中国を恐れる日米―台湾・民進党政権の復活を警戒する愚かさ
2015/03/27/Fri
たとえば仲良しのA、B、Cと乱暴者のDがおり、Dは一番体の小さいCを押え付け、「俺の言うことに従え」と怒鳴り付けているとする。
Cはもちろんそれを断り、Dはますます大騒ぎ。AとBはCに同情はするが、騒ぎに巻き込まれるのを恐れ、どうもDには物を言えない。「これ以上Dを刺激してはいけない。取り敢えず従ってはどうか。」とCに勧めるが、Cはそれに応じない。それでA、Bは業を煮やし、強いDではなく弱いCを恨み、批判し始める…。
これは学校、職場、町内など、どこでもありそうな話である。そして国際社会においてもだ。つまりA、Bは日米であり、Cは台湾、そしてDは中国ではないか。
■産経は民進党の勝利に安堵しないのか
昨年十一月、台湾の統一地方選挙で与党国民党が大敗した。これを受け、産経新聞は社説で、「敗因は、2008年に発足した馬政権があまりに性急に進めてきた対中接近政策が受け入れられなかったことにある」と分析した。
馬英九政権の対中接近政策は「対中関係改善」とも称されるが、台湾併呑を国家目標に掲げる中国への無防備な傾斜ともされ、台湾国内では懸念の声が広がっていた。産経社説も「馬政権の任期は1年余りを残す。民主的な選挙で示された台湾の人々の懸念に、最大限、配慮した政策へと軌道修正を図らなければならない」と自制を訴えている。
この選挙の結果、来年一月の総統選挙での野党民進党による政権奪還も現実味を帯びてきた。それが達成されれば、従来の徒な中国傾斜にも歯止めが掛り、アジア太平洋地域の安全を脅かす台湾の平和統一(台中協議を通じた統一)の可能性は遠のくものと見られる。
そうなれば日本の安全保障の観点からも、取り敢えずは安堵していい。
しかし産経は、民進党の政権復帰にも不安げだ。
■トラブルメーカーは民進党ではなく中国
社説は「民進党も、台湾の『安定と繁栄』を担保しつつ、台湾海峡を挟む両岸関係を安定させる現実に即した対中政策を打ち出すことが求められよう。かつて台湾独立色の強い民進党の陳水扁政権下で、中台関係は完全な膠着状態に陥った」と注文を付ける。
「台湾の繁栄と地域の安定には経済、安全保障の両面で均衡が不可欠だ。日米を含む国際社会の現実的な利益もまさにそこにある」とまで強調しながらである。
まるでかつての民進党政権は日米には迷惑なトラブルメーカーあったと言わんばかりだ。
「台湾独立色」が強く打ち出したというが、それは「一つの中国」なる虚構宣伝が国内外に蔓延する中、「台湾と中国は一辺一国(別々の国)」という現実を明確にするという、いわば国家主権防衛の政策だった訳で、本物のトラブルメーカーは一方的に台湾の国家主権を否定し、それを侵略しようとする中国の側だろう。
しかしこの社説からは、その真実が読者に伝わってこない。
■民進党に圧力を掛ける米国政府
台湾が国家主権の主張を差し控えるのが「日米を含む国際社会の現実的な利益」と書いた産経社説。実際に米国政府がそのように考えていることは、民進党政権の国連加盟申請の動きに猛反撥したのを想起すればよくわかる。
そして最近も、一つの事例が台湾に波紋を投げかけている。
米国の対台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)本部の業務執行理事を昨年退任したバーバラ・シュレ―ジ氏が三月二十日に見せた発言がそれだ。

バーバラ・シュレ―ジ元AIT業務執行理事の発言で民進党に衝撃が走った
ワシントンで開催された台湾の次期総統選挙に関するシンポジウムで、次のように語ったのだ。「個人的な意見」と断ってのものだが、実際には米政府の代弁と見られる。
―――台湾の民主主義体制が米台関係の基礎であり、その民主的なプロセスに介入するのは適切ではないが、現在の台湾海峡の平和と安全の継続が米国の利益に適う。そこで政府には従来通り、積極的に機会を摑み、民進党の指導者層、特に蔡英文主席に密かな圧力を掛け続け、中国との距離を縮める中国政策を採用させてほしい。

米国の圧力を受けているという蔡英文・民進党主席
それではシュレージ氏は、あるいは米国政府は、民進党は政権獲得後、いかに中国との距離を縮めろというのか。
つまり、どのようにすれば中国を刺激せずに済むのか。それについては習近平主席に聞いて見たらいい。
