尖閣上陸行動のリーダーが語る不純な夢と中共の動向
2010/06/11/Fri
■中共に擦り寄るための反日保釣運動
国連のアジア・極東地域経済委員会の報告書が、東支那海の尖閣諸島周辺にサウジアラビアの油田に匹敵するほどの石油埋蔵の可能性を指摘したのが一九六八年だが、これを受け同諸島の領有権を主張し始めたのが二つの中國政権、すなわち中華人民共和国(中共)と台湾に亡命する中華民国(国府)だ。
「石油」と聞くまで両政権は、尖閣を日本領土と認めていた。少なくとも六九年の段階ではなお、両政権発行の地図にもそのように記されていた。

中共が58年に発行した地図。日本の海域に「尖閣」の名が

70年に発行の国府の教科書でも同様だ
ところが国府では七〇年九月四日、初めて魏道明外交部長が領有権を言明した。同月十日に米国政府が、尖閣諸島を含む西南諸島を日本へ返還する方針を発表する直前のことである。
中共では同年十二月二十九日、新華社が初めて「大昔から中国の領土である」と報道した。中共が正式に領有に関する声明を出したのは七一年十二月三十日だ。
その一方で当時、民間の中国人たちも尖閣奪還を訴える運動を開始した。今でも諸島周辺で領海侵犯騒動を繰り返す保釣運動である(「保釣」とは「釣魚台を保衛する」との意)。
七一年一月二十九日、ニューヨークの国連本部前などで、香港や台湾の中国人留学生約二千五百名が「釣魚台を死守せよ」と、米国に抗議の声を上げたのがその嚆矢だ。

国連本部前での保釣デモ
この年七月、ニクソン大統領が中国を初訪問。十月には国府が国連を脱退し、中共が「中国」の代表となっている。つまり「いよいよ中共の時代が到来する」と予感されるなか、反共青年たちが中華民族主義を叫び、中共に刷り寄りを見せたとの側面も、この運動にはあった。だから国府にとってこの運動は、必ずしも歓迎できるものではなかった。
■香港返還でふたたび忠誠心を示すかのように
運動の第二波は七二年。沖縄返還の二日前のこの年五月十三日、国府外交部は「絶対に釣魚台の主権を守る」と声明。このころ保釣運動もワシントンや香港で大規模デモを展開している。
しかし七八年八月十二日、日中平和友好条約が調印され、十月二十五日には小平が尖閣問題の棚上げを表明。領有を巡る争いは暫時影を潜めて行った。
ところが九七年七月一日、香港が中国に返還されることに。かくして、まるでその中国に忠誠心を示すかのように、第三波の運動が香港で始まる。
九六年九月二十二日、運動家たちが初めて香港から尖閣諸島に向けて漁船で出航した。二十六日には上陸を試みて失敗し、溺死者を出している。しかし同年十月には香港と台湾の活動家が上陸を果たした。
それ以来今日に至るまで、こうした上陸の試みが繰り繰り返され、その都度海上保安船に阻止されている。
中共(香港当局)は、活動家の出航をしばしば妨害の規制を加えている。しかし規制を緩和したことも何度か見られたそうだ。つまり中共は対日外交上、保釣運動をカードに上手に行使しているのだ。
■悪意の反日宣伝―自衛隊は出動などしていない
さて、この上陸行動を進める香港の保釣運動のリーダーの一人に柯華氏(57)がいる。この五月二日には香港当局から出航を阻止されたばかり。そこで当局を訴えて出たとか。この人物が最近、運動に関してメディアに語っているので、その一部を取り上げたい。

柯華氏。香港の保釣運動のリーダーだ
〇六年の上陸行動を指揮した柯華氏。尖閣諸島周辺の十二海里領海に侵入したところ、海上保安庁の「軍艦」に静止されているが、そのときの模様をこう語る。
―――軍艦は照明弾を放ちながら肉薄してきた。ヘリコプターも高波を巻き起こした。そのとき我々は卵を投げた。これが唯一の武器だ。それ以外の武器を使うと、彼らに挑戦の口実を与えることになる。

