尖閣問題「棚上げ」合意は事実かー英国機密文書で勝ち誇る中国だが
2015/03/06/Fri
■親中派には朗報―鈴木首相の発言記録
朝日新聞は一月一日、次のように報じた。
―――沖縄県の尖閣諸島の領有権をめぐり、1982年に鈴木善幸首相(当時)が、来日したサッチャー英首相(同)との首脳会談で、中国との間で問題を実質的に棚上げしている、という趣旨の説明をしていたことがわかった。両首脳のやりとりを記録した文書を、英公文書館が12月30日付で機密解除した。
―――文書によると、鈴木氏は尖閣問題について、「(中国の鄧小平氏と会談した際に、日中)両国政府は大きな共通利益に基づいて協力し、細部の違いは脇に置くべきだとの結論に容易に達した」と説明。「具体的に問題化することなしに現状維持で合意し、問題は実質的に棚上げされた」と語ったという。
従来日本政府は「棚上げの合意はなかった」と主張するのに対し、中国政府は、「あった」と反論している。昨年十一月の安倍晋三首相と習近平主席との日中首脳会談前には、日本側が「あった」と認めることを会談実現の前提条件とまでしていたほどだ。
日本国内でも対中関係の改善を望む政界、メディアなどの親中勢力が、同様の要求を政府に突き付け続けてきたわけだが、中国政府やこうした勢力にとって、この報道は一つの朗報となっている。
共同通信(十二月三十一日)も「鈴木氏の発言は、日中の専門家らが指摘する『暗黙の了解』の存在を裏付けている」(日本政府は暗黙の了解も否定している)と指摘。「尖閣をめぐる日中の軍事衝突の懸念が拭えぬ中、新たな暗黙の了解に基づく事実上の『再棚上げ』が危機回避の唯一の道と説く専門家は多い。両国指導者は『次世代の知恵』の発揮を迫られている。」などと、嬉々として(?)報じた。

鈴木善幸・鄧小平会談で尖閣問題の「棚上げ」は合意されたのか
■それでも外務省は「棚上げ」合意を否定
朝日の取材に対し中国外交部報道官弁公室は十二月三十一日、次のようにコメントしている。
「報道に注意している。釣魚島(尖閣諸島の中国名)問題での中国の立場は明確だ。中日の国交正常化と平和友好条約締結に際し、両国の先代の指導者たちは大局に目を向け、この問題を適切に処理することについて、重要な了解と共通認識に達した」
一方同日、日本の外務省幹部はこう述べた。
「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であり、中国側と『棚上げ』で合意したことなどない。そもそも、棚上げすべき領土問題は存在しない」
果たして棚上げ合意はあったのか、なかったのか。
■証拠として注目される鄧小平の会見録音
中国外交部が強調したように「中日の国交正常化と平和友好条約締結に際し、両国の先代の指導者たちは重要な了解と共通認識に達した」というのが中国政府の主張である。
一九七二年の田中角栄首相と周恩来首相との日中国交正常化に向けた会談と、一九七八年の鈴木善幸衆議院議員(後の首相)と鄧小平副首相との日中平和友好条約の締結に向けた会談で、それが達成されたというのだ。
そして今回の英国の機密文書は、後者の事実を裏付けるものとされたわけである。
そしてその後さらに、その証拠立てとして注目されたのが、二月十日に日本記者クラブが公表した鄧小平氏の記者会見の録音だ。
会見は同クラブが日中平和友好条約締結直後の一九七八年十月二十五日に開催したもの。日本の記者から「尖閣諸島の問題についてどうお考えになるか」と質問された際の鄧小平氏の発言もまた、合意がなされた証拠としてかねてから引用されてきている。
そこでその発言部分を、同クラブ公表の会見録から転載しよう。
■安倍首相に勝ち誇って見せる中国だが

都内で記者会見を行った鄧小平。その発言も「棚上げ合意」の証拠とされるが
―――中日国交正常化の際も、双方はこの問題に触れないということを約束しました。今回、中日平和友好条約を交渉した際もやはり同じく、この問題に触れないということで一致しました。
―――中国人の知恵からして、こういう方法しか考え出せません。というのは、その問題に触れますと、それははっきり言えなくなってしまいます。そこで、確かに一部のものはこういう問題を借りて、中日両国の関係に水を差したがっております。ですから、両国政府が交渉する際、この問題を避けるということが良いと思います。
―――こういう問題は、一時棚上げにしてもかまわないと思います。10年棚上げにしてもかまいません。 我々の、この世代の人間は知恵が足りません。この問題は話がまとまりません。次の世代は、きっと我々よりは賢くなるでしょう。そのときは必ずや、お互いに皆が受け入れられる良い方法を見つけることができるでしょう。
