)は「『史実に符合しない』との日本側の意見を国防部に伝えた。国防部(国防省)も史実と異なることを認め、調整を進めている」と説明。「日本は我が方に圧力はかけていない。日本は友人だ」とも強調している。
国防部の報道官は「史実に基づこうとしただけで他意はなかった。しかし一部の人々の意見を受け、慎重に考慮した。国旗はすでに消去した」ことを明らかにした。
ところがこの措置に対し、反撥の声も上がっている。国民党の議員からは「日本の抗議を受け入れるのはおかしく、台湾の尊厳を傷つけるもの。歴史を再現しようとしただけで日本を敵視し、あるいは辱めるものではない」との批判が出た。
一方、野党民進党の議員からは「台日は戦争状態にないし、台湾は日本軍機を撃墜したことはない。日本の抗議は当然だ。慌てて消し去るなど軍も形なしだ」「日本は重要な友邦。日本の意見を受け入れるのは当然」といった声が聞かれた。
「日本は友邦だ」との批判の声はインターネット上でも多く見られるが、その背景には国民党政権の抗日勝利記念の動きが中国と歩調を合わせているとの認識もあるようだ。
「抗日戦争勝利の真の立役者は中共ではなく国民党だ」と自負する国民党は、たしかに中共の「勝利七十周年」のプロパガンダに危機感を募らせてはいるが、しかしこうした競争心こそが、国共接近の基礎である中華民族主義の表れなのだ。
こうした国共両党の中華民族主義キャンペーンに多くの台湾国民は不満を募らせている。こうした中華民族主義への反撥は、明らかに「日本は重要な友邦」との認識を高める一因だろう。
台湾の存在を脅かす、あれら中国人の日台分断の陰謀も肌で感じ取っているというのもあろう。
そして「抗日勝利」という中国人の歴史が強調されるほど、人々は抗日戦争に関与しなかった台湾人の歴史、つまり国共両党があえて見向きたがらない「中国とは無関係の台湾独自の歴史」に関心を向けて行く。一部には「台湾は日本の一部として中国と戦った」との日本との歴史共有を肯定的に捉えようとする傾向も目立つが、もちろんそれを促すのもまた、反中華の台湾人意識であると思われる。
ちなみに、これから行われる抗日勝利記念の戦力展示だが、そこに日本の駐台代表(交流協会台北事務所長=駐台大使に相当)が出席するか否かにも注目が集まっている。
これについて日本側は「招待状を受けていない」との理由で欠席の意向だ。しかしこれに対して国防部報道官は「招待状は直接手交した」と反論している。
欠席する方が得策だろう。台湾を愛するがゆえに「抗日勝利」記念を快く思わない人々の日本への信頼、友情を裏切らないためにも。
*******************************************
ブログランキング参加中
よろしければクリックをお願いします。 運動を拡大したいので。
↓ ↓

モバイルはこちら
↓ ↓
http://blog.with2.net/link.php
link.php
■台湾研究フォーラム(台湾研究論壇)第170回定例会

講師 黄錦容先生(台湾国立政治大学日本語学部特別招聘教授)
演題 台湾ナショナリズムの現在ー愛国主義と非物語的な虚構性
第170回定例会では、台湾から来日される黄錦容先生を講師にお迎えします。
昨年の太陽花(ひまわり)学生運動以降に見られる様々な現象やナショナリズム的な言説について考察。広がりを見せるナショナリズムのオタク的心情の内面も突きながら、台湾における社会運動や社会の改造の可能性、策略などを解説していただきます。
日時 平成27年7月18日 (土)18:30~20:15
場所 アカデミー文京 学習室(文京シビックセンター地下1階)
(東京都文京区春日1-16-21)
交通:東京メトロ丸ノ内線・南北線「後楽園駅」直結
都営地下鉄三田線・大江戸線「春日駅」直結
JR中央線・総武線「水道橋駅」徒歩約10分
会費 会員500円・一般1000円
(会場では入会も受け付けます。年会費2000円)
問合せ twkenkyuforum@yahoo.co.jp
そこに参加する空軍の戦闘機F16と国産のIDF(経国号)の二機に、戦時中の中国軍(蒋介石の国民党軍)の戦闘機P40に見られたサメの顔(シャークティース)のペイントを施した。

抗日勝利70周年を記念し、戦時中のサメのペイントを再現した台湾空軍のF16(手前)と経国号
そのようにしてF16は米義勇部隊フライングタイガースの撃墜王、ロバート・ニール中隊長の搭乗機を、そしてIDFは米中混成部隊の徐華江中隊長の搭乗機を再現したという。