保釣運動家を乗せた漁船を阻止する海保船。日本側にも危険な任務だ(06年10月)
このようにして海保船を「軍艦」と呼び、日本側の横暴な過剰反応、そしてそれに立ち向かう自分たちの勇敢さをアピールするのが彼らの常套手段である。
そのほか、「我が方の二隻の釣魚島周辺での沈没は、すべて日本自衛隊がやった悪事だ」だとか、「自衛隊が漁船に放水した」と言った嘘も平気で付くのだ。
日本側が中国を警戒させないため、自衛隊には表立った尖閣防衛を控えさせていることを、柯華氏が知らないはずがないのである。
悪質な宣伝行為である。
■なぜ中共は米国の尖閣占領に抗議しなかったのか
柯華氏はしばしば「他にも領土紛争はあるのに、なぜあなたたちは釣魚島だけにこだわるのか」と聞かれるそうだ。そこで柯華氏は興奮気味に反論する。
―――釣魚島に関心を持つのは、単に領土問題を重視しているからではない。日本の中国侵略は不義の戦争であり、中国人は多くの生命、財産を犠牲にした!
―――加害者は誰だ。敗戦国がなぜ武力を用いるのか。どこの敗戦国が戦勝国の土地を占領すると言うのか。一方的に軍艦まで出しやがって。これ以上に争うべき相手はあるか。
「反日」は中華民族主義を支える重要な要素だ。柯華氏は反日行動を通じて、自身の民族主義を宣伝して見せたいと考えているのだろう。
また「なぜ米国が釣魚島を日本へ返還したとき、中国と台湾は黙っていたのか」と聞かれるらしい。どうも香港などでも尖閣諸島は日本の領土ではないかとの見方があるようだ。
これについて柯華氏は、嘆かわしい表情を見せながらこう話すのだ。
―――五三年のサンフランシスコ講和会議に中国人は参与せず、蒋介石も参加しなかった。なぜ米国が日本へ返したかと言うと、当時は中国に張り付いており、日本に頼るしかなかった。中国も文革が最高潮で釣魚島を顧みる余裕はなかった。
―――そして中国は日本を強硬にさせたくなかった。台湾問題も面倒なことになる。台湾側もそう思っており、日本に漁夫の利を得させてしまった。
馬鹿げた話である。米国が日本に尖閣諸島を返還したのは、そこが日本の領土だからだ。中国も台湾もそれを知っていた。もし同諸島を中国領土と確信していれば、米国による返還以前に、そこを占領してきたことに対して抗議をしていたはずである。
■日本の実効支配を否定する対外宣伝行為
ここまで作り話をする柯華氏だが、ここで面白いのは、同氏が、米国の日本への尖閣諸島の「返還」(漢語では「帰還」)と言っていることだ。まるで日本の主権を内心では認めているようでもある。
またこうも言っている。
―――国際社会に発信したいのは、中国人は日本の釣魚島占領を受け入れることができず、その有効統管に挑戦していると言うことだ。そうなれば将来、国際法廷の場で不利な立場に立つことはなくなる。
つまり日本の尖閣諸島領有の法的根拠である「有効統菅」(実効支配)をはっきりと承認しているのだ。そしてその上で実効支配の事実を否定し、国際司法裁判所で勝利を勝ち取ることができると豪語しているのだから、実に不純、違法な考えである。

