拒否すべき日中関係「改善」-李克強首相の対日強硬発言を読み解く(付:台湾チャンネル関連報道動画)
2015/03/16/Mon
■毎日新聞ですら批判する中国「歴史カード」
中国で三月十五日に閉幕した全人代について、読売新聞は社説でこう書いた。
―――習近平政権の独善的な強権体質が、より鮮明になったと言えよう。
―――習政権は全人代で、国際社会の様々な懸念を意に介さない態度を取り続けた。国防費の大幅増は、その象徴だろう。香港行政長官の選挙制度に関しても、住民の民主化要求をほとんど無視した。
―――法の支配、民主化、言論の自由といった普遍的な価値に、積極的に共感を示す指導者が現政権に見当たらないのは、残念である。
―――この傾向は、「力による統治」を進める習国家主席個人への権力集中が、共産党、国家、軍で強まったことと無縁ではあるまい。
そして李克強首相が十五日、全人代の閉会後の記者会見で見せた発言にも触れている。
―――日中関係について、「国家指導者は、先人の犯罪行為がもたらした歴史の責任を負うべきだ」と強調した。「日本の指導者が歴史を直視すれば、関係改善の契機になる」とも述べた。
こうした発言も日本に対する「強権体質」の表れということだろう。
歴史問題では中国に側に立つことの多い毎日新聞ですら社説で、「中国は抗日戦争勝利70年を軸に外交を展開する方針だが、過度に歴史問題を利用するなら、改善に動き始めた日中関係にプラスにはならない」と批判的だ。
■安倍談話の牽制が対日強硬発言の目的
李克強氏の発言をもう少し詳しく見てみよう。

記者会見に臨む李克強首相
「今年は戦後七十周年。総理の歴史観をうかがいたい」との朝日新聞記者の質問に対し、次のように答えた訳だ。
―――今年は中国人民抗日戦争及び世界反ファシズム戦争勝利七十周年。中国だけでなく、世界の多くの国がさまざまな記念活動を行なうが、その目的はこの悲惨な歴史の悲劇を銘記することであり、歴史を繰り返させず、第二次大戦の勝利の成果と戦後の国際秩序及び国際法を守り、人類の持久的平和を守ることだ。
―――目下、中日関係には確かに困難な状況だが、その根っ子はやはりあの戦争と歴史に対する認識、終始正確な認識を保持できるか否かにある。正確な歴史観を堅持するというのは、歴史を鏡に未来に向かうということだ。
――― 一国の指導者は、先人が創り出した成果を継承するだけでなく、先人の罪行がもたらした歴史的責任を負わなければならない。当時、日本軍国主義は強引にあの侵略戦争を中国人民にもたらし、我々に巨大な災難を与え、最終的に日本の民衆も被害者になった。
―――今年のような重要な時期において中日関係は試され、またチャンスも与えられる。もし日本の指導者が歴史を直視し、その姿勢を一貫させれば、中日関係の改善と発展には新たな契機が与えられ、自然と中日の経済貿易関係の発展にも良好な状況が作り出されることになる。
日本でこの発言は「今夏に戦後70年の談話を発表する安倍晋三首相の歴史認識をけん制するとともに、過去の植民地支配と侵略を謝罪した戦後50年の村山富市首相談話の踏襲を求める立場を鮮明にした形」(毎日)などと分析されている。
■第一列島線を狙う戦略と李克強のメッセージ
もっとも、こうした対日強硬発言は日本の多くのマスコミや政治家によって受け入れられるわけである。つねづね安倍首相の「歴史観をけん制」し、戦後七十年の首相談話に村山談話の「踏襲を求め」、日中関係の改善を訴える国内勢力のことである。
そうした勢力が存在するからこそ、李克強氏はこのようなメッセージを発し、呼応を求めた訳なのだが、これがいかに危うい状況であるかを説明する前に、一つ書かねばならないことがある。
実は李克強氏はこの会見で、台湾にもメッセージを送っているのだ。台湾のメディアから「両岸の経済協力促進のための方策」を聞かれ、以下のように話している。
