台湾観光地―中国人が日本人を駆逐する?/馬英九総統の日台交流を考える
2015/04/09/Thu
「昨年の訪台客は九百九十万人を超えて新記録を樹立。今年は千万人を目指そう」
一月一日にそうスピーチした馬英九総統。その日時点の統計によれば、昨年の訪台客数は国別で一位が中国(三百六十四万人、前年比三八%増)、二位が日本で(百四十八万人、同一六%増)、三位が香港(百二十四万人、同一七%増)。
このように支持率低迷の中でも、観光業の進展を自らの実績として盛んに強調する馬英九氏だが、四月九日には日本の対台湾交流窓口、交流協会の大橋光夫会長との会見で、こう語った。
「昨年の台湾から日本への観光客は二百九十七万人。しかし貴国から台湾への観光客数はわずか百六十三万人(※一月一日の発表数値と若干異なる)。人口は台湾の五倍だから十倍の開きだ」
そしてその上で、次の如く促した。「貴国にはまだ努力すべき空間がたくさんある」と。

大橋氏(右)に「日本には努力すべき空間がある」と諭した馬英九氏(右)
つまり「日本政府は私のようにもっと自国民への働き掛けに努力し、台湾観光へ寄越すべきだ」と言いたいのだろう。
これを受け、台湾団結連盟所属の周倪安立法委員(国会議員)はフェイスブックで、こんなコメントを書いていた。
「日本人は台湾観光を好むし、台湾人も好き。しかし台湾では中国人観光客の不潔さ、うるささに我慢できない。馬総統、あなたには独力すべき空間がたくさんあるのを知っているのか」

台湾で喧騒、不潔さが問題視される中国人観光客
これは中国傾斜政策(対中関係改善による台湾経済の活性化など)の大きな一環として、中国人の台湾観光開放を実施した馬英九氏への皮肉である。
周倪安氏は昨年九月に公表のプレスリリースで、こう指摘している。
「台北市旅行家協会理事長は『中国人客の増加で国民の旅行空間が縮小した。故宮博物院は食糧市場のように騒々しく、ホテルの宿泊費は上がり、国内の旅客は国外へ逃げている。そしてこうした観光品質の低下は日本や欧米の観光客の訪台意欲に影響している』と話す」
「中国人観光客は消費額の高い欧米や日本の観光客を追い払っている。経済効果の面から言えば、これは副作用」
周倪安氏はこう述べ、中国人観光客に対する滞在期間の延長中止と入国者数制限、そして欧米、日本などの観光客の誘致を訴えていた。
中国人観光客のマナーの悪さは日本人観光客らを台湾から追い払うという懸念は、二〇〇八年の開放当初から台湾観光業界から出ていたが、実際に「追い払う」ような事態になっているのだろうか。
たしかにマナーは、実際に社会問題になるほど良くない。同じ中国人客でも、訪日する者より訪台する者の方にマナーの悪さが目立つのは、一言で言えば日本人よりも台湾人を侮っているからか。確かに彼らは台湾を“中国の辺境の小島”と看做し、その住民を見下すような傲慢で傍若無人の態度が目立つ。

台湾の観光地で中国国旗を掲げる中国人客。台湾人に対する傲慢さが目立つ
台湾人意識ではなく中国人意識を誇る中国生まれの馬英九氏は、それを一々問題視しないかも知れないが(同氏自身も台湾人を見下している)、日本人観光客から見ても、そうした情景は不快そのものだ。
私の経験を話そう。昨年、年輩の日本人ツアーに同行した時のことだ。ある観光地の駐車場で観光バスから降りたところ、中国人客の大集団と出くわしたのだが、その喧騒で無秩序な雰囲気に、日本人はみな唖然として立ちつくした。恐怖を感じたのだ。「中国人だけは乗せない」と吐き捨てたバスの運手周の言葉も印象に残る。
実際に「副作用」は出ているかについては、統計もないのでわからない。だが日本人にとっては心和む「台湾」という観光地が、かつてとは様変わりしたと感じる人はたくさんいると思う。
しかしこの稿で中国人客を批判する気はない。ここで考えたいのは馬英九氏の日台交流に対する感覚だ。
同氏は大橋氏との会見で、次のようにも話している。
「(尖閣海域に関する)台日漁業協定の締結から間もなく三周年。あれによって台日は平和、協力に向け重要な一歩を踏み出した。東海(※東支那海)の平和に役立つ」
「(日中関係の悪化で減少していた)中国からの観光客はすでに日本に戻った。日本企業も中国投資へと戻りつつある。こうした雰囲気の改変が我々の努力目標だ」
これを見ればわかると思う。中国傾斜の馬英九氏にとり「日台交流」とは「日台中三角交流」の一環なのだ。日本をも中国傾斜へと誘うことが、この人物の「努力」目標らしい。
ちなみに日台漁業協定後の尖閣を巡る日台対立の緩和について馬英九氏は、自ら提唱した「東支那海平和イニシアチブ」の成果だと自画自賛するが、実際には馬英九氏の中国接近から日台関係を守りたい安倍政権と、尖閣問題で中国と歩調を合わせた同氏の政策にそっぽを向く台湾国民の良識の成果である。
日台両国民の心の交流に、馬英九氏の入り込む余地はないのではないか。
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一月一日にそうスピーチした馬英九総統。その日時点の統計によれば、昨年の訪台客数は国別で一位が中国(三百六十四万人、前年比三八%増)、二位が日本で(百四十八万人、同一六%増)、三位が香港(百二十四万人、同一七%増)。
このように支持率低迷の中でも、観光業の進展を自らの実績として盛んに強調する馬英九氏だが、四月九日には日本の対台湾交流窓口、交流協会の大橋光夫会長との会見で、こう語った。
「昨年の台湾から日本への観光客は二百九十七万人。しかし貴国から台湾への観光客数はわずか百六十三万人(※一月一日の発表数値と若干異なる)。人口は台湾の五倍だから十倍の開きだ」
そしてその上で、次の如く促した。「貴国にはまだ努力すべき空間がたくさんある」と。