中国人も日本側の実効支配を認めている。そしてその事実を敢えて否定
しようとするところに保釣運動の卑劣さがあるのだ
そしてそうした宣伝戦の一環としてなのだろう。あくまでも日本悪玉論を展開する。
―――日本は島国であり、それなりの思考様式がある。領土争いの問題ではいつもまず民間が動いて水温を計り、それで行けると判断すれば政府が動き出す。もし相手国が抗議をすれば一歩退き、政権交代後に相手が動かないと、さらに一歩進むのだ。教科書問題でもそうではないか。
おかしな島国民族論だ。まず人民を動かして、相手側の反応を見ると言うのは中共のことではないだろうか。そしてその駒となっているのが柯華氏らではないのか。
■台湾で「共産匪賊」と罵られた中共謀略のコマたち
今後の運動のビジョンに関しては、
―――さらに国際化を遂げなくてはならない。台湾、内地とも連携しなければならない。日本の民間とも連携しなければならない。
しかし、その一方でこうも嘆く。
―――台湾での運動はすっかり下降している。若い世代が後を継ごうとしない。香港でも同じだ。香港の生徒は歴史を学んでいない。酒井法子は知っていても、中日の歴史に興味がない。
さらには運動を敵視する台湾人に触れる。九八年に柯華氏ら数十名の「保釣勇士」たちが尖閣諸島からの帰途に台湾へ立ち寄ったときの話だ。
―――台湾団結連盟は数千人を動員し、我々のホテルを包囲して、「共匪」と罵った。もう少しで殴り合いになるところだった。
台湾団結連盟とは李登輝氏を精神的リーダーとする政党だが、このとき台湾人の間では、国内で保釣運動が煽られ、中共と共同歩調を取らされ、日台の分断、台中の接近が進むことを恐れたのだ。だからこそ共同戦線工作のコマである柯華氏らを「共匪」(共産匪賊)と非難したのである。
■日本の親中派にも相手にされないでたらめな主張
日本人との連携もあるらしい。
―――いつも日本へ行って民間組織と会議を行い、釣魚島などの問題を話し合い、相互理解を進めている。
しかし、
―――釣魚島問題に関しては、日本国内では政府を支持するものが多い。正義派の人々も、その他の問題では中立的だが、この問題では我々の考えと距離がある。
―――日本の右翼はよく勉強し、やることにも深みがあるが、少数だ。一般人は政治に関心がなく、享楽ばかりを求めている。ただそれは悪いことではない。左翼でも右翼でも、極端でなければいい。
―――私は日本人を信用している。日本政府に野心、欲望がないとは言わない。欲望は誰にでもある。人は一度利益を得れば、さらに多くの利益を求めるものだ。日本の一部の国民も政府の利益に符合することをやっている。人数は少ないが、だからと言って彼らの悪事を放置していいと言うものではない。
―――新しい民主党政権も、戦争については謝罪するし、民間賠償の問題でも開明的な姿勢を見せてはいるが、釣魚島問題ではやはり強硬だ。
日本の「右翼」(反中国勢力)を「勉強している」と褒めるのは、その日本領有権の主張が金甌無欠のものだからだろう。「正義派」(親中派のことか)にしても、さすがに中国人側の領有の嘘の主張だけは受け入れることができないようだ。
■中共の対日軍事恫喝を待ち望む保釣運動家たち
柯華氏は自分たちの無力さにも苛立ちを隠さない。
―――重要なのは我々にも責任があると言うことだ。我が方のこの問題に対する立場が曖昧なのだ。これが最大の問題だろう。両岸の兄弟間にはいまだに争いがあるが、領土問題ではそれは行けない。
これは尖閣上陸の前進基地とする台湾の冷ややかな世論への不満の吐露でもあるようだ。
―――領土は一度奪われたら取り戻すことができず、しかも誰からも同情されない。国連に琉球を取り戻したいと訴えても、不可能であるように。
やはり中国人は、沖縄を中国領土と看做したがっている。
そこで柯華氏は中共に訴えるのだ。
―――中国は日本に言えばいい。「この場所から軍艦を退去させろ。そうしなければ我々も軍艦を派遣することになるが、双方が対峙するのはよくない。しかし漁民は入れろ。釣り遊びも認めろ。その後で公平に話し合えばいい」と。我々民間の要求はこれだけなのだ。
―――釣魚島問題は民間で解決できるものではない。最後にはやはり国家が出てこなければならない。なぜなら我々の相手は民間の日本青年社ではなく、日本の政府、軍艦だからだ。
何てことはない。これは中共軍の軍事恫喝待望論だ。そして次のように呼びかける。
―――もし他国が中国のある地域に軍隊を進駐させたら容認できるか。もし英軍がチベットに進駐したらどうする。我が外交部はつねに「釣魚島は我が固有の領土」と言っているが、今その固有の領土に日本の軍隊が長期にわたって進駐していることをどう説明するのか。南沙諸島の二十以上の島のうち、中国が有効統治しているのは三つだけだが、もし釣魚島で強硬に出れば、そちらの問題の解決も進むことだろう。
■中国愛国の夢「保釣」が達成される日は遠くない
来年は保釣運動が開始されて四十年だ。香港や台湾のグループは現在、世界の運動団体を集め、全球保釣大連盟なるものを結成し、その年の六月十一日にはヘリコプターか気球で尖閣諸島に上陸すると公言している。
見果てぬ夢を追い続ける昔の「愛国青年」たちだが、実はその「夢」も、やがては実現するかもしれない。
象徴的な例を挙げると、〇八年十二月に尖閣周辺の領海を侵犯し、海保船の警告を受けて引き返した中国の国家海洋局の調査船二隻のうちの一隻が、今年五月には奄美大島沖合いの日本のEEZで作業をする海保船を駆逐したことだ。