―――両岸は一家であり、骨肉の同胞だ。「一つの中国」の原則と台湾独立への反対を堅持し、両岸関係の平和的発展を維持すれば、経済協力に基礎が築かれ、空間が拡大する。
このように、「台湾側が『一つの中国』の原則と台湾独立への反対を堅持することが、台湾と中国との間に平和をもたらす」というのが中国の主張であり、台湾へのメッセージなのだが、これがどれほど恐るべきメッセージであるかがわかるだろうか。
要するに「台湾側が中国は台湾の一部分であると認め、台湾が独立国家であるとの現実を否定しなければ、中国は台湾に対する武力行使も辞さない」と恫喝しているのである。
習政権の「国防費の大幅増」なども、その第一の目的は他ならぬ、台湾への恫喝である。あるいは台湾への武力攻撃と、その際における日米同盟の台湾救援を阻止することにある。
海洋進出で「中華民族の偉大なる復興」を遂げるため、第一列島線を勢力下に置かなければならない同政権にとり、その列島線の要衝である台湾は何としてでも併呑しなければならないわけだ。
■習政権の焦りと日本と台湾へのアメとムチ
そしてそれとともに習政権は、同じく第一列島線を構成する日本をも属国化しようと狙っているわけだが、そうした観点に立てば李克強氏の対日メッセージの意味も鮮明になる。
日本に「あの戦争、歴史に対する認識、終始正確な認識を保持」することが日中関係改善の条件だと言い放った訳だが、これを言い換えるなら「日本が精神的に中国に屈服」するのが関係改善の前提だということになろう。
だから「日中関係の改善」というより「中日主従関係の構築」と言うべきか。「一国の指導者は、先人の罪行がもたらした歴史的責任を負わなければならない」とメッセージは、まさにそれを求めるものである。
それであるのになぜ、国内では安倍首相に謝罪と反省を要求する勢力がはびこり、国民を惑わし続けるのかということだ。
産経新聞は李克強発言を次のように分析する。
―――日中関係に触れた李氏の会見発言は、中国側の戦争被害と同時に、「最終的には日本の民衆も被害者だ」と述べたほか、関係改善が両国の経済貿易の発展に「良い条件」となるとするなど、日本の一般国民や経済界に向け、関係改善に前向きな姿勢も示した。
―――硬軟織り交ぜた中国要人の対日発言は、策定作業が進む日本の戦後70年談話に向けたメッセージであり、習近平政権のある種の“焦り”がそこに垣間見える。
「関係改善に前向きな姿勢も示した」との見方もできるのだろう。しかし習政権が何に対して「焦り」を見せているのかも考えるべきだ。謝罪や反省を拒否しかねない安倍政権の姿勢を受け、日本属国化戦略を遂行できないことに焦っている訳だ。
そして習政権の焦りはまだある。平和統一(協議による台湾併呑)戦略もまた大きく狂わされているからだ。昨年台湾では台中間のサービス貿易協定の調印に反対する「ひまわり学生運動」が起こり、それ以降特に若い世代を中心に、反中感情が高まっている。そしてそのため、来年初めの総統選挙では、「一つの中国」を容認しない民進党が政権を奪還する公算も大である。
だから李克強氏は会見では、日本だけでなく台湾の「一般国民や経済界」に対しても「関係改善に前向きな姿勢」を示しているのだ。
―――精神安定剤的な情報をお伝えしよう。大陸は引き続き台湾企業の合法的な権益を守り、合理的な優遇措置を継続する。我々は若い世代を含む台湾のビジネスマンが大陸で操業するのを歓迎するとともに、両岸交流を推進し、両岸民衆の心理的距離を縮めたいと願っている。
利益誘導と恫喝。つまりアメとムチを手にする習政権の目標はあくまでも、第一列島線を手中にし、東支那海、南支那海、そして西太平洋を中国の内海にすること。
アメを持ちだしたからと言って徒に「関係改善に前向き」などと報じると、日本国民は中国の真意が見えにくくなるのではないか。
日本の国を守るため、このような中国との関係の「改善」は拒否すべきだ。
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台湾チャンネルの関連報道