■習近平が語る台中唯一の「平和」への道とは
習近平氏は全国政治協商会議会期中の三月四日、台湾工作に関する会議で次のように述べている。

民進党の政権奪還を視野に台湾工作の在り方を語る習近平主席
―――九二年コンセンサスは、両岸の政治的相互信頼、対話、関係の改善と発展に対し、掛け替えない重要な作用を発揮する。もしこの両岸共同の政治的基礎が破壊されれば、両岸関係は再び動揺して不安定な状況に陥ることになる。
―――基礎が牢固でなければ地は動き、山は揺れる。大陸側は終始九二年コンセンサスを堅持し、台湾当局、各政党との交流の基礎条件としている。その核心は大陸と台湾は同じく一つの中国に属すると認めること。この一点さえ認めれば、台湾のいかなる政党、団体も、大陸との交流では障害がなくなる。
このように、「九二年コンセンサス」を台湾側が受け入れることが、台中間の距離を縮める唯一の方法だと言っている。
■コンセンサスではない「九二年コンセンサス」
ちなみに、九二年コンセンサスとは、台中双方の窓口機関が一九九二年に到達した合意とされ、その内容について国民党は「一つの中国、各自が表述」(「一つの中国」を堅持する。「中国」の定義はそれぞれが解釈する。台湾側は「中華民国」、中国側は「中華人民共和国」と解釈)だと説明する。
「中華民国」の存在を断じて認めない中国は、当初そのような「コンセンサス」の存在を否定したが、その後一転してそれを認めた。もっとも「各自が一つの中国の原則を堅持すると表述する」との合意だとしてだ。
「世界には一つの中国しかなく、台湾は中国の一部であり、中華人民共和国政府は全中国を代表する唯一の合法政府」との中国従来の立場を、台湾が認めたという話に持って行こうとしているのである。
これではコンセンサスとは言えないではないか。
■中国のペースに乗らない民進党を恫喝
実はこの「コンセンサス」なるものは、二〇〇〇年に国民党が案出したフィクションだ。双方の説明が異なること自体、「コンセンサス」の不存在を物語っているようだ。
しかしそれでも国共両党は、産経の所謂「台湾独立色の強い民進党」に対抗するため、「大陸と台湾は同じく一つの中国に属する」との一点で合意がなされたと口裏を合わせた。そして国民党政権発足後はこのコンセンサスの下で「両岸の政治的相互信頼、対話、関係の改善と発展」が演じられているのである。
その実相が今日見られる国民党政権の急速な中国傾斜なのである。すっかり中国のペースに乗せられている。
一方民進党は、九二年コンセンサスなるフィクションを受け入れていない。
そこで習近平氏は同党の政権奪還を視野に、「この両岸共同の政治的基礎が破壊されれば、両岸関係は再び動揺して不安定な状況に陥る」と言った恫喝を繰り広げているのだ。
そしてその恫喝に脅えているのが、米国という訳で。
■両立しない「台湾国民の願望」と「中国の要求」
シュレージ氏に話を戻そう。同氏自身はいかに台中の距離を縮めればいいと考えているのか。次のように語る。
―――重要なのは民進党が方法を探し出すこと。必ずしも「九二年コンセンサスを受け入ろ」とは求めない。ただし問題の厳粛性を理解し、それを避けることなく、中国、米国、そして現状維持を望む台湾民衆に配慮した方策を考え出すべきだ。
「求めない」と言いながら、実際には「求めている」ではないか。要するにシュレージ氏も、民進党が「九二年コンセンサス」を受け入れ、台湾の国家主権を自己否定する以外に中国を宥める方法はないと知っている訳だ。
それにしても矛盾の多い言説だ。「現状維持を望む台湾民衆」とは、台湾国民が中国に隷属しない主権国家であるとの現状の維持を望んでいるということだが、その現状の破壊を求めるのが中国だ。
その両者に同時に「配慮」する方策など、そもそも成り立つわけがない。
■台湾の民意尊重を装った対中譲歩の訴え
台湾の民衆が現状維持を望んでいるのだから、九二年コンセンサスを受け入れろと求めるシュレージ氏だが、そこには一種の嘘が隠されている。
たしかに二〇一二年に国民党政権がが実施した世論調査によると、六割近くが「一つの中国・各自が表述・中国とは中華民国」との国民党政権の政策に支持を表明してはいる。しかし「中国とは中華人民共和国」とする中国の立場に対しては、おそらくほとんどが受け入れられないだろう。
しかしシュレージ氏が、つまり米国政府が民進党に要求するのは、その中国の立場への配慮であり、歩み寄りなのだ。