5月に海保調査船を駆逐した中国の海監51号は08年に尖閣海域を侵犯した船
だった
つまり東支那海全体に、いまや中国の軍事力が伸長しつつあり、これに対抗し得る日本側の抑止力が十分に機能していないと言うことなのだ。
これで尖閣諸島は守れるか。
だからたとえばもし保釣運動の船が中国海軍力の庇護を受ければ、海保船だけでは対処しきれないことだろう。このことは十分にあり得ることだ。なぜなら自国の海域で自国民の生命、財産を守るのが中国軍の義務だからである。
そもそも保釣運動は中共謀略のコマなのだ。いついかなる形で利用されるかはわからない。
東支那海での支配権を固めつつある中国は、もはやこれまで以上に遠慮はないはず。そして今後ますます、覇権主義的な姿勢を強化することだろう。

中国軍は尖閣上陸を想定した演習も行わっている
「領土は一度奪われたら取り戻すことができず、しかも誰からも同情されない」と柯華氏に言われずとも、そのことを日本人は北方領土、竹島の問題で十分に知っているはずである。
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国連のアジア・極東地域経済委員会の報告書が、東支那海の尖閣諸島周辺にサウジアラビアの油田に匹敵するほどの石油埋蔵の可能性を指摘したのが一九六八年だが、これを受け同諸島の領有権を主張し始めたのが二つの中國政権、すなわち中華人民共和国(中共)と台湾に亡命する中華民国(国府)だ。
「石油」と聞くまで両政権は、尖閣を日本領土と認めていた。少なくとも六九年の段階ではなお、両政権発行の地図にもそのように記されていた。

中共が58年に発行した地図。日本の海域に「尖閣」の名が

70年に発行の国府の教科書でも同様だ
ところが国府では七〇年九月四日、初めて魏道明外交部長が領有権を言明した。同月十日に米国政府が、尖閣諸島を含む西南諸島を日本へ返還する方針を発表する直前のことである。
中共では同年十二月二十九日、新華社が初めて「大昔から中国の領土である」と報道した。中共が正式に領有に関する声明を出したのは七一年十二月三十日だ。
その一方で当時、民間の中国人たちも尖閣奪還を訴える運動を開始した。今でも諸島周辺で領海侵犯騒動を繰り返す保釣運動である(「保釣」とは「釣魚台を保衛する」との意)。
七一年一月二十九日、ニューヨークの国連本部前などで、香港や台湾の中国人留学生約二千五百名が「釣魚台を死守せよ」と、米国に抗議の声を上げたのがその嚆矢だ。