大橋氏(右)に「日本には努力すべき空間がある」と諭した馬英九氏(右)
つまり「日本政府は私のようにもっと自国民への働き掛けに努力し、台湾観光へ寄越すべきだ」と言いたいのだろう。
これを受け、台湾団結連盟所属の周倪安立法委員(国会議員)はフェイスブックで、こんなコメントを書いていた。
「日本人は台湾観光を好むし、台湾人も好き。しかし台湾では中国人観光客の不潔さ、うるささに我慢できない。馬総統、あなたには独力すべき空間がたくさんあるのを知っているのか」

台湾で喧騒、不潔さが問題視される中国人観光客
これは中国傾斜政策(対中関係改善による台湾経済の活性化など)の大きな一環として、中国人の台湾観光開放を実施した馬英九氏への皮肉である。
周倪安氏は昨年九月に公表のプレスリリースで、こう指摘している。
「台北市旅行家協会理事長は『中国人客の増加で国民の旅行空間が縮小した。故宮博物院は食糧市場のように騒々しく、ホテルの宿泊費は上がり、国内の旅客は国外へ逃げている。そしてこうした観光品質の低下は日本や欧米の観光客の訪台意欲に影響している』と話す」
「中国人観光客は消費額の高い欧米や日本の観光客を追い払っている。経済効果の面から言えば、これは副作用」
周倪安氏はこう述べ、中国人観光客に対する滞在期間の延長中止と入国者数制限、そして欧米、日本などの観光客の誘致を訴えていた。
中国人観光客のマナーの悪さは日本人観光客らを台湾から追い払うという懸念は、二〇〇八年の開放当初から台湾観光業界から出ていたが、実際に「追い払う」ような事態になっているのだろうか。
たしかにマナーは、実際に社会問題になるほど良くない。同じ中国人客でも、訪日する者より訪台する者の方にマナーの悪さが目立つのは、一言で言えば日本人よりも台湾人を侮っているからか。確かに彼らは台湾を“中国の辺境の小島”と看做し、その住民を見下すような傲慢で傍若無人の態度が目立つ。

台湾の観光地で中国国旗を掲げる中国人客。台湾人に対する傲慢さが目立つ
台湾人意識ではなく中国人意識を誇る中国生まれの馬英九氏は、それを一々問題視しないかも知れないが(同氏自身も台湾人を見下している)、日本人観光客から見ても、そうした情景は不快そのものだ。
私の経験を話そう。昨年、年輩の日本人ツアーに同行した時のことだ。ある観光地の駐車場で観光バスから降りたところ、中国人客の大集団と出くわしたのだが、その喧騒で無秩序な雰囲気に、日本人はみな唖然として立ちつくした。恐怖を感じたのだ。「中国人だけは乗せない」と吐き捨てたバスの運手周の言葉も印象に残る。
実際に「副作用」は出ているかについては、統計もないのでわからない。だが日本人にとっては心和む「台湾」という観光地が、かつてとは様変わりしたと感じる人はたくさんいると思う。
しかしこの稿で中国人客を批判する気はない。ここで考えたいのは馬英九氏の日台交流に対する感覚だ。
同氏は大橋氏との会見で、次のようにも話している。
「(尖閣海域に関する)台日漁業協定の締結から間もなく三周年。あれによって台日は平和、協力に向け重要な一歩を踏み出した。東海(※東支那海)の平和に役立つ」
「(日中関係の悪化で減少していた)中国からの観光客はすでに日本に戻った。日本企業も中国投資へと戻りつつある。こうした雰囲気の改変が我々の努力目標だ」
これを見ればわかると思う。中国傾斜の馬英九氏にとり「日台交流」とは「日台中三角交流」の一環なのだ。日本をも中国傾斜へと誘うことが、この人物の「努力」目標らしい。
ちなみに日台漁業協定後の尖閣を巡る日台対立の緩和について馬英九氏は、自ら提唱した「東支那海平和イニシアチブ」の成果だと自画自賛するが、実際には馬英九氏の中国接近から日台関係を守りたい安倍政権と、尖閣問題で中国と歩調を合わせた同氏の政策にそっぽを向く台湾国民の良識の成果である。
日台両国民の心の交流に、馬英九氏の入り込む余地はないのではないか。
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