たしかにこのように鄧小平氏は、日中双方が尖閣問題に「触れないということで一致した」と話している。
この録音の公開を受け、中共機関紙人民日報(電子版)は三月一日、次のように論評した。
―――中日双方は果たして主権棚上げで合意しているのか。安倍政権は否定するが、中国政府はそれには根拠があると言う。
―――鄧小平は会見で、一九七二年の国交正常化の際に主権棚上げの原則を確定したと日本社会に明確に述べている。そしてその六年後の一九七八年、彼自身が日中平和友好条約の調印に際し、当時の大平正芳首相(※鈴木善幸首相の誤り)との間で再度棚上げの原則で合意したのだ。
―――鄧小平の談話の録音は今も残っている。安倍首相はこれを聞き、動揺しないでいられるだろうか。
このように、日本側に勝ち誇って見せる中国だが、実際にこの国は、故意にある事実を隠蔽している。
■中国のウソー周恩来、鄧小平発言の真の意味とは
つまり、「棚上げの原則」の合意があったと主張するが、本当に日中外交関係を律する「原則」なるものが出来上がったのかということだ。
ここで今一度、鄧小平氏の次の部分の発言を検証しよう。
「中日国交正常化の際も、双方はこの問題に触れないということを約束しました。今回、中日平和友好条約を交渉した際もやはり同じく、この問題に触れないということで一致しました」
これを読めばわかるはずだ。日中双方が合意したのはわずかに、「国交正常化」の実現や「平和友好条約」の締結に際しては尖閣問題に触れない、ということなのである。
実際に前者の場合、両国間でのやり取りは次の通り。これ以上のものはなかったのである(中国側の記録でもこれ以上はない)。
田中首相―――「尖閣列島をどう思うか」
周首相―――「今回は話したくない。今この話をするのはよくない。石油が出るから問題となった。石油が出なければ米国も台湾も問題にしない」
このように中国側は「今回は話したくない」と言って話を打ち切ったのだ。この問題で国交正常化を妨げたくないとの考えからである。

田中角栄と会見した周恩来は「尖閣の話はしたくない」と言っ
ただけだった
■鈴木発言は日本政府の立場に抵触していない
後者にしても、それとまったく同じである。事実、鄧小平氏自身も「(国交正常化の時と)やはり同じく、この問題に触れないということで一致しました」と語っているではないか。
このように、棚上げが日中間における「原則」になったわけではなかったのだ。
したがって鈴木氏が鄧小平氏と会見した際、「具体的に問題化することなしに現状維持で合意し、問題は実質的に棚上げされた」というのも、あくまで日中平和友好条約の締結交渉の上での「合意」に過ぎない。そう見るのが妥当ではないのか。
少なくとも鈴木氏の発言は、「中国側と『棚上げ』で合意したことなどない。そもそも、棚上げすべき領土問題は存在しない」とする政府の立場に抵触していない。
鈴木氏の所謂「棚上げ」とは、日本の尖閣領有という「現状」を「問題化しない」という意味に過ぎず、中国側が言う「主権争議の棚上げ」(日本の「領土問題は存在しない」との主張の取り下げ)とは明らかに違うのだ。
朝日に対して外務省幹部が「中国側と『棚上げ』で合意したことなどない」と言うのは、事実なのである。
■鄧小平発言の謀略を見抜けない日本のメディア
実はその鈴木氏と鄧小平氏の会談の際、鄧小平氏は尖閣問題の「棚上げ」とともに、尖閣海域の「共同開発」も提案していた。
実はこの「争議棚上げ、共同開発」こそ、領土奪取を狙う中国の謀略戦略である。あの国の外交部によればその謀略プロセスは、「領有権争議で徹底解決ができない場合、まずは主権帰属問題を語らず、争議を棚上げにする」「争議のある領土で共同開発を行う」「共同開発の目的は、協力を通じた相互理解の増進にあり、主権問題の最終的解決のための状況を作り出す」というものだ。
鄧小平氏が記者会見で、「十年棚上げにしてもかまわない。我々の世代は知恵が足りない。次の世代はお互いに良い方法を見つけることができる」と述べたのは、実はこうした「共同開発」に、日本側を引きこむためのアピールだったのだ。
日本政府が中国の「棚上げ」要求に抵抗し続ける気持ちもよく分かろう。
それであるに関わらず、上記の通り共同は、こうした鄧小平発言を引用し、「両国指導者は『次世代の知恵』の発揮を迫られている」などとして、日本の「指導者」(安倍首相)に「争議棚上げ」を訴えたのだから、日本は実に危うい状況だ。
中国及び日本国内の親中勢力の巧妙な宣伝に騙されるなと訴えたい。