国連本部前での保釣デモ
この年七月、ニクソン大統領が中国を初訪問。十月には国府が国連を脱退し、中共が「中国」の代表となっている。つまり「いよいよ中共の時代が到来する」と予感されるなか、反共青年たちが中華民族主義を叫び、中共に刷り寄りを見せたとの側面も、この運動にはあった。だから国府にとってこの運動は、必ずしも歓迎できるものではなかった。
■香港返還でふたたび忠誠心を示すかのように
運動の第二波は七二年。沖縄返還の二日前のこの年五月十三日、国府外交部は「絶対に釣魚台の主権を守る」と声明。このころ保釣運動もワシントンや香港で大規模デモを展開している。
しかし七八年八月十二日、日中平和友好条約が調印され、十月二十五日には小平が尖閣問題の棚上げを表明。領有を巡る争いは暫時影を潜めて行った。
ところが九七年七月一日、香港が中国に返還されることに。かくして、まるでその中国に忠誠心を示すかのように、第三波の運動が香港で始まる。
九六年九月二十二日、運動家たちが初めて香港から尖閣諸島に向けて漁船で出航した。二十六日には上陸を試みて失敗し、溺死者を出している。しかし同年十月には香港と台湾の活動家が上陸を果たした。
それ以来今日に至るまで、こうした上陸の試みが繰り繰り返され、その都度海上保安船に阻止されている。
中共(香港当局)は、活動家の出航をしばしば妨害の規制を加えている。しかし規制を緩和したことも何度か見られたそうだ。つまり中共は対日外交上、保釣運動をカードに上手に行使しているのだ。
■悪意の反日宣伝―自衛隊は出動などしていない
さて、この上陸行動を進める香港の保釣運動のリーダーの一人に柯華氏(57)がいる。この五月二日には香港当局から出航を阻止されたばかり。そこで当局を訴えて出たとか。この人物が最近、運動に関してメディアに語っているので、その一部を取り上げたい。

柯華氏。香港の保釣運動のリーダーだ
〇六年の上陸行動を指揮した柯華氏。尖閣諸島周辺の十二海里領海に侵入したところ、海上保安庁の「軍艦」に静止されているが、そのときの模様をこう語る。
―――軍艦は照明弾を放ちながら肉薄してきた。ヘリコプターも高波を巻き起こした。そのとき我々は卵を投げた。これが唯一の武器だ。それ以外の武器を使うと、彼らに挑戦の口実を与えることになる。


保釣運動家を乗せた漁船を阻止する海保船。日本側にも危険な任務だ(06年10月)
このようにして海保船を「軍艦」と呼び、日本側の横暴な過剰反応、そしてそれに立ち向かう自分たちの勇敢さをアピールするのが彼らの常套手段である。
そのほか、「我が方の二隻の釣魚島周辺での沈没は、すべて日本自衛隊がやった悪事だ」だとか、「自衛隊が漁船に放水した」と言った嘘も平気で付くのだ。
日本側が中国を警戒させないため、自衛隊には表立った尖閣防衛を控えさせていることを、柯華氏が知らないはずがないのである。
悪質な宣伝行為である。
■なぜ中共は米国の尖閣占領に抗議しなかったのか
柯華氏はしばしば「他にも領土紛争はあるのに、なぜあなたたちは釣魚島だけにこだわるのか」と聞かれるそうだ。そこで柯華氏は興奮気味に反論する。
―――釣魚島に関心を持つのは、単に領土問題を重視しているからではない。日本の中国侵略は不義の戦争であり、中国人は多くの生命、財産を犠牲にした!
―――加害者は誰だ。敗戦国がなぜ武力を用いるのか。どこの敗戦国が戦勝国の土地を占領すると言うのか。一方的に軍艦まで出しやがって。これ以上に争うべき相手はあるか。
「反日」は中華民族主義を支える重要な要素だ。柯華氏は反日行動を通じて、自身の民族主義を宣伝して見せたいと考えているのだろう。
また「なぜ米国が釣魚島を日本へ返還したとき、中国と台湾は黙っていたのか」と聞かれるらしい。どうも香港などでも尖閣諸島は日本の領土ではないかとの見方があるようだ。
これについて柯華氏は、嘆かわしい表情を見せながらこう話すのだ。
―――五三年のサンフランシスコ講和会議に中国人は参与せず、蒋介石も参加しなかった。なぜ米国が日本へ返したかと言うと、当時は中国に張り付いており、日本に頼るしかなかった。中国も文革が最高潮で釣魚島を顧みる余裕はなかった。
―――そして中国は日本を強硬にさせたくなかった。台湾問題も面倒なことになる。台湾側もそう思っており、日本に漁夫の利を得させてしまった。
馬鹿げた話である。米国が日本に尖閣諸島を返還したのは、そこが日本の領土だからだ。中国も台湾もそれを知っていた。もし同諸島を中国領土と確信していれば、米国による返還以前に、そこを占領してきたことに対して抗議をしていたはずである。
■日本の実効支配を否定する対外宣伝行為
ここまで作り話をする柯華氏だが、ここで面白いのは、同氏が、米国の日本への尖閣諸島の「返還」(漢語では「帰還」)と言っていることだ。まるで日本の主権を内心では認めているようでもある。
またこうも言っている。
―――国際社会に発信したいのは、中国人は日本の釣魚島占領を受け入れることができず、その有効統管に挑戦していると言うことだ。そうなれば将来、国際法廷の場で不利な立場に立つことはなくなる。
つまり日本の尖閣諸島領有の法的根拠である「有効統菅」(実効支配)をはっきりと承認しているのだ。そしてその上で実効支配の事実を否定し、国際司法裁判所で勝利を勝ち取ることができると豪語しているのだから、実に不純、違法な考えである。

