台湾も脅かす中共「抗日勝利七十周年」記念の謀略
2015/06/27/Sat
■軍事パレードに元国民党軍人を参加させたい中共
中共の六月二十三日の発表によれば、天安門前における抗日戦争勝利七十周年記念の軍事パレード(閲兵式)の実施は九月三日。パレードには戦時中の八路軍、新四軍など中共軍の元兵士の他、戦後蔣介石とともに台湾へ逃げた国民党軍の元軍人も参加させる方針だ。


中共は軍事パレードで抗日戦争時代の国民党の元軍人を参加させる意向。その狙いとは
これについて軍部は「国民党軍は抗日戦争で重要な役割を果たした。一部の老兵にも観閲を受けてもらいたい」との意向を示したが、その目的は何か。
それについては台湾工作を担当する国務院台湾事務弁公室(国台弁)が二十四日、以下のように説明している。
「抗日戦争の勝利は全民族のもの。敵後戦場(日本軍占領地)であれ正面戦場であれ、みなが重要な役割を果たしている。両岸同胞がともに抗戦の勝利を記念し、先人を偲び歴史を銘記し、抗戦精神を継承し、一致団結して手と心を携え、両岸関係の平和的発展と中華民族の偉大なる復興に力を尽くすことを希望する」
「敵後戦場」とは中共のゲリラ、工作員が跳梁跋扈した日本軍占領地のこと。それに対して「正面戦場」とは国民党軍が戦った前線のことである。
要するに国共両党はともに勝利に貢献したのだから、再び手を結んで協力し、「両岸関係の平和的発展」、つまり台湾と中国との「平和統一」(協議による統一)を促進しようというのが、中共の呼びかけであり、そしてそのための国民党老兵の招待計画であるわけだ。
■国共合作の合言葉は「中華民族の抗日勝利」
中共が台湾の国民党の籠絡を図ため、着眼する両党の共通点が「中華民族による抗日戦争勝利の記憶」だ。
二〇〇五年九月二日に行われた抗戦勝利六十周年の記念式典を振り返ろう。当時の胡錦濤主席は演説で、国民党軍が同じ中華民族として中共とともに抗日を指導し、「正面戦場」を担った功績を認めた。従来中共が宣伝して来た抗日史では国民党の活躍、功績は抹殺の対象だっただけに画期的とされたが、それが国民党に対する統一戦線工作(統戦)なのである。

抗日戦時代の国民党軍の「功績」を認めるようになった中共。狙い
は台湾併呑の促進にある
つまり「中国統一」を拒む台湾人の政治勢力を牽制、打倒するため、国民党を籠絡、吸収して共同戦線を張るというものだ。この時以来、中共の統戦はますます強化されて今日に至っている。
今回の国民党老兵の取込み工作もその一環である。中共はパレードのほか、様々な「七十周年記念」のイベントも計画しているが、やはり同様に台湾側の参与を求めている模様だ。
■日台分断と台湾併呑を目論む中華民族主義
国台弁が台湾「同胞」に対し、「両岸の平和的発展」とともに呼び掛けたもう一つが「中華民族の偉大なる復興」への協力だ。
この「復興」とは中国が再び「中華=天下の中心」の地位を取り戻すこと。言いかえればアジア・西太平洋地域で覇権を確立することを意味するが、その実現に必要不可欠と位置付けるのが「統一」、すなわち戦略的な要衝である台湾の併呑なのである。
そもそも「抗戦勝利七十周年」記念工作の大イベントたる軍事パレードの趣旨は戦没者の慰霊などではもちろんない。あくまでも国威発揚であり、他国への威圧が目的であり、そこには日本の弱体化、孤立化への期待が大きく込められている訳だが、それと同時に台湾併呑に向けた戦略もしっかりと働いているのだ。
台湾側に対して「抗日」を強調して中華民族主義を煽り、日本(日米同盟)との分断を促し、中共と提携せざるを得ないような情勢を作り出そうというのが中共の狙いである。
それではこうした謀略に対する台湾側の反応はどうか。
■中共の「抗日」の誘いへの国民党政権の反応
台湾の馬英九・国民党政権もまた中華民族主義に染まっており、「抗日」の歴史も重視はするが、国民党の老兵が中共側の軍事パレードに参加することには反対だ。
