日経1面コラム「春秋」に中国加担の疑い濃厚―不可解な菅義偉長官の正論批判
2013/06/11/Tue
■「中国に危機感を」などと呼びかけながら
日本経済新聞の一面コラム「春秋」の六月九日のタイトルは「中国の宣伝工作に危機感を」。あの国のプロパガンダ工作の警戒を求めるのは結構なことに見えるが、実はこのコラムこそすでに「中国の宣伝工作」にやられていると疑いたくなるような不自然、不可解な内容である。
検証してみよう。
「尖閣問題をめぐり中国は日本に対する揺さぶりを続けている。とりわけ巧妙で注意が必要なのは、宣伝攻勢だ。日本は的確に対処していかなくてはならない」と前置きしながら、次のように論じるのだ。
―――「(中国の)東北(地方)や台湾などの島々のように、日本が中国から盗み取った中国の領土は中国に返されなくてはならない、とカイロ宣言は定めている」
―――中国の李克強首相は先月下旬、ドイツのポツダムでこう語った。尖閣をめぐる日中対立が続いているだけに、尖閣も中国の領土であり日本は返還すべきだ、との主張だと受け止められた。
ドイツで言われない日本批判(プロパガンダ)を国際社会に向け、大々的に発信した李克強首相
―――だとすれば受け入れがたい発言で、菅義偉官房長官は「あまりに歴史を無視した発言」と反発した。ただ、紹介した発言を読めばわかるように、李首相は尖閣を持ち出していたわけではない。さらに言えば、李首相は歴史的な事実を指摘したにすぎない。
―――「日本は過去の歴史を否定しようとしている」。こんな中国の宣伝に利用されかねない危うさが、菅官房長官の反応にはある。巧みな挑発に乗せられた印象だ。
こうしたことを書いた上で、最後にもう一度「対外政策に限らず、中国共産党は宣伝を重視してきた。投入してきた人材や資金、蓄積してきたノウハウは、民主国家の政府や政党とは桁違いだ。それをわきまえて向き合っていく必要がある」などと警鐘を打ち鳴らすのだが、この一文で問題にすべき箇所は二つある。
■明らかに李首相は「尖閣」の話をしているのに
まず第一点目は「ただ、紹介した発言を読めばわかるように、李首相は尖閣を持ち出していたわけではない」というくだり。
たしかに「(中国の)東北(地方)や台湾などの島々のように、日本が中国から盗み取った中国の領土は中国に返されなくてはならない、とカイロ宣言は定めている」との発言に「尖閣」の「尖」の字(「釣魚島」の「釣」の字)もない。
やはり「尖閣」が持ち出されているとみるのが常識だろう。
李克強氏が言う「台湾などの島々」に中国が「台湾の付属島嶼」と位置付ける尖閣を含めていないわけがない。
また、李克強氏の発言の翌五月二十七日、中共機関紙人民日報系の環球時報や国営新華社が発言の内容、狙いを強調すべく配信した論評を見ても、それは明らかである。
論評は「第二次大戦史への評価を覆すのは日本が見せる最も愚かな行為だ。南京大虐殺を否定し、日本軍による韓国、中国の慰安婦に対する蹂躙は国際世論の同情も支持も得られまい。不断に靖国神社を参拝する滑稽さは、日本の政界がおかしな力と感情に支配されていることを世界に知らせるだけだ」と論じた上で、「釣魚島問題は表面上は無人島を巡る争いにしか見えないが、これもまた同様に日本の第二次大戦の結果への態度を反映したものなのだ」とはっきり強調しているのである。
中国が尖閣問題を巡る中国の宣伝工作上、盛んにカイロ宣言、ポツダム宣言を領有権の法的根拠として持ち出していることを日経コラムは知らないのか。それとも何らかの目的で、知らないふりをしているのか。
■管氏の発言はコラムの指摘と同じという矛盾
ちなみに日経コラムが批判するところの菅氏の発言は、「あまりにもそうした歴史を無視した発言だと思っている。仮にその発言が尖閣諸島に関する中国独自の主張に基づくものということであれば、我が国としては決して受け入れることはできない」というもの。

