台湾を狙う中国「国防費」10%増―日本メディアが報じない「中華民族復興」戦略の実態
2015/03/08/Sun
■中国軍拡の標的は台湾―習近平の「講話」が示す侵略の意志
中国政府が三月五日に明らかにした今年の「国防費」の予算案が約十七兆円にも及んだと大きく報じられているが、これを「国防費」と呼んでいいかどうかが問題だ。
同政府の予算案報告によれば国防予算は、「国家の主権、安全、領土保全を維持する」との目的で編成されたというが、いったいどの国が中国を攻撃しようとしているというのか。
その前日の四日、習近平主席は「重要講話」を行い、次のように述べている。
―――台独の分裂勢力及びその活動は、国家の主権と領土保全に損害を与え、両岸民衆、社会の対立を煽り、両岸同胞の精神的紐帯を切断しようと企図しているが、これは両岸関係の平和的発展に対する最大の障害であり、台湾海峡の平和と安定に対する最大の脅威であるため、断固反対しなければならない。
―――両岸同胞は台独勢力に対し、高度の警戒を維持しなければならない。

3月4日、「台湾独立勢力こそ最大の脅威」と指摘した習近平主席
以上を見れば明らかなように中国政府は、中国統一に応じようとしない台湾国内の勢力こそが中国の主権と領土保全を脅かしていると位置付けている。
つまり、日本のメディアはなぜかあまり触れないが(いつもながら台湾問題には触れたくないか)、あの国の軍備拡張は統一促進のための台湾恫喝、あるいは台湾攻撃及び米軍(日米同盟)の来援の阻止を主要目的にしているということだ。
東支那海、南支那海、そして第二列島線に至る西太平洋の制海権を獲得するため、台湾だけは何としても制したい中国。そうした軍事戦略が持たれるのは当然のことである。
■台湾・国民党政権は「奴隷の平和」に甘んじるか
この日、習近平は次のようにも語った。
――大陸は九二年コンセンサスの堅持を台湾の当局や各政党との交流の基礎、条件として来た。その核心は大陸と台湾は共に「一つの中国」に属するということだ。もし両岸の共同の政治的基礎は破壊され、相互信頼が回復されなければ、両岸関係は再び不安定になるだろう。
「九二年コンセンサス」とは、九二年の台中協議で達成した合意で、その内容は「双方は『一つの中国』を堅持する。その意味はそれぞれが解釈する」とされる。要するに「一つの中国」の「中国」に関し、台湾側は中華民国である解釈し、中国側は中華人民共和国であると解釈することで合意したというわけだ。
以上は国民党の主張であるが、中華民国の存在を認めない中国は当初、この合意の存在を否定していた。そもそもこうした合意は「一つの中国」の建前を守りたい国民党の作り話なのだから、当然のことである。
ところが中国は〇五年に国共合作を本格化させて以降、「『一つの中国』を堅持する」とする合意はあったとの立場に切り替え、その堅持を台中交流(国共交流)の前提条件して来た。
このようにあくまでも中華民国を認めない中国だが、しかし国民党政権はそのような相手との関係改善を推し進めているのである。馬英九総統が中国の軍拡をよそに「台湾海峡は従来なく平和な状況」と繰り返すのを見ても、その「関係改善」なるもの実態がわかるだろう。同政権は事実上、「奴隷の平和」に甘んじようとしている。
台湾人のためなどに、中国人同士で血を流したくないのだろう。
■取込みターゲットを国民党から台湾民衆へ
そして中国はその傀儡政権を操縦し、統一工作を加速させてきたわけだが、しかし台湾国民は国民党政権の傀儡ぶりに危機感を募らせ、その結果、昨年十一月に行われた台湾統一地方選挙で同党は大敗を喫し、来年の総統選挙で民進党が政権を獲得する公算が強まった。
民進党は「九二年コンセンサス」の存在を認めていない。そこで習近平はそれの堅持を「台湾の当局や各政党との交流の基礎、条件として来た」と強調したのだ。言わば民進党やその支持層への恫喝である。
中国では一月三十一日、対台湾工作会議が開催され、「九二年コンセンサスと反台独の堅持を共通の政治基礎とする」ことが新たに打ち出されている。