たとえば国防部報道官は「史料が実証するように抗戦を主導したのは中華民国。この事実-を改竄、歪曲するなど絶対に許せない」とし、中共軍を抗戦の主力と位置付ける中共の宣伝工作を警戒し、老兵たちに参加ボイコットを呼び掛けている。「中共の統戦を受けるな」と。
「抗戦を主導したのは中華民国(国民党)」という歴史は国民党にとり、中国の代表政権としての正統性、台湾を統治することの正当性の根拠となって来た。
それだけに中共の動きには焦燥を隠さない。同政権も「七十周年」記念の閲兵式を七月二日に行い、老兵たちにも参加を願うが、これは中共の一連の記念行事への対抗策として実施を決めたものである。
ちなみに、中共もそうだが特に国民党は「抗日勝利七十周年」と「台湾光復七十周年」をセットで記念、祝賀する計画だ。「抗日勝利」があって初めて「台湾光復」(台湾の祖国中国への復帰を意味する。実際には不法な領土編入だったが)が達成され、今日の台湾の繁栄があると宣伝したいわけだ。
しかし、こうした国共両党による「中国での戦争」の歴史を巡る競争に対し、台湾の人々の多くは冷淡であり、批判も少なくない。
■「抗日史観」とは異なる台湾主体史観
台湾紙自由時報の二十六日の社説を見よう。中共と歩調を合わせ「抗日勝利七十周年」の宣伝に勤しむ国民党政権を次のように批判している。
―――終戦記念で閲兵や「光復」にのみに重きを置いても、台湾の土地、人民との関わりが見えない。
―――七十年前、日本の統治下にあった台湾は物資配給統制、徴兵、疎開など戦争による深刻な状況にあり、特に一九四四年十月からの連合軍による集中爆撃による犠牲は深刻で、台北大空襲だけでも三千人が死亡している。こうした台湾人の苦難の歴史など馬英九総統の眼中にはなく、その終戦七十周年の扱いに、外来統治者の心理が明らかに見て取れる。
―――更に歴史を見よう。七十年前、台湾に本当に「光復」「殖民統治の終結」がもたらされたか。新外来政権は日本に取って代わり、この土地と民衆を差別し、簒奪、圧政を加え汚職、腐敗、無謀支配をもたらし、それから二年も経たないうちに二二八事件を惹起したことが、台湾に最大の損害を与えた。
この社説からは、国民党が従来中国史ばかりを強調し、台湾史を無視、抹殺して来たことへの不満や怒りを見て取ることができよう。もちろん国民党の中華民族主義が、台湾併呑を企図する中共の統戦に付け入る隙を与え続けていることへの警戒心もだ。
■台湾人の歴史認識も中華民族主義の敵
このような台湾主体の歴史観、そしてそれに基づく台湾人意識は近年、急速な広がりを見せている。

爆撃を受ける台北市内。戦時中、台湾各地は連合国軍の空襲に曝された。台湾人
には独自の戦争史があるのだ
そしてそれはまた、中共の台湾に対する統戦の大きな障害になっている。
ところがこうした情勢に苛立つのが国民党政権なのである。
同党は中共の抗日史観には不満であっても、しかしそれ以上に中華民族主義及びそれから派生する抗日史観を受け入れない台湾主体史観を許すことができないのだ。
だからこそ現在、高校用歴史教科書の書き換え問題を引き起こしているのである。これなどは明らかに洗脳教育、思想統制の動きだろう。そして中共もまた、そうした国民党の中華民族主義に拍手を惜しまない。日本人の歴史認識に引き続き、台湾人のそれもまた、中華民族主義から敵視されつつあるということか。
中共の「抗日勝利七十周年」記念の動きをみれば、あの国にとって歴史プロパガンダは覇権主義の道具にすぎないことが分かってくる。そしてその矛先は日本だけでなく、台湾にも向けられていることも明らかになる。
ちなみに九月三日の軍事パレードでは、台湾とその防衛の後ろ盾である日米同盟に向けた最新鋭兵器が披露されるものと見られている。
中共の脅威の前で日台が運命共同体と言うのは本当なのだ。