管長官の反論は正論だ。それであるのになぜ日経はこれを批判するのか
これは「尖閣をめぐる日中対立が続いているだけに、尖閣も中国の領土であり日本は返還すべきだ、との主張だと受け止められた。だとすれば受け入れがたい発言」とする、日経コラム自身の主張と全く同じではないか。
明らかに矛盾しているが、それはなぜなのか。
■「カイロ宣言」をかざす李首相のインチキ論法
第二点目は「李首相は歴史的な事実を指摘したにすぎない」という部分だが、本当にそうか。
たしかに「(中国の)東北(地方)や台湾などの島々のように、日本が中国から盗み取った中国の領土は中国に返されなくてはならない、とカイロ宣言は定めている」との発言は「事実」だ。カイロ宣言は実際にそのように規定している。
しかし発言はそれだけにとどまらないのである。全体的に見ると、次のようなものだった。
「一人の中国人として、そして中国人民の代表として、私は特に強調したい。ポツダム宣言第八条は『カイロ宣言の条件は必ず実施されなければならない』と明確に規定している。そしてカイロ宣言は『日本が盗み取った中国の領土、たとえば東北、台湾などの島嶼は中国に返還すること』と明確に規定している。これは数千万もの生命と引き換えに獲得した勝利の果実であり、第二次大戦後の世界平和秩序の重要な保証でもある。すべての平和を愛する人々は、戦後の平和秩序を守り、戦後の勝利の果実の破壊、否定を許してはならない」
ずいぶんとインチキなことを言っている。
たとえばカイロ宣言は「第二次大戦後の世界平和秩序の重要な保証」などと言うが、これなどは「事実」ではない。
■「事実の指摘」でなく「悪質なプロパガンダ」だ
管氏は李克強発言に対し、「我が国の領土を法的に確定したのはサンフランシスコ平和条約」とも反論している。つまり日本の戦後の最終的な領土画定はカイロ、ポツダム宣言に基づいていないとの意味だが、実はこれこそが「事実」なのだ。
そのため日本がカイロ宣言がもたらした「世界平和秩序」を「破壊、否定」しようとしているとの李克強氏の主張も、まったく「事実」に反する。
要するに李克強氏がここで最もアピールしたかったのは、「カイロ宣言の規定に基づき、中国に返還すべき尖閣諸島という台湾の付属島嶼を日本が返還しないのは、戦後秩序に対する破壊、否定である」というものなのだ。

「日本は戦後秩序を破壊するな」との警告は、あくまでも尖閣問題を視野に入れたもの。しかし日経がこれを隠蔽するのはなぜか
これは歴史的にも法的にも何の裏付けもない無責任な日本批判のプロパガンダとしか言いようがなく、これに反論しない方がどうかしているのである
管氏の反応には「中国の宣伝に利用されかねない危うさ」も「巧みな挑発に乗せられた印象」もない。見事に「中国の宣伝」を打ち破り、抑止効果を発揮したのだ。だからこそ中国側も、この反論に対して執拗な攻撃を繰り返すのではないか。

管長官の反論への批判に王毅外交部長も乗り出した。中国側の反
応の激しさは中国側の危機感の表れ。管氏の対応は有効なのだ
ところが日経コラムは敢えて李克強氏の発言の一部だけ切り取り、逆に菅義偉氏を批判したのである。
言い換えれば「中国の宣伝」に抵抗する自国政府の足を引っ張った。つまり向こうの「宣伝工作」に加担した。
■管長官批判で疑われる中国への加担
中国の「宣伝工作」の特徴は、統一戦線工作上のものであるということだ。つまり他国内部に味方を作り、それに宣伝を代行させるわけなのだが、まさに日経のこのコラムこそ、「中国の宣伝に利用され」ている。しかも最悪にも自ら進んで利用されているかに見える。
なお中国にとり、カイロ宣言、ポツダム宣言は命の次に大切なものである。なぜならそれらが規定する日本の「台湾返還」こそ、台湾領有権の主張の唯一の法的根拠となっているからだ。
しかしそれは偽りの根拠なのだ。
日本はサンフランシスコ講和条約で台湾を放棄し、永遠に台湾を「返還」できなくなっており、カイロ宣言の規定はとうに死文化しているからである。
そこで中国は両宣言が有効であるとの虚構宣伝に全力を傾注せざるを得なくなっているのだが、そうしたなかで今回、菅義偉氏が「わが国の領土を法的に確定したのはサンフランシスコ平和条約だ」と発言してしまった。
これには中国をして「それを言ったらおしまいだ」と狼狽させるほどの威力があったはずだ。
そこで日経は中国のため、管発言打ち消し宣伝に躍起になったのではないか。
発言には誤りなどどこにもない。誤りのないものを強引に否定しようと試みたため、このような矛盾だらけの空疎、不可解な文章になったのではないかと疑わざるを得ないのだ。
*******************************************
ブログランキング参加中
運動を拡大したいので、
よろしければクリックをお願いします。
↓↓