なおそこでは、国民党・馬英九政権に代わり「三中一青」、つまり台湾の中小企業、中流・労働者階級、中南部住民(民進党支持者が多い)、そして青年層を交流対象(取り込みターゲット)と定められた。
そしてその上で、中共の政権獲得から百年目に当たる二〇四九年に「中華民族の偉大なる復興」を成し遂げるとの戦略に即した対台湾工作を計画する方針が強調された。言うまでもなく台湾併呑は、「中華民族の偉大なる復興」という国家目標の重要な一環であり、「復興」達成の前提条件とも位置付けられている。
■台湾が抵抗してもしなくても中国の軍拡は止まらない
果たして台湾の「三中一青」は国民党と同様、中国の利益誘導で「奴隷の平和」を受け入れることになるのだろうか。あるいは民進党はどうか。そうした可能性が低いことからこそ、習近平は今回のような恫喝に出た訳である。
しかし焦躁するのは習近平だけではない。かつての民進党政権時代のように「両岸関係が再び不安定になる」ことを恐れる米国、そして日本も同様だ。中国の軍備拡張とともに、台湾人が対中関係を拗らせることをも警戒している。たとえば産経新聞は台湾統一地方選挙の直後、社説でこう訴え、台湾を(民進党を)牽制している。
「両岸関係の安定は、微妙なバランスの上に成り立つ。台湾が中国に寄りすぎれば中国の統一攻勢に引き込まれ、独立に傾けば緊張が高まることにつながる。(中略)台湾の繁栄と地域の安定には経済、安全保障の両面で均衡が不可欠だ。日米を含む国際社会の現実的な利益もまさにそこにある」と。
しかし「緊張」を高めるなとは言うものの、そのためには習近平の言う如く、台湾側が「九二年コンセンサス」(一つの中国の原則)を受け入れるしかないのである。まさか産経は台湾に「中国の統一攻勢」を受容せよと言っているのか。
台湾側が「奴隷の平和」を拒否してもしなくても、中国の「国防費」の成長は止まらない。日本を含むアジアの海域が中国の勢力下に転落し、「中華民族の偉大なる復興」の夢が実現するまでは。
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中国政府が三月五日に明らかにした今年の「国防費」の予算案が約十七兆円にも及んだと大きく報じられているが、これを「国防費」と呼んでいいかどうかが問題だ。
同政府の予算案報告によれば国防予算は、「国家の主権、安全、領土保全を維持する」との目的で編成されたというが、いったいどの国が中国を攻撃しようとしているというのか。
その前日の四日、習近平主席は「重要講話」を行い、次のように述べている。
―――台独の分裂勢力及びその活動は、国家の主権と領土保全に損害を与え、両岸民衆、社会の対立を煽り、両岸同胞の精神的紐帯を切断しようと企図しているが、これは両岸関係の平和的発展に対する最大の障害であり、台湾海峡の平和と安定に対する最大の脅威であるため、断固反対しなければならない。
―――両岸同胞は台独勢力に対し、高度の警戒を維持しなければならない。

3月4日、「台湾独立勢力こそ最大の脅威」と指摘した習近平主席
以上を見れば明らかなように中国政府は、中国統一に応じようとしない台湾国内の勢力こそが中国の主権と領土保全を脅かしていると位置付けている。
つまり、日本のメディアはなぜかあまり触れないが(いつもながら台湾問題には触れたくないか)、あの国の軍備拡張は統一促進のための台湾恫喝、あるいは台湾攻撃及び米軍(日米同盟)の来援の阻止を主要目的にしているということだ。
東支那海、南支那海、そして第二列島線に至る西太平洋の制海権を獲得するため、台湾だけは何としても制したい中国。そうした軍事戦略が持たれるのは当然のことである。
■台湾・国民党政権は「奴隷の平和」に甘んじるか
この日、習近平は次のようにも語った。
――大陸は九二年コンセンサスの堅持を台湾の当局や各政党との交流の基礎、条件として来た。その核心は大陸と台湾は共に「一つの中国」に属するということだ。もし両岸の共同の政治的基礎は破壊され、相互信頼が回復されなければ、両岸関係は再び不安定になるだろう。