中国人も日本側の実効支配を認めている。そしてその事実を敢えて否定
しようとするところに保釣運動の卑劣さがあるのだ
そしてそうした宣伝戦の一環としてなのだろう。あくまでも日本悪玉論を展開する。
―――日本は島国であり、それなりの思考様式がある。領土争いの問題ではいつもまず民間が動いて水温を計り、それで行けると判断すれば政府が動き出す。もし相手国が抗議をすれば一歩退き、政権交代後に相手が動かないと、さらに一歩進むのだ。教科書問題でもそうではないか。
おかしな島国民族論だ。まず人民を動かして、相手側の反応を見ると言うのは中共のことではないだろうか。そしてその駒となっているのが柯華氏らではないのか。
■台湾で「共産匪賊」と罵られた中共謀略のコマたち
今後の運動のビジョンに関しては、
―――さらに国際化を遂げなくてはならない。台湾、内地とも連携しなければならない。日本の民間とも連携しなければならない。
しかし、その一方でこうも嘆く。
―――台湾での運動はすっかり下降している。若い世代が後を継ごうとしない。香港でも同じだ。香港の生徒は歴史を学んでいない。酒井法子は知っていても、中日の歴史に興味がない。
さらには運動を敵視する台湾人に触れる。九八年に柯華氏ら数十名の「保釣勇士」たちが尖閣諸島からの帰途に台湾へ立ち寄ったときの話だ。
―――台湾団結連盟は数千人を動員し、我々のホテルを包囲して、「共匪」と罵った。もう少しで殴り合いになるところだった。
台湾団結連盟とは李登輝氏を精神的リーダーとする政党だが、このとき台湾人の間では、国内で保釣運動が煽られ、中共と共同歩調を取らされ、日台の分断、台中の接近が進むことを恐れたのだ。だからこそ共同戦線工作のコマである柯華氏らを「共匪」(共産匪賊)と非難したのである。
■日本の親中派にも相手にされないでたらめな主張
日本人との連携もあるらしい。
―――いつも日本へ行って民間組織と会議を行い、釣魚島などの問題を話し合い、相互理解を進めている。
しかし、
―――釣魚島問題に関しては、日本国内では政府を支持するものが多い。正義派の人々も、その他の問題では中立的だが、この問題では我々の考えと距離がある。
―――日本の右翼はよく勉強し、やることにも深みがあるが、少数だ。一般人は政治に関心がなく、享楽ばかりを求めている。ただそれは悪いことではない。左翼でも右翼でも、極端でなければいい。
―――私は日本人を信用している。日本政府に野心、欲望がないとは言わない。欲望は誰にでもある。人は一度利益を得れば、さらに多くの利益を求めるものだ。日本の一部の国民も政府の利益に符合することをやっている。人数は少ないが、だからと言って彼らの悪事を放置していいと言うものではない。
―――新しい民主党政権も、戦争については謝罪するし、民間賠償の問題でも開明的な姿勢を見せてはいるが、釣魚島問題ではやはり強硬だ。
日本の「右翼」(反中国勢力)を「勉強している」と褒めるのは、その日本領有権の主張が金甌無欠のものだからだろう。「正義派」(親中派のことか)にしても、さすがに中国人側の領有の嘘の主張だけは受け入れることができないようだ。
■中共の対日軍事恫喝を待ち望む保釣運動家たち
柯華氏は自分たちの無力さにも苛立ちを隠さない。