モバイルはこちら → http://blog.with2.net/link.php
link.php
日本経済新聞の一面コラム「春秋」の六月九日のタイトルは「中国の宣伝工作に危機感を」。あの国のプロパガンダ工作の警戒を求めるのは結構なことに見えるが、実はこのコラムこそすでに「中国の宣伝工作」にやられていると疑いたくなるような不自然、不可解な内容である。
検証してみよう。
「尖閣問題をめぐり中国は日本に対する揺さぶりを続けている。とりわけ巧妙で注意が必要なのは、宣伝攻勢だ。日本は的確に対処していかなくてはならない」と前置きしながら、次のように論じるのだ。
―――「(中国の)東北(地方)や台湾などの島々のように、日本が中国から盗み取った中国の領土は中国に返されなくてはならない、とカイロ宣言は定めている」
―――中国の李克強首相は先月下旬、ドイツのポツダムでこう語った。尖閣をめぐる日中対立が続いているだけに、尖閣も中国の領土であり日本は返還すべきだ、との主張だと受け止められた。

ドイツで言われない日本批判(プロパガンダ)を国際社会に向け、大々的に発信した李克強首相
―――だとすれば受け入れがたい発言で、菅義偉官房長官は「あまりに歴史を無視した発言」と反発した。ただ、紹介した発言を読めばわかるように、李首相は尖閣を持ち出していたわけではない。さらに言えば、李首相は歴史的な事実を指摘したにすぎない。
―――「日本は過去の歴史を否定しようとしている」。こんな中国の宣伝に利用されかねない危うさが、菅官房長官の反応にはある。巧みな挑発に乗せられた印象だ。
こうしたことを書いた上で、最後にもう一度「対外政策に限らず、中国共産党は宣伝を重視してきた。投入してきた人材や資金、蓄積してきたノウハウは、民主国家の政府や政党とは桁違いだ。それをわきまえて向き合っていく必要がある」などと警鐘を打ち鳴らすのだが、この一文で問題にすべき箇所は二つある。
■明らかに李首相は「尖閣」の話をしているのに
まず第一点目は「ただ、紹介した発言を読めばわかるように、李首相は尖閣を持ち出していたわけではない」というくだり。
たしかに「(中国の)東北(地方)や台湾などの島々のように、日本が中国から盗み取った中国の領土は中国に返されなくてはならない、とカイロ宣言は定めている」との発言に「尖閣」の「尖」の字(「釣魚島」の「釣」の字)もない。
やはり「尖閣」が持ち出されているとみるのが常識だろう。
李克強氏が言う「台湾などの島々」に中国が「台湾の付属島嶼」と位置付ける尖閣を含めていないわけがない。
また、李克強氏の発言の翌五月二十七日、中共機関紙人民日報系の環球時報や国営新華社が発言の内容、狙いを強調すべく配信した論評を見ても、それは明らかである。
論評は「第二次大戦史への評価を覆すのは日本が見せる最も愚かな行為だ。南京大虐殺を否定し、日本軍による韓国、中国の慰安婦に対する蹂躙は国際世論の同情も支持も得られまい。不断に靖国神社を参拝する滑稽さは、日本の政界がおかしな力と感情に支配されていることを世界に知らせるだけだ」と論じた上で、「釣魚島問題は表面上は無人島を巡る争いにしか見えないが、これもまた同様に日本の第二次大戦の結果への態度を反映したものなのだ」とはっきり強調しているのである。
中国が尖閣問題を巡る中国の宣伝工作上、盛んにカイロ宣言、ポツダム宣言を領有権の法的根拠として持ち出していることを日経コラムは知らないのか。それとも何らかの目的で、知らないふりをしているのか。
■管氏の発言はコラムの指摘と同じという矛盾
ちなみに日経コラムが批判するところの菅氏の発言は、「あまりにもそうした歴史を無視した発言だと思っている。仮にその発言が尖閣諸島に関する中国独自の主張に基づくものということであれば、我が国としては決して受け入れることはできない」というもの。