国民党政権は、その立場に明確な反対を表明しないまま歩み寄り、そうした中国への接近の仕方で有権者にそっぽを向かれた訳だが、米国はその民意を尊重するポーズを見せながら、実際にはそれを無視をしているに等しい。
それは産経社説も同様だ。こちらも「台湾住民のほぼ8割は、台湾の『現状維持』を望んでいる」と強調し、台湾の民意尊重の姿勢を装い、民進党に「現状破壊」を望む中国への譲歩の呼び掛けを正当化している。国民党の対中接近に自制を呼び掛けながら、実際には民進党に「第二の国民党」になれと求めているようだ。
■総統選挙前―日本メディアに民進党批判の予感
民主主義国家への干渉はいけないと言いながらも、あえて台湾への圧力掛けを続ける米国。実際にあの国は軍事力で台湾の国防を支えている訳だから、そうした台湾の保護国扱いも台湾防衛戦略の内と言えないことはない。
しかし中国の台湾侵略を正当化するための「一つの中国」という対外宣伝に協力してどうするのかということだ。
一方日本は米国と異なり、台湾が中国に併呑されることは自国の死活に関わってくる。それでも親米メディアや親中メディアは、おそらく総統選挙が近付くにつれ、、民進党を牽制する論調を見せ始めることだろう。
■台中間の緊張を恐れる日本メディアの愚
シュレージ氏は「総統選挙で台湾の有権者は、まずは民進党の大陸政策を見てから投票すべきだ」とも述べている。これは明らかに選挙への介入だろう。
すでにこの一言を受け、台湾では親中メディアの中国時報が、「米国の民進党の大陸政策に対する懸念はすでに頂点に達している」「民進党が総統選挙で勝利すれば台湾問題を惹き起すとの懸念は、ホワイトハウスのレベルにまで広がっている」などと有権者の不安を煽っている。
日本のメディアもこうした報道を行うのだろうか。
まさに中国の喜ぶ展開だ。民進党スポークスマンはシュレージ氏に対し、「発言には自制を」と訴えた。
中国の脅威に脅える台湾を見放すかのような日米の言論が、台湾国民から自信と希望を奪い、そして孤立感を深めさせ、それが中国の統一攻勢への抵抗力を大きく減退させることになるのだ。
民進党政権発足がもたらす緊張の高まりを恐れてどうする。将来もし台湾が奪われ、アジア太平洋地域に中国の勢力が一気に伸張すれば、日本は今日とは比べ物のならないほど、あの国の脅威に曝されることになるのである。
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これは学校、職場、町内など、どこでもありそうな話である。そして国際社会においてもだ。つまりA、Bは日米であり、Cは台湾、そしてDは中国ではないか。
■産経は民進党の勝利に安堵しないのか
昨年十一月、台湾の統一地方選挙で与党国民党が大敗した。これを受け、産経新聞は社説で、「敗因は、2008年に発足した馬政権があまりに性急に進めてきた対中接近政策が受け入れられなかったことにある」と分析した。
馬英九政権の対中接近政策は「対中関係改善」とも称されるが、台湾併呑を国家目標に掲げる中国への無防備な傾斜ともされ、台湾国内では懸念の声が広がっていた。産経社説も「馬政権の任期は1年余りを残す。民主的な選挙で示された台湾の人々の懸念に、最大限、配慮した政策へと軌道修正を図らなければならない」と自制を訴えている。
この選挙の結果、来年一月の総統選挙での野党民進党による政権奪還も現実味を帯びてきた。それが達成されれば、従来の徒な中国傾斜にも歯止めが掛り、アジア太平洋地域の安全を脅かす台湾の平和統一(台中協議を通じた統一)の可能性は遠のくものと見られる。
そうなれば日本の安全保障の観点からも、取り敢えずは安堵していい。
しかし産経は、民進党の政権復帰にも不安げだ。
■トラブルメーカーは民進党ではなく中国
社説は「民進党も、台湾の『安定と繁栄』を担保しつつ、台湾海峡を挟む両岸関係を安定させる現実に即した対中政策を打ち出すことが求められよう。かつて台湾独立色の強い民進党の陳水扁政権下で、中台関係は完全な膠着状態に陥った」と注文を付ける。
「台湾の繁栄と地域の安定には経済、安全保障の両面で均衡が不可欠だ。日米を含む国際社会の現実的な利益もまさにそこにある」とまで強調しながらである。
まるでかつての民進党政権は日米には迷惑なトラブルメーカーあったと言わんばかりだ。