【台湾チャンネル】第72回、来日五首長が台湾食品を大PR・呂秀蓮元副総統に聞く日台安保[桜H27/3/12]
※24分03秒後より日台を狙う中国軍事費問題
中国で三月十五日に閉幕した全人代について、読売新聞は社説でこう書いた。
―――習近平政権の独善的な強権体質が、より鮮明になったと言えよう。
―――習政権は全人代で、国際社会の様々な懸念を意に介さない態度を取り続けた。国防費の大幅増は、その象徴だろう。香港行政長官の選挙制度に関しても、住民の民主化要求をほとんど無視した。
―――法の支配、民主化、言論の自由といった普遍的な価値に、積極的に共感を示す指導者が現政権に見当たらないのは、残念である。
―――この傾向は、「力による統治」を進める習国家主席個人への権力集中が、共産党、国家、軍で強まったことと無縁ではあるまい。
そして李克強首相が十五日、全人代の閉会後の記者会見で見せた発言にも触れている。
―――日中関係について、「国家指導者は、先人の犯罪行為がもたらした歴史の責任を負うべきだ」と強調した。「日本の指導者が歴史を直視すれば、関係改善の契機になる」とも述べた。
こうした発言も日本に対する「強権体質」の表れということだろう。
歴史問題では中国に側に立つことの多い毎日新聞ですら社説で、「中国は抗日戦争勝利70年を軸に外交を展開する方針だが、過度に歴史問題を利用するなら、改善に動き始めた日中関係にプラスにはならない」と批判的だ。
■安倍談話の牽制が対日強硬発言の目的
李克強氏の発言をもう少し詳しく見てみよう。

記者会見に臨む李克強首相
「今年は戦後七十周年。総理の歴史観をうかがいたい」との朝日新聞記者の質問に対し、次のように答えた訳だ。
―――今年は中国人民抗日戦争及び世界反ファシズム戦争勝利七十周年。中国だけでなく、世界の多くの国がさまざまな記念活動を行なうが、その目的はこの悲惨な歴史の悲劇を銘記することであり、歴史を繰り返させず、第二次大戦の勝利の成果と戦後の国際秩序及び国際法を守り、人類の持久的平和を守ることだ。
―――目下、中日関係には確かに困難な状況だが、その根っ子はやはりあの戦争と歴史に対する認識、終始正確な認識を保持できるか否かにある。正確な歴史観を堅持するというのは、歴史を鏡に未来に向かうということだ。
――― 一国の指導者は、先人が創り出した成果を継承するだけでなく、先人の罪行がもたらした歴史的責任を負わなければならない。当時、日本軍国主義は強引にあの侵略戦争を中国人民にもたらし、我々に巨大な災難を与え、最終的に日本の民衆も被害者になった。
―――今年のような重要な時期において中日関係は試され、またチャンスも与えられる。もし日本の指導者が歴史を直視し、その姿勢を一貫させれば、中日関係の改善と発展には新たな契機が与えられ、自然と中日の経済貿易関係の発展にも良好な状況が作り出されることになる。
日本でこの発言は「今夏に戦後70年の談話を発表する安倍晋三首相の歴史認識をけん制するとともに、過去の植民地支配と侵略を謝罪した戦後50年の村山富市首相談話の踏襲を求める立場を鮮明にした形」(毎日)などと分析されている。
■第一列島線を狙う戦略と李克強のメッセージ
もっとも、こうした対日強硬発言は日本の多くのマスコミや政治家によって受け入れられるわけである。つねづね安倍首相の「歴史観をけん制」し、戦後七十年の首相談話に村山談話の「踏襲を求め」、日中関係の改善を訴える国内勢力のことである。
そうした勢力が存在するからこそ、李克強氏はこのようなメッセージを発し、呼応を求めた訳なのだが、これがいかに危うい状況であるかを説明する前に、一つ書かねばならないことがある。
実は李克強氏はこの会見で、台湾にもメッセージを送っているのだ。台湾のメディアから「両岸の経済協力促進のための方策」を聞かれ、以下のように話している。