管長官の反論は正論だ。それであるのになぜ日経はこれを批判するのか
これは「尖閣をめぐる日中対立が続いているだけに、尖閣も中国の領土であり日本は返還すべきだ、との主張だと受け止められた。だとすれば受け入れがたい発言」とする、日経コラム自身の主張と全く同じではないか。
明らかに矛盾しているが、それはなぜなのか。
■「カイロ宣言」をかざす李首相のインチキ論法
第二点目は「李首相は歴史的な事実を指摘したにすぎない」という部分だが、本当にそうか。
たしかに「(中国の)東北(地方)や台湾などの島々のように、日本が中国から盗み取った中国の領土は中国に返されなくてはならない、とカイロ宣言は定めている」との発言は「事実」だ。カイロ宣言は実際にそのように規定している。
しかし発言はそれだけにとどまらないのである。全体的に見ると、次のようなものだった。
「一人の中国人として、そして中国人民の代表として、私は特に強調したい。ポツダム宣言第八条は『カイロ宣言の条件は必ず実施されなければならない』と明確に規定している。そしてカイロ宣言は『日本が盗み取った中国の領土、たとえば東北、台湾などの島嶼は中国に返還すること』と明確に規定している。これは数千万もの生命と引き換えに獲得した勝利の果実であり、第二次大戦後の世界平和秩序の重要な保証でもある。すべての平和を愛する人々は、戦後の平和秩序を守り、戦後の勝利の果実の破壊、否定を許してはならない」
ずいぶんとインチキなことを言っている。
たとえばカイロ宣言は「第二次大戦後の世界平和秩序の重要な保証」などと言うが、これなどは「事実」ではない。
■「事実の指摘」でなく「悪質なプロパガンダ」だ
管氏は李克強発言に対し、「我が国の領土を法的に確定したのはサンフランシスコ平和条約」とも反論している。つまり日本の戦後の最終的な領土画定はカイロ、ポツダム宣言に基づいていないとの意味だが、実はこれこそが「事実」なのだ。
そのため日本がカイロ宣言がもたらした「世界平和秩序」を「破壊、否定」しようとしているとの李克強氏の主張も、まったく「事実」に反する。
要するに李克強氏がここで最もアピールしたかったのは、「カイロ宣言の規定に基づき、中国に返還すべき尖閣諸島という台湾の付属島嶼を日本が返還しないのは、戦後秩序に対する破壊、否定である」というものなのだ。

「日本は戦後秩序を破壊するな」との警告は、あくまでも尖閣問題を視野に入れたもの。しかし日経がこれを隠蔽するのはなぜか
これは歴史的にも法的にも何の裏付けもない無責任な日本批判のプロパガンダとしか言いようがなく、これに反論しない方がどうかしているのである
管氏の反応には「中国の宣伝に利用されかねない危うさ」も「巧みな挑発に乗せられた印象」もない。見事に「中国の宣伝」を打ち破り、抑止効果を発揮したのだ。だからこそ中国側も、この反論に対して執拗な攻撃を繰り返すのではないか。

管長官の反論への批判に王毅外交部長も乗り出した。中国側の反
応の激しさは中国側の危機感の表れ。管氏の対応は有効なのだ
ところが日経コラムは敢えて李克強氏の発言の一部だけ切り取り、逆に菅義偉氏を批判したのである。
言い換えれば「中国の宣伝」に抵抗する自国政府の足を引っ張った。つまり向こうの「宣伝工作」に加担した。
■管長官批判で疑われる中国への加担
中国の「宣伝工作」の特徴は、統一戦線工作上のものであるということだ。つまり他国内部に味方を作り、それに宣伝を代行させるわけなのだが、まさに日経のこのコラムこそ、「中国の宣伝に利用され」ている。しかも最悪にも自ら進んで利用されているかに見える。
なお中国にとり、カイロ宣言、ポツダム宣言は命の次に大切なものである。なぜならそれらが規定する日本の「台湾返還」こそ、台湾領有権の主張の唯一の法的根拠となっているからだ。
しかしそれは偽りの根拠なのだ。
日本はサンフランシスコ講和条約で台湾を放棄し、永遠に台湾を「返還」できなくなっており、カイロ宣言の規定はとうに死文化しているからである。
そこで中国は両宣言が有効であるとの虚構宣伝に全力を傾注せざるを得なくなっているのだが、そうしたなかで今回、菅義偉氏が「わが国の領土を法的に確定したのはサンフランシスコ平和条約だ」と発言してしまった。
これには中国をして「それを言ったらおしまいだ」と狼狽させるほどの威力があったはずだ。
そこで日経は中国のため、管発言打ち消し宣伝に躍起になったのではないか。
発言には誤りなどどこにもない。誤りのないものを強引に否定しようと試みたため、このような矛盾だらけの空疎、不可解な文章になったのではないかと疑わざるを得ないのだ。
*******************************************
ブログランキング参加中
運動を拡大したいので、
よろしければクリックをお願いします。
↓↓

モバイルはこちら → http://blog.with2.net/link.php
link.php
スポンサーサイト