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朝日新聞は一月一日、次のように報じた。
―――沖縄県の尖閣諸島の領有権をめぐり、1982年に鈴木善幸首相(当時)が、来日したサッチャー英首相(同)との首脳会談で、中国との間で問題を実質的に棚上げしている、という趣旨の説明をしていたことがわかった。両首脳のやりとりを記録した文書を、英公文書館が12月30日付で機密解除した。
―――文書によると、鈴木氏は尖閣問題について、「(中国の鄧小平氏と会談した際に、日中)両国政府は大きな共通利益に基づいて協力し、細部の違いは脇に置くべきだとの結論に容易に達した」と説明。「具体的に問題化することなしに現状維持で合意し、問題は実質的に棚上げされた」と語ったという。
従来日本政府は「棚上げの合意はなかった」と主張するのに対し、中国政府は、「あった」と反論している。昨年十一月の安倍晋三首相と習近平主席との日中首脳会談前には、日本側が「あった」と認めることを会談実現の前提条件とまでしていたほどだ。
日本国内でも対中関係の改善を望む政界、メディアなどの親中勢力が、同様の要求を政府に突き付け続けてきたわけだが、中国政府やこうした勢力にとって、この報道は一つの朗報となっている。
共同通信(十二月三十一日)も「鈴木氏の発言は、日中の専門家らが指摘する『暗黙の了解』の存在を裏付けている」(日本政府は暗黙の了解も否定している)と指摘。「尖閣をめぐる日中の軍事衝突の懸念が拭えぬ中、新たな暗黙の了解に基づく事実上の『再棚上げ』が危機回避の唯一の道と説く専門家は多い。両国指導者は『次世代の知恵』の発揮を迫られている。」などと、嬉々として(?)報じた。

鈴木善幸・鄧小平会談で尖閣問題の「棚上げ」は合意されたのか
■それでも外務省は「棚上げ」合意を否定
朝日の取材に対し中国外交部報道官弁公室は十二月三十一日、次のようにコメントしている。
「報道に注意している。釣魚島(尖閣諸島の中国名)問題での中国の立場は明確だ。中日の国交正常化と平和友好条約締結に際し、両国の先代の指導者たちは大局に目を向け、この問題を適切に処理することについて、重要な了解と共通認識に達した」
一方同日、日本の外務省幹部はこう述べた。
「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であり、中国側と『棚上げ』で合意したことなどない。そもそも、棚上げすべき領土問題は存在しない」
果たして棚上げ合意はあったのか、なかったのか。
■証拠として注目される鄧小平の会見録音
中国外交部が強調したように「中日の国交正常化と平和友好条約締結に際し、両国の先代の指導者たちは重要な了解と共通認識に達した」というのが中国政府の主張である。
一九七二年の田中角栄首相と周恩来首相との日中国交正常化に向けた会談と、一九七八年の鈴木善幸衆議院議員(後の首相)と鄧小平副首相との日中平和友好条約の締結に向けた会談で、それが達成されたというのだ。
そして今回の英国の機密文書は、後者の事実を裏付けるものとされたわけである。
そしてその後さらに、その証拠立てとして注目されたのが、二月十日に日本記者クラブが公表した鄧小平氏の記者会見の録音だ。
会見は同クラブが日中平和友好条約締結直後の一九七八年十月二十五日に開催したもの。日本の記者から「尖閣諸島の問題についてどうお考えになるか」と質問された際の鄧小平氏の発言もまた、合意がなされた証拠としてかねてから引用されてきている。
そこでその発言部分を、同クラブ公表の会見録から転載しよう。
■安倍首相に勝ち誇って見せる中国だが

都内で記者会見を行った鄧小平。その発言も「棚上げ合意」の証拠とされるが
―――中日国交正常化の際も、双方はこの問題に触れないということを約束しました。今回、中日平和友好条約を交渉した際もやはり同じく、この問題に触れないということで一致しました。
―――中国人の知恵からして、こういう方法しか考え出せません。というのは、その問題に触れますと、それははっきり言えなくなってしまいます。そこで、確かに一部のものはこういう問題を借りて、中日両国の関係に水を差したがっております。ですから、両国政府が交渉する際、この問題を避けるということが良いと思います。
―――こういう問題は、一時棚上げにしてもかまわないと思います。10年棚上げにしてもかまいません。 我々の、この世代の人間は知恵が足りません。この問題は話がまとまりません。次の世代は、きっと我々よりは賢くなるでしょう。そのときは必ずや、お互いに皆が受け入れられる良い方法を見つけることができるでしょう。