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中共の六月二十三日の発表によれば、天安門前における抗日戦争勝利七十周年記念の軍事パレード(閲兵式)の実施は九月三日。パレードには戦時中の八路軍、新四軍など中共軍の元兵士の他、戦後蔣介石とともに台湾へ逃げた国民党軍の元軍人も参加させる方針だ。


中共は軍事パレードで抗日戦争時代の国民党の元軍人を参加させる意向。その狙いとは
これについて軍部は「国民党軍は抗日戦争で重要な役割を果たした。一部の老兵にも観閲を受けてもらいたい」との意向を示したが、その目的は何か。
それについては台湾工作を担当する国務院台湾事務弁公室(国台弁)が二十四日、以下のように説明している。
「抗日戦争の勝利は全民族のもの。敵後戦場(日本軍占領地)であれ正面戦場であれ、みなが重要な役割を果たしている。両岸同胞がともに抗戦の勝利を記念し、先人を偲び歴史を銘記し、抗戦精神を継承し、一致団結して手と心を携え、両岸関係の平和的発展と中華民族の偉大なる復興に力を尽くすことを希望する」
「敵後戦場」とは中共のゲリラ、工作員が跳梁跋扈した日本軍占領地のこと。それに対して「正面戦場」とは国民党軍が戦った前線のことである。
要するに国共両党はともに勝利に貢献したのだから、再び手を結んで協力し、「両岸関係の平和的発展」、つまり台湾と中国との「平和統一」(協議による統一)を促進しようというのが、中共の呼びかけであり、そしてそのための国民党老兵の招待計画であるわけだ。
■国共合作の合言葉は「中華民族の抗日勝利」
中共が台湾の国民党の籠絡を図ため、着眼する両党の共通点が「中華民族による抗日戦争勝利の記憶」だ。
二〇〇五年九月二日に行われた抗戦勝利六十周年の記念式典を振り返ろう。当時の胡錦濤主席は演説で、国民党軍が同じ中華民族として中共とともに抗日を指導し、「正面戦場」を担った功績を認めた。従来中共が宣伝して来た抗日史では国民党の活躍、功績は抹殺の対象だっただけに画期的とされたが、それが国民党に対する統一戦線工作(統戦)なのである。

抗日戦時代の国民党軍の「功績」を認めるようになった中共。狙い
は台湾併呑の促進にある
つまり「中国統一」を拒む台湾人の政治勢力を牽制、打倒するため、国民党を籠絡、吸収して共同戦線を張るというものだ。この時以来、中共の統戦はますます強化されて今日に至っている。
今回の国民党老兵の取込み工作もその一環である。中共はパレードのほか、様々な「七十周年記念」のイベントも計画しているが、やはり同様に台湾側の参与を求めている模様だ。
■日台分断と台湾併呑を目論む中華民族主義
国台弁が台湾「同胞」に対し、「両岸の平和的発展」とともに呼び掛けたもう一つが「中華民族の偉大なる復興」への協力だ。
この「復興」とは中国が再び「中華=天下の中心」の地位を取り戻すこと。言いかえればアジア・西太平洋地域で覇権を確立することを意味するが、その実現に必要不可欠と位置付けるのが「統一」、すなわち戦略的な要衝である台湾の併呑なのである。
そもそも「抗戦勝利七十周年」記念工作の大イベントたる軍事パレードの趣旨は戦没者の慰霊などではもちろんない。あくまでも国威発揚であり、他国への威圧が目的であり、そこには日本の弱体化、孤立化への期待が大きく込められている訳だが、それと同時に台湾併呑に向けた戦略もしっかりと働いているのだ。
台湾側に対して「抗日」を強調して中華民族主義を煽り、日本(日米同盟)との分断を促し、中共と提携せざるを得ないような情勢を作り出そうというのが中共の狙いである。
それではこうした謀略に対する台湾側の反応はどうか。
■中共の「抗日」の誘いへの国民党政権の反応
台湾の馬英九・国民党政権もまた中華民族主義に染まっており、「抗日」の歴史も重視はするが、国民党の老兵が中共側の軍事パレードに参加することには反対だ。
