台湾侵略で日本は集団的自衛権を行使するかー岸田外相答弁を読み解く
2015/06/17/Wed
■日本に死活的に重要でもタブー視される「台湾」
日本政府は「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生」し、それによって「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合、集団的自衛権を行使し、それを排除することが可能としたが、そうしたケースは台湾有事にもあてはめられるのだろうか。

台湾は中国の帰属しない主権国家。日本の存立に死活的に重要なこの国が
中国の武力行使を受ければ…
つまり、台湾が中国との「統一」を拒否し、主権国家であることを続ける限り、いつかは発生する可能性が否定できない中国による台湾への武力攻撃が現実化し、その結果、当然のように日本の存立が脅かされた場合、日本は集団的自衛権を発動できるのかだが、意外にもこの問題は、これまであまり論じられてこなかったようだ。

台湾が主権国家であり続ける限り、中国は「統一」戦争の野望を捨てる
ことはない
安倍晋三首相も昨年七月の衆院予算委員会で、これを質問されたが、「個別の事態について今つまびらかにお答えをすることは差し控えさせていただく」として答弁を避けた。
従来日本国内では、「台湾は中国の一部」「台湾問題は中国の内政問題」との虚構宣伝を振りかざす中国への外交上の配慮から、日本の安全、存立に死活的に関わるはずの台湾の問題をタブー視する傾向が強かった。だからこれもまたその一例ではないかと思われる。
もっとも「密接な関係にある他国」に米国が該当するのは確かだろう。台湾防衛のために出動する米艦船が攻撃を受ければ、当然日本は応戦することになるはずだ。中国軍による攻撃に対してだけ、集団的自衛権を行使しないということはあり得ないからである。
■台湾への「集団的自衛権行使」に異なる見方
ただ問題は、台湾が攻撃を受けた場合はどうかである。「密接な関係にある他国」に台湾は含まれるかだ。
これについては諸説見られる。
たとえば台湾では、「台湾は密接な関係があり、台湾への武力攻撃は日本の生存を脅かす」として、台湾は含まれる」であるとか、「日本にとり台湾は国ではなく、含まれない」といった様々な日本の専門家の見方が報道されて来た。
そうしたなか、このほど岸田文雄外相が政府の考えを、わずかながらも指し示した。

台湾への攻撃も集団的自衛権行使の対象と
なるのか。岸田外相(中央)の答弁を見よう
六月十五日の衆院平和安全法制特別委員会で「密接な関係にある他国」に台湾は含まれるかとの質問に対する答弁を見てみよう。
「(安倍首相は)自衛権を行使するのは国で、『国家が該当し、未承認国、あるいは分裂国家も入る』と説明している」とした上で、「我が国は、サンフランシスコ平和条約によって、台湾に対するすべての権利、権限および請求権を放棄しており、台湾の法的地位に関して、独自の認定を行う立場にない」と答えている。
政府はまたしても「台湾が含まれるかの言及を避けた」(産経)かに見えるが、実際にはどうか。
■台湾は「日本と密接な関係の国」との仄めかし
まず「他国」には「未承認国」や「分裂国家」も含まれるとした説明だが、「未承認国家」とは、国家の実態は備えてはいるも、多くの国から国家承認を受けていない国家を指し、中華民国(台湾)もその一つと見ることができる。
一方「分裂(分断)国家」とは、領土に二つ以上の政府が存在している国家を指し、その代表例が韓国と北朝鮮だが、中華人民共和国と中華民国もそれだとする見方も広く持たれている(もっとも中華民国の場合、それが拠るところの台湾は国際法上「中国」の領土ではないため、厳密な意味で分裂国家と呼べるかは疑問だが)。
つまり政府はこの説明で、台湾もまた「他国」に含まれ得ると仄めかしたのではないか。
もっとも日本にとって、台湾は未承認であるが事実上の「国家」なのか、それとも中国の一地域に過ぎないのかという最重要の問題が残る。政府がもし後者の認識であれば、中国による台湾への攻撃に対し、集団的自衛権を発動することはないだろう。
■政府は台湾を「中国の一部」と見ていない
これに関して岸田外相が行った説明が、「我が国は、サンフランシスコ平和条約によって、台湾に対するすべての権利、権限および請求権を放棄しており、台湾の法的地位に関して、独自の認定を行う立場にない」との説明なのだ。
「独自の認定を行う立場にない」と明言を避けたわけだが、しかし実はこの説明こそ、「台湾を中国の領土の不可分の一部と承認せよ」と要求する中国に対して行って来た、政府の回答(公式見解)なのである。
要するにこういうことだ。
「日本は一九五二年に発効のサンフランシスコ平和条約に基づき、それまで領有して来た台湾の主権を放棄した(放棄後の台湾の新たな帰属先は取り決められなかった。すでに中華民国がそこを占領してはいたが)。そのため日本はすでにその帰属先を勝手に決める権限はなくなっており、どんなに中国から中国領土と承認せよと求められても、それに応じることはできない」
つまり「日本は台湾を中国の領土とは認めていない」という意味だ。しかしそれを明言すれば、日中関係は取り返しのつかない状況に陥るため、このように遠回し表現を繰り返し続けているわけだ。
したがって今回の岸田外相の説明は、台湾もまた集団的自衛権を行使できる「他国」たり得ると暗示したものと受け止めていいはずである。
もし違うのであれば、すでに「北朝鮮は全く考えられない」(安倍首相の国会答弁)と明言したように、とうに「台湾は考えられない」と表明していることだろう。
■問題への関心、認識をー将来の台湾有事に備え
もっとも、それであるなら中国は、この岸田発言に対して何らかの反応を見せるはずだが、十六日現在、それが見られない。
所謂中国の「核心的利益」を犯すかのような外国の言動には、過剰な反撥を見せるのが中国だが、実はその一方で、寝た子を起こすことを避けようと、黙殺する場合も少なくないのである。
今回もそうではないのか。なぜなら日本国民は、こうした台湾有事に関する問題には一般的に関心が薄い。そしてそうした中国には好ましい状態は、自らが騒がないかぎり今後も続くとことを、あの国は知っているのではないだろうか。
日中間の暗黙の了解として、「台湾の法的地位に関して、独自の認定を行う立場にない」との日本側の表明は、中国に対する「日本は台湾問題を巡って中国と揉める気はない」とのメッセージになっているようにも見える。
しかし政府が中国への配慮でどのような表現を用いようと、それはそれだ。良識ある国民はもっとこうした問題に関心を持った方がいい。