―――重要なのは我々にも責任があると言うことだ。我が方のこの問題に対する立場が曖昧なのだ。これが最大の問題だろう。両岸の兄弟間にはいまだに争いがあるが、領土問題ではそれは行けない。
これは尖閣上陸の前進基地とする台湾の冷ややかな世論への不満の吐露でもあるようだ。
―――領土は一度奪われたら取り戻すことができず、しかも誰からも同情されない。国連に琉球を取り戻したいと訴えても、不可能であるように。
やはり中国人は、沖縄を中国領土と看做したがっている。
そこで柯華氏は中共に訴えるのだ。
―――中国は日本に言えばいい。「この場所から軍艦を退去させろ。そうしなければ我々も軍艦を派遣することになるが、双方が対峙するのはよくない。しかし漁民は入れろ。釣り遊びも認めろ。その後で公平に話し合えばいい」と。我々民間の要求はこれだけなのだ。
―――釣魚島問題は民間で解決できるものではない。最後にはやはり国家が出てこなければならない。なぜなら我々の相手は民間の日本青年社ではなく、日本の政府、軍艦だからだ。
何てことはない。これは中共軍の軍事恫喝待望論だ。そして次のように呼びかける。
―――もし他国が中国のある地域に軍隊を進駐させたら容認できるか。もし英軍がチベットに進駐したらどうする。我が外交部はつねに「釣魚島は我が固有の領土」と言っているが、今その固有の領土に日本の軍隊が長期にわたって進駐していることをどう説明するのか。南沙諸島の二十以上の島のうち、中国が有効統治しているのは三つだけだが、もし釣魚島で強硬に出れば、そちらの問題の解決も進むことだろう。
■中国愛国の夢「保釣」が達成される日は遠くない
来年は保釣運動が開始されて四十年だ。香港や台湾のグループは現在、世界の運動団体を集め、全球保釣大連盟なるものを結成し、その年の六月十一日にはヘリコプターか気球で尖閣諸島に上陸すると公言している。
見果てぬ夢を追い続ける昔の「愛国青年」たちだが、実はその「夢」も、やがては実現するかもしれない。
象徴的な例を挙げると、〇八年十二月に尖閣周辺の領海を侵犯し、海保船の警告を受けて引き返した中国の国家海洋局の調査船二隻のうちの一隻が、今年五月には奄美大島沖合いの日本のEEZで作業をする海保船を駆逐したことだ。

5月に海保調査船を駆逐した中国の海監51号は08年に尖閣海域を侵犯した船
だった
つまり東支那海全体に、いまや中国の軍事力が伸長しつつあり、これに対抗し得る日本側の抑止力が十分に機能していないと言うことなのだ。
これで尖閣諸島は守れるか。
だからたとえばもし保釣運動の船が中国海軍力の庇護を受ければ、海保船だけでは対処しきれないことだろう。このことは十分にあり得ることだ。なぜなら自国の海域で自国民の生命、財産を守るのが中国軍の義務だからである。
そもそも保釣運動は中共謀略のコマなのだ。いついかなる形で利用されるかはわからない。
東支那海での支配権を固めつつある中国は、もはやこれまで以上に遠慮はないはず。そして今後ますます、覇権主義的な姿勢を強化することだろう。

中国軍は尖閣上陸を想定した演習も行わっている
「領土は一度奪われたら取り戻すことができず、しかも誰からも同情されない」と柯華氏に言われずとも、そのことを日本人は北方領土、竹島の問題で十分に知っているはずである。
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