「台湾独立色」が強く打ち出したというが、それは「一つの中国」なる虚構宣伝が国内外に蔓延する中、「台湾と中国は一辺一国(別々の国)」という現実を明確にするという、いわば国家主権防衛の政策だった訳で、本物のトラブルメーカーは一方的に台湾の国家主権を否定し、それを侵略しようとする中国の側だろう。
しかしこの社説からは、その真実が読者に伝わってこない。
■民進党に圧力を掛ける米国政府
台湾が国家主権の主張を差し控えるのが「日米を含む国際社会の現実的な利益」と書いた産経社説。実際に米国政府がそのように考えていることは、民進党政権の国連加盟申請の動きに猛反撥したのを想起すればよくわかる。
そして最近も、一つの事例が台湾に波紋を投げかけている。
米国の対台湾窓口機関、米国在台協会(AIT)本部の業務執行理事を昨年退任したバーバラ・シュレ―ジ氏が三月二十日に見せた発言がそれだ。

バーバラ・シュレ―ジ元AIT業務執行理事の発言で民進党に衝撃が走った
ワシントンで開催された台湾の次期総統選挙に関するシンポジウムで、次のように語ったのだ。「個人的な意見」と断ってのものだが、実際には米政府の代弁と見られる。
―――台湾の民主主義体制が米台関係の基礎であり、その民主的なプロセスに介入するのは適切ではないが、現在の台湾海峡の平和と安全の継続が米国の利益に適う。そこで政府には従来通り、積極的に機会を摑み、民進党の指導者層、特に蔡英文主席に密かな圧力を掛け続け、中国との距離を縮める中国政策を採用させてほしい。

米国の圧力を受けているという蔡英文・民進党主席
それではシュレージ氏は、あるいは米国政府は、民進党は政権獲得後、いかに中国との距離を縮めろというのか。
つまり、どのようにすれば中国を刺激せずに済むのか。それについては習近平主席に聞いて見たらいい。
■習近平が語る台中唯一の「平和」への道とは
習近平氏は全国政治協商会議会期中の三月四日、台湾工作に関する会議で次のように述べている。

民進党の政権奪還を視野に台湾工作の在り方を語る習近平主席
―――九二年コンセンサスは、両岸の政治的相互信頼、対話、関係の改善と発展に対し、掛け替えない重要な作用を発揮する。もしこの両岸共同の政治的基礎が破壊されれば、両岸関係は再び動揺して不安定な状況に陥ることになる。
―――基礎が牢固でなければ地は動き、山は揺れる。大陸側は終始九二年コンセンサスを堅持し、台湾当局、各政党との交流の基礎条件としている。その核心は大陸と台湾は同じく一つの中国に属すると認めること。この一点さえ認めれば、台湾のいかなる政党、団体も、大陸との交流では障害がなくなる。
このように、「九二年コンセンサス」を台湾側が受け入れることが、台中間の距離を縮める唯一の方法だと言っている。
■コンセンサスではない「九二年コンセンサス」
ちなみに、九二年コンセンサスとは、台中双方の窓口機関が一九九二年に到達した合意とされ、その内容について国民党は「一つの中国、各自が表述」(「一つの中国」を堅持する。「中国」の定義はそれぞれが解釈する。台湾側は「中華民国」、中国側は「中華人民共和国」と解釈)だと説明する。
「中華民国」の存在を断じて認めない中国は、当初そのような「コンセンサス」の存在を否定したが、その後一転してそれを認めた。もっとも「各自が一つの中国の原則を堅持すると表述する」との合意だとしてだ。
「世界には一つの中国しかなく、台湾は中国の一部であり、中華人民共和国政府は全中国を代表する唯一の合法政府」との中国従来の立場を、台湾が認めたという話に持って行こうとしているのである。
これではコンセンサスとは言えないではないか。
■中国のペースに乗らない民進党を恫喝
実はこの「コンセンサス」なるものは、二〇〇〇年に国民党が案出したフィクションだ。双方の説明が異なること自体、「コンセンサス」の不存在を物語っているようだ。
しかしそれでも国共両党は、産経の所謂「台湾独立色の強い民進党」に対抗するため、「大陸と台湾は同じく一つの中国に属する」との一点で合意がなされたと口裏を合わせた。そして国民党政権発足後はこのコンセンサスの下で「両岸の政治的相互信頼、対話、関係の改善と発展」が演じられているのである。
その実相が今日見られる国民党政権の急速な中国傾斜なのである。すっかり中国のペースに乗せられている。
一方民進党は、九二年コンセンサスなるフィクションを受け入れていない。