「九二年コンセンサス」とは、九二年の台中協議で達成した合意で、その内容は「双方は『一つの中国』を堅持する。その意味はそれぞれが解釈する」とされる。要するに「一つの中国」の「中国」に関し、台湾側は中華民国である解釈し、中国側は中華人民共和国であると解釈することで合意したというわけだ。
以上は国民党の主張であるが、中華民国の存在を認めない中国は当初、この合意の存在を否定していた。そもそもこうした合意は「一つの中国」の建前を守りたい国民党の作り話なのだから、当然のことである。
ところが中国は〇五年に国共合作を本格化させて以降、「『一つの中国』を堅持する」とする合意はあったとの立場に切り替え、その堅持を台中交流(国共交流)の前提条件して来た。
このようにあくまでも中華民国を認めない中国だが、しかし国民党政権はそのような相手との関係改善を推し進めているのである。馬英九総統が中国の軍拡をよそに「台湾海峡は従来なく平和な状況」と繰り返すのを見ても、その「関係改善」なるもの実態がわかるだろう。同政権は事実上、「奴隷の平和」に甘んじようとしている。
台湾人のためなどに、中国人同士で血を流したくないのだろう。
■取込みターゲットを国民党から台湾民衆へ
そして中国はその傀儡政権を操縦し、統一工作を加速させてきたわけだが、しかし台湾国民は国民党政権の傀儡ぶりに危機感を募らせ、その結果、昨年十一月に行われた台湾統一地方選挙で同党は大敗を喫し、来年の総統選挙で民進党が政権を獲得する公算が強まった。
民進党は「九二年コンセンサス」の存在を認めていない。そこで習近平はそれの堅持を「台湾の当局や各政党との交流の基礎、条件として来た」と強調したのだ。言わば民進党やその支持層への恫喝である。
中国では一月三十一日、対台湾工作会議が開催され、「九二年コンセンサスと反台独の堅持を共通の政治基礎とする」ことが新たに打ち出されている。
なおそこでは、国民党・馬英九政権に代わり「三中一青」、つまり台湾の中小企業、中流・労働者階級、中南部住民(民進党支持者が多い)、そして青年層を交流対象(取り込みターゲット)と定められた。
そしてその上で、中共の政権獲得から百年目に当たる二〇四九年に「中華民族の偉大なる復興」を成し遂げるとの戦略に即した対台湾工作を計画する方針が強調された。言うまでもなく台湾併呑は、「中華民族の偉大なる復興」という国家目標の重要な一環であり、「復興」達成の前提条件とも位置付けられている。
■台湾が抵抗してもしなくても中国の軍拡は止まらない
果たして台湾の「三中一青」は国民党と同様、中国の利益誘導で「奴隷の平和」を受け入れることになるのだろうか。あるいは民進党はどうか。そうした可能性が低いことからこそ、習近平は今回のような恫喝に出た訳である。
しかし焦躁するのは習近平だけではない。かつての民進党政権時代のように「両岸関係が再び不安定になる」ことを恐れる米国、そして日本も同様だ。中国の軍備拡張とともに、台湾人が対中関係を拗らせることをも警戒している。たとえば産経新聞は台湾統一地方選挙の直後、社説でこう訴え、台湾を(民進党を)牽制している。
「両岸関係の安定は、微妙なバランスの上に成り立つ。台湾が中国に寄りすぎれば中国の統一攻勢に引き込まれ、独立に傾けば緊張が高まることにつながる。(中略)台湾の繁栄と地域の安定には経済、安全保障の両面で均衡が不可欠だ。日米を含む国際社会の現実的な利益もまさにそこにある」と。
しかし「緊張」を高めるなとは言うものの、そのためには習近平の言う如く、台湾側が「九二年コンセンサス」(一つの中国の原則)を受け入れるしかないのである。まさか産経は台湾に「中国の統一攻勢」を受容せよと言っているのか。
台湾側が「奴隷の平和」を拒否してもしなくても、中国の「国防費」の成長は止まらない。日本を含むアジアの海域が中国の勢力下に転落し、「中華民族の偉大なる復興」の夢が実現するまでは。
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