中国の台湾への武力侵略は日本の存立危機事態を招くことになる
将来台湾を巡る緊張が高まる際、中国は必ず「台湾は中国の一部」との宣伝で日本国内を分断し、自衛隊の有事への介入を試みるはず。そうした事態に今からしっかりと備えておかなければ、日本の存立危機事態の発生に有効な対処などできないからだ。
*******************************************
ブログランキング参加中
よろしければクリックをお願いします。 運動を拡大したいので。
↓ ↓

モバイルはこちら
↓ ↓
http://blog.with2.net/link.php
link.php
日本政府は「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生」し、それによって「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合、集団的自衛権を行使し、それを排除することが可能としたが、そうしたケースは台湾有事にもあてはめられるのだろうか。

台湾は中国の帰属しない主権国家。日本の存立に死活的に重要なこの国が
中国の武力行使を受ければ…
つまり、台湾が中国との「統一」を拒否し、主権国家であることを続ける限り、いつかは発生する可能性が否定できない中国による台湾への武力攻撃が現実化し、その結果、当然のように日本の存立が脅かされた場合、日本は集団的自衛権を発動できるのかだが、意外にもこの問題は、これまであまり論じられてこなかったようだ。

台湾が主権国家であり続ける限り、中国は「統一」戦争の野望を捨てる
ことはない
安倍晋三首相も昨年七月の衆院予算委員会で、これを質問されたが、「個別の事態について今つまびらかにお答えをすることは差し控えさせていただく」として答弁を避けた。
従来日本国内では、「台湾は中国の一部」「台湾問題は中国の内政問題」との虚構宣伝を振りかざす中国への外交上の配慮から、日本の安全、存立に死活的に関わるはずの台湾の問題をタブー視する傾向が強かった。だからこれもまたその一例ではないかと思われる。
もっとも「密接な関係にある他国」に米国が該当するのは確かだろう。台湾防衛のために出動する米艦船が攻撃を受ければ、当然日本は応戦することになるはずだ。中国軍による攻撃に対してだけ、集団的自衛権を行使しないということはあり得ないからである。
■台湾への「集団的自衛権行使」に異なる見方
ただ問題は、台湾が攻撃を受けた場合はどうかである。「密接な関係にある他国」に台湾は含まれるかだ。
これについては諸説見られる。
たとえば台湾では、「台湾は密接な関係があり、台湾への武力攻撃は日本の生存を脅かす」として、台湾は含まれる」であるとか、「日本にとり台湾は国ではなく、含まれない」といった様々な日本の専門家の見方が報道されて来た。
そうしたなか、このほど岸田文雄外相が政府の考えを、わずかながらも指し示した。