たしかにこのように鄧小平氏は、日中双方が尖閣問題に「触れないということで一致した」と話している。
この録音の公開を受け、中共機関紙人民日報(電子版)は三月一日、次のように論評した。
―――中日双方は果たして主権棚上げで合意しているのか。安倍政権は否定するが、中国政府はそれには根拠があると言う。
―――鄧小平は会見で、一九七二年の国交正常化の際に主権棚上げの原則を確定したと日本社会に明確に述べている。そしてその六年後の一九七八年、彼自身が日中平和友好条約の調印に際し、当時の大平正芳首相(※鈴木善幸首相の誤り)との間で再度棚上げの原則で合意したのだ。
―――鄧小平の談話の録音は今も残っている。安倍首相はこれを聞き、動揺しないでいられるだろうか。
このように、日本側に勝ち誇って見せる中国だが、実際にこの国は、故意にある事実を隠蔽している。
■中国のウソー周恩来、鄧小平発言の真の意味とは
つまり、「棚上げの原則」の合意があったと主張するが、本当に日中外交関係を律する「原則」なるものが出来上がったのかということだ。
ここで今一度、鄧小平氏の次の部分の発言を検証しよう。
「中日国交正常化の際も、双方はこの問題に触れないということを約束しました。今回、中日平和友好条約を交渉した際もやはり同じく、この問題に触れないということで一致しました」
これを読めばわかるはずだ。日中双方が合意したのはわずかに、「国交正常化」の実現や「平和友好条約」の締結に際しては尖閣問題に触れない、ということなのである。
実際に前者の場合、両国間でのやり取りは次の通り。これ以上のものはなかったのである(中国側の記録でもこれ以上はない)。
田中首相―――「尖閣列島をどう思うか」
周首相―――「今回は話したくない。今この話をするのはよくない。石油が出るから問題となった。石油が出なければ米国も台湾も問題にしない」
このように中国側は「今回は話したくない」と言って話を打ち切ったのだ。この問題で国交正常化を妨げたくないとの考えからである。

田中角栄と会見した周恩来は「尖閣の話はしたくない」と言っ
ただけだった
■鈴木発言は日本政府の立場に抵触していない
後者にしても、それとまったく同じである。事実、鄧小平氏自身も「(国交正常化の時と)やはり同じく、この問題に触れないということで一致しました」と語っているではないか。
このように、棚上げが日中間における「原則」になったわけではなかったのだ。
したがって鈴木氏が鄧小平氏と会見した際、「具体的に問題化することなしに現状維持で合意し、問題は実質的に棚上げされた」というのも、あくまで日中平和友好条約の締結交渉の上での「合意」に過ぎない。そう見るのが妥当ではないのか。
少なくとも鈴木氏の発言は、「中国側と『棚上げ』で合意したことなどない。そもそも、棚上げすべき領土問題は存在しない」とする政府の立場に抵触していない。
鈴木氏の所謂「棚上げ」とは、日本の尖閣領有という「現状」を「問題化しない」という意味に過ぎず、中国側が言う「主権争議の棚上げ」(日本の「領土問題は存在しない」との主張の取り下げ)とは明らかに違うのだ。
朝日に対して外務省幹部が「中国側と『棚上げ』で合意したことなどない」と言うのは、事実なのである。
■鄧小平発言の謀略を見抜けない日本のメディア
実はその鈴木氏と鄧小平氏の会談の際、鄧小平氏は尖閣問題の「棚上げ」とともに、尖閣海域の「共同開発」も提案していた。
実はこの「争議棚上げ、共同開発」こそ、領土奪取を狙う中国の謀略戦略である。あの国の外交部によればその謀略プロセスは、「領有権争議で徹底解決ができない場合、まずは主権帰属問題を語らず、争議を棚上げにする」「争議のある領土で共同開発を行う」「共同開発の目的は、協力を通じた相互理解の増進にあり、主権問題の最終的解決のための状況を作り出す」というものだ。
鄧小平氏が記者会見で、「十年棚上げにしてもかまわない。我々の世代は知恵が足りない。次の世代はお互いに良い方法を見つけることができる」と述べたのは、実はこうした「共同開発」に、日本側を引きこむためのアピールだったのだ。
日本政府が中国の「棚上げ」要求に抵抗し続ける気持ちもよく分かろう。
それであるに関わらず、上記の通り共同は、こうした鄧小平発言を引用し、「両国指導者は『次世代の知恵』の発揮を迫られている」などとして、日本の「指導者」(安倍首相)に「争議棚上げ」を訴えたのだから、日本は実に危うい状況だ。
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