たとえば国防部報道官は「史料が実証するように抗戦を主導したのは中華民国。この事実-を改竄、歪曲するなど絶対に許せない」とし、中共軍を抗戦の主力と位置付ける中共の宣伝工作を警戒し、老兵たちに参加ボイコットを呼び掛けている。「中共の統戦を受けるな」と。
「抗戦を主導したのは中華民国(国民党)」という歴史は国民党にとり、中国の代表政権としての正統性、台湾を統治することの正当性の根拠となって来た。
それだけに中共の動きには焦燥を隠さない。同政権も「七十周年」記念の閲兵式を七月二日に行い、老兵たちにも参加を願うが、これは中共の一連の記念行事への対抗策として実施を決めたものである。
ちなみに、中共もそうだが特に国民党は「抗日勝利七十周年」と「台湾光復七十周年」をセットで記念、祝賀する計画だ。「抗日勝利」があって初めて「台湾光復」(台湾の祖国中国への復帰を意味する。実際には不法な領土編入だったが)が達成され、今日の台湾の繁栄があると宣伝したいわけだ。
しかし、こうした国共両党による「中国での戦争」の歴史を巡る競争に対し、台湾の人々の多くは冷淡であり、批判も少なくない。
■「抗日史観」とは異なる台湾主体史観
台湾紙自由時報の二十六日の社説を見よう。中共と歩調を合わせ「抗日勝利七十周年」の宣伝に勤しむ国民党政権を次のように批判している。
―――終戦記念で閲兵や「光復」にのみに重きを置いても、台湾の土地、人民との関わりが見えない。
―――七十年前、日本の統治下にあった台湾は物資配給統制、徴兵、疎開など戦争による深刻な状況にあり、特に一九四四年十月からの連合軍による集中爆撃による犠牲は深刻で、台北大空襲だけでも三千人が死亡している。こうした台湾人の苦難の歴史など馬英九総統の眼中にはなく、その終戦七十周年の扱いに、外来統治者の心理が明らかに見て取れる。
―――更に歴史を見よう。七十年前、台湾に本当に「光復」「殖民統治の終結」がもたらされたか。新外来政権は日本に取って代わり、この土地と民衆を差別し、簒奪、圧政を加え汚職、腐敗、無謀支配をもたらし、それから二年も経たないうちに二二八事件を惹起したことが、台湾に最大の損害を与えた。
この社説からは、国民党が従来中国史ばかりを強調し、台湾史を無視、抹殺して来たことへの不満や怒りを見て取ることができよう。もちろん国民党の中華民族主義が、台湾併呑を企図する中共の統戦に付け入る隙を与え続けていることへの警戒心もだ。
■台湾人の歴史認識も中華民族主義の敵
このような台湾主体の歴史観、そしてそれに基づく台湾人意識は近年、急速な広がりを見せている。

爆撃を受ける台北市内。戦時中、台湾各地は連合国軍の空襲に曝された。台湾人
には独自の戦争史があるのだ
そしてそれはまた、中共の台湾に対する統戦の大きな障害になっている。
ところがこうした情勢に苛立つのが国民党政権なのである。
同党は中共の抗日史観には不満であっても、しかしそれ以上に中華民族主義及びそれから派生する抗日史観を受け入れない台湾主体史観を許すことができないのだ。
だからこそ現在、高校用歴史教科書の書き換え問題を引き起こしているのである。これなどは明らかに洗脳教育、思想統制の動きだろう。そして中共もまた、そうした国民党の中華民族主義に拍手を惜しまない。日本人の歴史認識に引き続き、台湾人のそれもまた、中華民族主義から敵視されつつあるということか。
中共の「抗日勝利七十周年」記念の動きをみれば、あの国にとって歴史プロパガンダは覇権主義の道具にすぎないことが分かってくる。そしてその矛先は日本だけでなく、台湾にも向けられていることも明らかになる。
ちなみに九月三日の軍事パレードでは、台湾とその防衛の後ろ盾である日米同盟に向けた最新鋭兵器が披露されるものと見られている。
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