―――両岸は一家であり、骨肉の同胞だ。「一つの中国」の原則と台湾独立への反対を堅持し、両岸関係の平和的発展を維持すれば、経済協力に基礎が築かれ、空間が拡大する。
このように、「台湾側が『一つの中国』の原則と台湾独立への反対を堅持することが、台湾と中国との間に平和をもたらす」というのが中国の主張であり、台湾へのメッセージなのだが、これがどれほど恐るべきメッセージであるかがわかるだろうか。
要するに「台湾側が中国は台湾の一部分であると認め、台湾が独立国家であるとの現実を否定しなければ、中国は台湾に対する武力行使も辞さない」と恫喝しているのである。
習政権の「国防費の大幅増」なども、その第一の目的は他ならぬ、台湾への恫喝である。あるいは台湾への武力攻撃と、その際における日米同盟の台湾救援を阻止することにある。
海洋進出で「中華民族の偉大なる復興」を遂げるため、第一列島線を勢力下に置かなければならない同政権にとり、その列島線の要衝である台湾は何としてでも併呑しなければならないわけだ。
■習政権の焦りと日本と台湾へのアメとムチ
そしてそれとともに習政権は、同じく第一列島線を構成する日本をも属国化しようと狙っているわけだが、そうした観点に立てば李克強氏の対日メッセージの意味も鮮明になる。
日本に「あの戦争、歴史に対する認識、終始正確な認識を保持」することが日中関係改善の条件だと言い放った訳だが、これを言い換えるなら「日本が精神的に中国に屈服」するのが関係改善の前提だということになろう。
だから「日中関係の改善」というより「中日主従関係の構築」と言うべきか。「一国の指導者は、先人の罪行がもたらした歴史的責任を負わなければならない」とメッセージは、まさにそれを求めるものである。
それであるのになぜ、国内では安倍首相に謝罪と反省を要求する勢力がはびこり、国民を惑わし続けるのかということだ。
産経新聞は李克強発言を次のように分析する。
―――日中関係に触れた李氏の会見発言は、中国側の戦争被害と同時に、「最終的には日本の民衆も被害者だ」と述べたほか、関係改善が両国の経済貿易の発展に「良い条件」となるとするなど、日本の一般国民や経済界に向け、関係改善に前向きな姿勢も示した。
―――硬軟織り交ぜた中国要人の対日発言は、策定作業が進む日本の戦後70年談話に向けたメッセージであり、習近平政権のある種の“焦り”がそこに垣間見える。
「関係改善に前向きな姿勢も示した」との見方もできるのだろう。しかし習政権が何に対して「焦り」を見せているのかも考えるべきだ。謝罪や反省を拒否しかねない安倍政権の姿勢を受け、日本属国化戦略を遂行できないことに焦っている訳だ。
そして習政権の焦りはまだある。平和統一(協議による台湾併呑)戦略もまた大きく狂わされているからだ。昨年台湾では台中間のサービス貿易協定の調印に反対する「ひまわり学生運動」が起こり、それ以降特に若い世代を中心に、反中感情が高まっている。そしてそのため、来年初めの総統選挙では、「一つの中国」を容認しない民進党が政権を奪還する公算も大である。
だから李克強氏は会見では、日本だけでなく台湾の「一般国民や経済界」に対しても「関係改善に前向きな姿勢」を示しているのだ。
―――精神安定剤的な情報をお伝えしよう。大陸は引き続き台湾企業の合法的な権益を守り、合理的な優遇措置を継続する。我々は若い世代を含む台湾のビジネスマンが大陸で操業するのを歓迎するとともに、両岸交流を推進し、両岸民衆の心理的距離を縮めたいと願っている。
利益誘導と恫喝。つまりアメとムチを手にする習政権の目標はあくまでも、第一列島線を手中にし、東支那海、南支那海、そして西太平洋を中国の内海にすること。
アメを持ちだしたからと言って徒に「関係改善に前向き」などと報じると、日本国民は中国の真意が見えにくくなるのではないか。
日本の国を守るため、このような中国との関係の「改善」は拒否すべきだ。
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