そこで習近平氏は同党の政権奪還を視野に、「この両岸共同の政治的基礎が破壊されれば、両岸関係は再び動揺して不安定な状況に陥る」と言った恫喝を繰り広げているのだ。
そしてその恫喝に脅えているのが、米国という訳で。
■両立しない「台湾国民の願望」と「中国の要求」
シュレージ氏に話を戻そう。同氏自身はいかに台中の距離を縮めればいいと考えているのか。次のように語る。
―――重要なのは民進党が方法を探し出すこと。必ずしも「九二年コンセンサスを受け入ろ」とは求めない。ただし問題の厳粛性を理解し、それを避けることなく、中国、米国、そして現状維持を望む台湾民衆に配慮した方策を考え出すべきだ。
「求めない」と言いながら、実際には「求めている」ではないか。要するにシュレージ氏も、民進党が「九二年コンセンサス」を受け入れ、台湾の国家主権を自己否定する以外に中国を宥める方法はないと知っている訳だ。
それにしても矛盾の多い言説だ。「現状維持を望む台湾民衆」とは、台湾国民が中国に隷属しない主権国家であるとの現状の維持を望んでいるということだが、その現状の破壊を求めるのが中国だ。
その両者に同時に「配慮」する方策など、そもそも成り立つわけがない。
■台湾の民意尊重を装った対中譲歩の訴え
台湾の民衆が現状維持を望んでいるのだから、九二年コンセンサスを受け入れろと求めるシュレージ氏だが、そこには一種の嘘が隠されている。
たしかに二〇一二年に国民党政権がが実施した世論調査によると、六割近くが「一つの中国・各自が表述・中国とは中華民国」との国民党政権の政策に支持を表明してはいる。しかし「中国とは中華人民共和国」とする中国の立場に対しては、おそらくほとんどが受け入れられないだろう。
しかしシュレージ氏が、つまり米国政府が民進党に要求するのは、その中国の立場への配慮であり、歩み寄りなのだ。
国民党政権は、その立場に明確な反対を表明しないまま歩み寄り、そうした中国への接近の仕方で有権者にそっぽを向かれた訳だが、米国はその民意を尊重するポーズを見せながら、実際にはそれを無視をしているに等しい。
それは産経社説も同様だ。こちらも「台湾住民のほぼ8割は、台湾の『現状維持』を望んでいる」と強調し、台湾の民意尊重の姿勢を装い、民進党に「現状破壊」を望む中国への譲歩の呼び掛けを正当化している。国民党の対中接近に自制を呼び掛けながら、実際には民進党に「第二の国民党」になれと求めているようだ。
■総統選挙前―日本メディアに民進党批判の予感
民主主義国家への干渉はいけないと言いながらも、あえて台湾への圧力掛けを続ける米国。実際にあの国は軍事力で台湾の国防を支えている訳だから、そうした台湾の保護国扱いも台湾防衛戦略の内と言えないことはない。
しかし中国の台湾侵略を正当化するための「一つの中国」という対外宣伝に協力してどうするのかということだ。
一方日本は米国と異なり、台湾が中国に併呑されることは自国の死活に関わってくる。それでも親米メディアや親中メディアは、おそらく総統選挙が近付くにつれ、、民進党を牽制する論調を見せ始めることだろう。
■台中間の緊張を恐れる日本メディアの愚
シュレージ氏は「総統選挙で台湾の有権者は、まずは民進党の大陸政策を見てから投票すべきだ」とも述べている。これは明らかに選挙への介入だろう。
すでにこの一言を受け、台湾では親中メディアの中国時報が、「米国の民進党の大陸政策に対する懸念はすでに頂点に達している」「民進党が総統選挙で勝利すれば台湾問題を惹き起すとの懸念は、ホワイトハウスのレベルにまで広がっている」などと有権者の不安を煽っている。
日本のメディアもこうした報道を行うのだろうか。
まさに中国の喜ぶ展開だ。民進党スポークスマンはシュレージ氏に対し、「発言には自制を」と訴えた。
中国の脅威に脅える台湾を見放すかのような日米の言論が、台湾国民から自信と希望を奪い、そして孤立感を深めさせ、それが中国の統一攻勢への抵抗力を大きく減退させることになるのだ。
民進党政権発足がもたらす緊張の高まりを恐れてどうする。将来もし台湾が奪われ、アジア太平洋地域に中国の勢力が一気に伸張すれば、日本は今日とは比べ物のならないほど、あの国の脅威に曝されることになるのである。
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