台湾への攻撃も集団的自衛権行使の対象と
なるのか。岸田外相(中央)の答弁を見よう
六月十五日の衆院平和安全法制特別委員会で「密接な関係にある他国」に台湾は含まれるかとの質問に対する答弁を見てみよう。
「(安倍首相は)自衛権を行使するのは国で、『国家が該当し、未承認国、あるいは分裂国家も入る』と説明している」とした上で、「我が国は、サンフランシスコ平和条約によって、台湾に対するすべての権利、権限および請求権を放棄しており、台湾の法的地位に関して、独自の認定を行う立場にない」と答えている。
政府はまたしても「台湾が含まれるかの言及を避けた」(産経)かに見えるが、実際にはどうか。
■台湾は「日本と密接な関係の国」との仄めかし
まず「他国」には「未承認国」や「分裂国家」も含まれるとした説明だが、「未承認国家」とは、国家の実態は備えてはいるも、多くの国から国家承認を受けていない国家を指し、中華民国(台湾)もその一つと見ることができる。
一方「分裂(分断)国家」とは、領土に二つ以上の政府が存在している国家を指し、その代表例が韓国と北朝鮮だが、中華人民共和国と中華民国もそれだとする見方も広く持たれている(もっとも中華民国の場合、それが拠るところの台湾は国際法上「中国」の領土ではないため、厳密な意味で分裂国家と呼べるかは疑問だが)。
つまり政府はこの説明で、台湾もまた「他国」に含まれ得ると仄めかしたのではないか。
もっとも日本にとって、台湾は未承認であるが事実上の「国家」なのか、それとも中国の一地域に過ぎないのかという最重要の問題が残る。政府がもし後者の認識であれば、中国による台湾への攻撃に対し、集団的自衛権を発動することはないだろう。
■政府は台湾を「中国の一部」と見ていない
これに関して岸田外相が行った説明が、「我が国は、サンフランシスコ平和条約によって、台湾に対するすべての権利、権限および請求権を放棄しており、台湾の法的地位に関して、独自の認定を行う立場にない」との説明なのだ。
「独自の認定を行う立場にない」と明言を避けたわけだが、しかし実はこの説明こそ、「台湾を中国の領土の不可分の一部と承認せよ」と要求する中国に対して行って来た、政府の回答(公式見解)なのである。
要するにこういうことだ。
「日本は一九五二年に発効のサンフランシスコ平和条約に基づき、それまで領有して来た台湾の主権を放棄した(放棄後の台湾の新たな帰属先は取り決められなかった。すでに中華民国がそこを占領してはいたが)。そのため日本はすでにその帰属先を勝手に決める権限はなくなっており、どんなに中国から中国領土と承認せよと求められても、それに応じることはできない」
つまり「日本は台湾を中国の領土とは認めていない」という意味だ。しかしそれを明言すれば、日中関係は取り返しのつかない状況に陥るため、このように遠回し表現を繰り返し続けているわけだ。
したがって今回の岸田外相の説明は、台湾もまた集団的自衛権を行使できる「他国」たり得ると暗示したものと受け止めていいはずである。
もし違うのであれば、すでに「北朝鮮は全く考えられない」(安倍首相の国会答弁)と明言したように、とうに「台湾は考えられない」と表明していることだろう。
■問題への関心、認識をー将来の台湾有事に備え
もっとも、それであるなら中国は、この岸田発言に対して何らかの反応を見せるはずだが、十六日現在、それが見られない。
所謂中国の「核心的利益」を犯すかのような外国の言動には、過剰な反撥を見せるのが中国だが、実はその一方で、寝た子を起こすことを避けようと、黙殺する場合も少なくないのである。
今回もそうではないのか。なぜなら日本国民は、こうした台湾有事に関する問題には一般的に関心が薄い。そしてそうした中国には好ましい状態は、自らが騒がないかぎり今後も続くとことを、あの国は知っているのではないだろうか。
日中間の暗黙の了解として、「台湾の法的地位に関して、独自の認定を行う立場にない」との日本側の表明は、中国に対する「日本は台湾問題を巡って中国と揉める気はない」とのメッセージになっているようにも見える。
しかし政府が中国への配慮でどのような表現を用いようと、それはそれだ。良識ある国民はもっとこうした問題に関心を持った方がいい。

中国の台湾への武力侵略は日本の存立危機事態を招くことになる
将来台湾を巡る緊張が高まる際、中国は必ず「台湾は中国の一部」との宣伝で日本国内を分断し、自衛隊の有事への介入を試みるはず。そうした事態に今からしっかりと備えておかなければ、日本の存立危機事態の発生に有効な対処などできないからだ。
*******************************************
ブログランキング参加中
よろしければクリックをお願いします。 運動を拡大したいので。
↓ ↓

モバイルはこちら
↓ ↓
http://blog.with2.net/link.php
link.php
スポンサーサイト