P40の前に立つ徐華江(右2)ら米中混合部隊の隊員
それぞれの機体には、さらに撃墜した日本軍機の数を示す日本国旗まで描かれた。前者は十六、後者には五の日の丸が並べられたのだが、この二機が六月八日に空軍基地で公開されるや、それが問題となった。
毎日新聞は翌九日、「日本関係筋は『現役の戦闘機に日本のシンボルである国旗で撃墜マークを描くのは、日台関係への配慮が足りない』と懸念を示している」と報じている。

日本側の抗議を惹起した日の丸
台湾紙自由時報(七月一日)によれば、「日本側は各方面から抗議を行い、『戦時中、機体に日本軍機の撃墜数を示す標示はなかった。現役戦闘機に標示を施せば、自衛隊の挑発とも受け取られ、また反日感情も煽ることになりかねない』との見方を伝えた」。そしてその結果、「日本側の度重なる抗議は軍への大きな圧力になり、国旗のデザインは消されることになった」と報じる。
これについて林長楽外交部長(外相)は「『史実に符合しない』との日本側の意見を国防部に伝えた。国防部(国防省)も史実と異なることを認め、調整を進めている」と説明。「日本は我が方に圧力はかけていない。日本は友人だ」とも強調している。
国防部の報道官は「史実に基づこうとしただけで他意はなかった。しかし一部の人々の意見を受け、慎重に考慮した。国旗はすでに消去した」ことを明らかにした。
ところがこの措置に対し、反撥の声も上がっている。国民党の議員からは「日本の抗議を受け入れるのはおかしく、台湾の尊厳を傷つけるもの。歴史を再現しようとしただけで日本を敵視し、あるいは辱めるものではない」との批判が出た。
一方、野党民進党の議員からは「台日は戦争状態にないし、台湾は日本軍機を撃墜したことはない。日本の抗議は当然だ。慌てて消し去るなど軍も形なしだ」「日本は重要な友邦。日本の意見を受け入れるのは当然」といった声が聞かれた。
「日本は友邦だ」との批判の声はインターネット上でも多く見られるが、その背景には国民党政権の抗日勝利記念の動きが中国と歩調を合わせているとの認識もあるようだ。
「抗日戦争勝利の真の立役者は中共ではなく国民党だ」と自負する国民党は、たしかに中共の「勝利七十周年」のプロパガンダに危機感を募らせてはいるが、しかしこうした競争心こそが、国共接近の基礎である中華民族主義の表れなのだ。
こうした国共両党の中華民族主義キャンペーンに多くの台湾国民は不満を募らせている。こうした中華民族主義への反撥は、明らかに「日本は重要な友邦」との認識を高める一因だろう。
台湾の存在を脅かす、あれら中国人の日台分断の陰謀も肌で感じ取っているというのもあろう。
そして「抗日勝利」という中国人の歴史が強調されるほど、人々は抗日戦争に関与しなかった台湾人の歴史、つまり国共両党があえて見向きたがらない「中国とは無関係の台湾独自の歴史」に関心を向けて行く。一部には「台湾は日本の一部として中国と戦った」との日本との歴史共有を肯定的に捉えようとする傾向も目立つが、もちろんそれを促すのもまた、反中華の台湾人意識であると思われる。
ちなみに、これから行われる抗日勝利記念の戦力展示だが、そこに日本の駐台代表(交流協会台北事務所長=駐台大使に相当)が出席するか否かにも注目が集まっている。
これについて日本側は「招待状を受けていない」との理由で欠席の意向だ。しかしこれに対して国防部報道官は「招待状は直接手交した」と反論している。
欠席する方が得策だろう。台湾を愛するがゆえに「抗日勝利」記念を快く思わない人々の日本への信頼、友情を裏切らないためにも。
*******************************************
ブログランキング参加中
よろしければクリックをお願いします。 運動を拡大したいので。
↓ ↓

モバイルはこちら
↓ ↓
http://blog.with2.net/link.php
link.php
■台湾研究フォーラム(台湾研究論壇)第170回定例会

講師 黄錦容先生(台湾国立政治大学日本語学部特別招聘教授)
演題 台湾ナショナリズムの現在ー愛国主義と非物語的な虚構性
第170回定例会では、台湾から来日される黄錦容先生を講師にお迎えします。
昨年の太陽花(ひまわり)学生運動以降に見られる様々な現象やナショナリズム的な言説について考察。広がりを見せるナショナリズムのオタク的心情の内面も突きながら、台湾における社会運動や社会の改造の可能性、策略などを解説していただきます。
日時 平成27年7月18日 (土)18:30~20:15
場所 アカデミー文京 学習室(文京シビックセンター地下1階)
(東京都文京区春日1-16-21)
交通:東京メトロ丸ノ内線・南北線「後楽園駅」直結
都営地下鉄三田線・大江戸線「春日駅」直結
JR中央線・総武線「水道橋駅」徒歩約10分
会費 会員500円・一般1000円
(会場では入会も受け付けます。年会費2000円)
問合せ twkenkyuforum@yahoo.co.jp
スポンサーサイト